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彼女のイメージ (題名の修正

題名)交差する思い → 彼女のイメージ


まさか題名被るとは思わなった・・・


体が、動く・・・?

そうか、アイツが・・・気を失った、から・・・【王の威厳】、の効果が、切れたのか・・・。


いや、だがそうなると、奴が、寝ている時にも効果が切れる・・・。

そうなれば、少なくとも・・・二度と洗脳に、掛からないように・・・対策を取る、はず・・・。


「ぐっ・・・」

「あなた!」


レイラは腰に付けていた小さなマジックバックから金糸刺繍の入った白い布切れを取り出すとヨスミの右目を覆い隠す様に頭に巻き付ける。


そしてそのまま黒妖刀の頭部分を押し当てる。

すると金糸が光を帯び、頭に巻いた白い布に広がっていく。


やがてそれは収まると、ヨスミの体から力が抜けたようでその場に崩れ落ちそうになるがレイラが急いで支える。


「よかった・・・よかったですわ・・・っ!あんな未来にならなくて・・・あんな絶望に染まらなくて・・・っ。」


体を支えているレイラから小さく呻きながら泣いている声が聞こえてくる。

きっと王騎竜からもらった王眼・・・、確かあれは先を読むことができると言っていたっけ。


それで何か良くない物を見てしまったんだな・・・。


でも今回は危なかった・・・。

右目の封印を解いていなかったら、僕はゲセドラに操られていただろう・・・。


結果的に良い方向に向いたが、可愛い嫁さんが泣いている時点で最悪な展開だ。

俗にいう、試合には勝ったが、勝負には負けたって奴だ。


「レイラ・・・、ごめんな・・・。」

「あや、謝らないで・・・くださいまし・・・。わたくしも、迂闊でした・・・。相手の事をもっと知っていれば、もっと色々とやり様はありましたわ・・・。」

「それでも・・・、君が涙を流している時点で、全てが僕の原因だ・・・。」

「そ、そんな・・・、理不尽ですわ・・・?!」

「君がどんな未来を見たのかは、わからないが、次からは・・・そんな未来を見ないように、頑張るよ・・・。」

「ううっ・・・。本当ですわ・・・!もう二度とあんな未来なんて見たくありません・・・っ!!ぐすっ・・・」


右目の封印について、どこでこんなやり方を知ったのかはわからないがきっとフィリオラだろう。


おかげで大分楽になってきた・・・。

右目の衝動も収まってきたし、押し潰されそうになっていた意識もマシになってきた。


状況を整理しよう・・・。


まず、こいつのスキル・・・【覚醒技】とでも言った方がいいのか?

【王の威厳】という、いわば相手を洗脳するスキルだ。


この国のトップである帝王も影響を受けていると言っていたし、その強制力はかなりのものなのだろう。


さすがS級・・・、いや、【百獣の王牙(レオンファング)】ってところか。

こんな力を使われて、自分の思う様に動かせる駒に出来るなら、なんだって出来るわけだ。


確かにこの国のトップを洗脳してしまえば、富も権力もありとあらゆる越権行為が思うが儘になる。

誰に使えば一番効果的なのか、腐ってても第一王子ってところだろう。


ただそうなると奴の天敵は僕だったってわけだ。

今回は不意を突かれて僕が洗脳されたけど、僕の人格を一時的に引っ込めて右目にスキルの影響を受けさせれていれば僕は洗脳されなかった。


もう少し立ち回りについて考えた方がいい。


「そういえば、レイラ。君に聞きたいことがある。」


未だにヨスミを抱き着いたまま胸の中で泣いているレイラに問いかける。


「なんですの・・・?」

「一体何をしたんだ・・・?突然ゲセドラが切られて気を失って、それに合わせて僕への洗脳も溶けたけど、アイツのスキルは自身が気を失ってでも効果は続く類のものだったはずだ。なのにアイツが気を失ったと同時に効果も切れたが・・・。それに、なぜ突然ゲセドラは斬られたんだ?いや、そもそも()()()()()んだ?」

「ぐすっ・・・、少しややこしいんですけど、ここに来る前に【王眼】で見た未来の中に<神速>を使って無理やり干渉したんですわ。そしたら未来視の中で自由に動けるようになったため、わたくしはあなたとゲセドラ王子の会話のやり取りを聞いて事の顛末を把握、その後・・・あんな、酷い結末を迎えて・・・それで、思わずゲセドラ王子を斬ったんですの。それでも止まらなくて・・・そしたらゲセドラ王子とあなたを繋ぐ魔力の糸が見えたからそれも一緒に斬ったんですの・・・。そしたら王眼の限界が来て戻って今ここに・・・。」


未だに落ち着きを見せないせいか、レイラが言っていたことに要領を得なかった。

が、要するに未来で見えた結末が余りにも酷く、その元凶がゲセドラ王子だとわかり、何かしらの展開を止めようとゲセドラを一閃したが止まらず、もう一度よく見たらゲセドラと僕を繋ぐ魔力の繋がりが見えたからそれも一緒に切ったところで王眼の限界が来た、と。


ビデオテープで映像を見ていて、例えば開始から10分51秒の所でレイラがゲセドラを斬ったという事実が確定してデッキに記憶され、たとえビデオテープは変わってもビデオデッキには10分51秒で斬った記録が残っているために10分51秒になった時、ゲセドラという人物が斬られてしまう・・・ということか。


