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炎の痛み (*お知らせ有 令和6年8月21日


この度は、【ドラゴンの愛しさをどうして誰も理解してくれないだろうか!?】をご愛読してくださり、ありがとうございます!


ごめんなさい!

昨日より体調がすぐれないため、投稿するのが難しくなったので今日の更新はありません・・・。

このままゆっくり休養し、明日からまた続きを投稿させていただきます。


楽しみにしてくれていた方、本当にごめんね!

明日からまたバンバン書くから楽しみにしてねっ!



「・・・い、いきなりぶっこんできたわね、ヨスミ。」

「あれを前に友達になろうなんて言えるの、この世界であなたしかいないですわね・・・。」


さすがのヨスミの行動に2人は我慢できなかったようだ。

だが、当の本人は目をキラキラさせ、まるで純粋な子供のような表情を浮かべていた。


言われたエヴラドニグスさえもピタッと動きが止まり、じっとヨスミの方を見ていた。


数秒の沈黙が流れる。

その反応にヨスミだけじゃなく、他の仲間たちも次第にあれ?と違和感を感じ始めるが、慌てたようにエヴラドニグスがヨスミへ向けて熱線を放射した。


だがその熱線はヨスミに到達する前に目の前にフィリオラの魔法障壁が張られて防がれる。


「まー、そうなるか・・・。でも僕は諦めないよ・・・!」

「諦めないよ、じゃないわ!避けるとかしなさいよ!しかもなに両手まで広げて受け止めようとしてたのよ!」

「あ、あの子なりのファーストコンタクトだと思ってつい・・・」

「つい、じゃありませんわ!」


フィリオラとレイラの猛抗議にたじろぐヨスミ。

その様子を見て、エレオノーラは隣でディアネスをあやすハルネへと問いかける。


「え、ハルネ様・・・?あれを放っておいてもいいのです・・・?【炎を喰らう者】が居る前なのですよ・・・?」

「いつものことで御座います。それにあんな状態でも常に【炎を喰らう者】への警戒は怠っていませんのでご心配なさらず。」


と続けて無数の炎弾がヨスミ達に向けて放たれるが、その全てがフィリオラの張った魔法障壁に到達する直前に姿を消し、別の場所に出現して明後日の方向へと飛んでいく。


その炎弾に紛れて、エヴラドニグスの鞭のようにうねる尾がすぐそこまで迫ってきていたが、突如として尾が切り落とされ、霧散したことで直撃することはなかった。


いきなり何の前触れもなく切り落とされた尾にエヴラドニグスは驚いていたが、周囲の熱気を取り込んで尾が再生された。


遠距離、中距離共に潰されたことで、近距離攻撃に切り替えたようで急接近するとその炎爪を振り下ろす。


だが逆に近づいたことでフィリオラの攻撃範囲内に入ったようで、軽く飛び上がって体に捻りを加え、原寸大の尾を顕現させると体を回転させて先ほどエヴラドニグスがやったような尾の一撃を放つ。


その一撃はエヴラドニグスの顔面に直撃し、そのまま反対側の崖まで大きく吹き飛ばされた。


「