無数に広がるパラレルワールドにたった1つの事象を記録させ、その事象がどんな形であろうと必ず起こすことができる・・・。


別次元で斬られているわけだから、この次元では防ぎようがないわけだ。

なんともまあデタラメな使い方だよ・・・。


「あなたの言っていたイメージすれば無限に広がるって言葉を信じてみたらできたんですの・・・」

「・・・ははは、僕も大概だけど君も大概だよ!本当に、似た者同士じゃないか・・・っ」

「だ、だって・・・わたくしはあなたを目指しているんですもの・・・。あなたを理解できなきゃ、良き妻になんてなれませんわ・・・!」

「僕を、目指す・・・か。」


誰かに言われてみたい言葉だった。

だが、今の僕に置かれた環境を目指すのであれば・・・あまり嬉しくはないな。


こんな地獄に彼女は来ようと言っているわけだ。

ちっとも嬉しくはない・・・。


「・・・君は、君のままが素敵なんだ。誰かに憧れるのは確かに素敵な事だと僕は思う。だけど、結局それはその人のマネであって、君自身じゃない。君にだって、こんなにも素敵な部分がたくさんあるんだ。いいかい? 憧れを真似するんじゃない。自分自身を憧れにするんだ。何にも染まらぬ純白な白はとても綺麗だろう?」

「・・・でもあなた?わたくしは深淵に身を置くヴァレンタイン家の令嬢、この通り真っ黒なのですわ。それに安心してくださいまし。ありとあらゆる色を混ぜれば黒に染まります。これも立派なわたくしですわっ!それともあなたは何にも染まらぬ白い方がお好きなのですか・・・?」

「・・・ぷっ、あっはははは!!」


ヨスミはお腹を抱えて心から笑う。

レイラはそんなヨスミを見てほっぺをぷっくらと膨らませてちょっとばかり怒ったような表情を浮かべた。


「何がおかしんですのっ!」

「いやあ、ごめんごめん!僕が一番嫌いな人間と同じことをしようとしていたことに笑えてしまってね。確かにあれは僕の価値観の押し付けだった。そうだ、どんな色にも大事な個性がある。とても素敵で、他とは違わぬ美しさが、平等な価値が存在する。僕の狭まった価値観で、君という色を見失っていたようだ。ごめんね。僕は君の色が好きだよ。」

「わたくしの、色・・・?」

「ああ、君という色が大好きなんだ。」

「・・・なんだかはぐらかされた気がしますわっ」


ヨスミはゆっくりと立ち上がり、レイラに手を差し出す。

その手を取って立ち上がり、そのまま指を絡ませるように手を繋いだ。


「そういえばわたくしも一つ聞きたいのですわ。」

「ん?」

「あれ、タイレンペラーの首都ですわよね?なんで転移窓なんかで映し出しているんですの?それもあんなに巨大な・・・、あっ、あなた!」

「ああ、あれぐらいなら平気だよ。これでも成長はしているからね。」

「本当にですの・・・?無理はしていないのかしら?」

「心配性な嫁さんだな。ちなみにあれは、ゲセドラにここでのやり取りをあの町の獣人たちに見せるためだよ。国の王子の下種さがどれほどなのか知ってしまえば町の人たちも黙っていないだろう。この王子の矛先がいつ自分に向くかわからない恐怖というのは中々に強烈だ。最初は国王・・・帝王だったか。そいつに見せようと思ってたけど、まさかこいつに洗脳されているとは思わなかったな・・・。」

「・・・確かに国の惨状を知って一番影響を受けるのは民ですわ。国のために動き、働く。故に、自分たちを治めるトップが堕落してしまえば黙ってはいられない・・・。でも、これって国の崩壊を招く危険もありますわよ・・・?」

「確かにそうだな。下手をすれば王宮と民の間で大きな戦いが起きる可能性もあるだろうな。だが、町の奴らもトップがおかしい事に気付いていたはずだ。だがそれを見て見ぬふりをしてきた。自分たちさえ良ければ、自分たちに影響が及ばなければ立ち上がる事すらしない愚か者ばかりだ。・・・それに、この国の獣人たちが君に、君たちの過去に起きた悲しい事件に対して関与している可能性が出てきている以上、容赦するつもりはないよ。」

「それでも、何の罪もない獣人たちが辛い目に合うなんてことは、間違っていると思いますわ・・・っっ!」


レイラはヨスミへ精いっぱい講義する。


これが貴族令嬢としての立ち振る舞いというモノなのだろう。

上に立つ者としての考え、威厳なのだろう。


レイラはどこまでも【貴族の義務(ノブレスオブリージュ)】をその身に体現し、弱者のために戦い続けるのだろう・・・。


親が良いとここまで子も立派になるわけだ。


ああ、とても羨ましいよ・・・。


「・・・そうだね。少し頭に血が上ってしまったようだ。」


そういって転移窓を閉じる。

これでも十分、彼等には伝わったはずだ。


今後どうなるかは彼ら次第ではある。

よりよい国となるか、戦いの末に身を亡ぼすか・・・。


まあ、僕の知ったこっちゃない。


「わたくしの方こそ、あなたに強く出てしまって・・・」

「いいんだよ、レイラ。それでいいんだ。僕が間違っているなら堂々と間違っていると言ってくれ。そういった思考は随分と前に失くしてしまったから、区別ができないんだ・・・。」

「あなた・・・。」


実際にそうだ。

非人道的な人体実験を何十年も続けて、倫理観を正常に持て、だなんていう方が難しいと思う。


レイラは怒られシュンとする子犬のようにヨスミの腕にそっと絡みつく。

ヨスミはレイラの肩を抱くと、転移を持ってその場から姿を消した―――――。



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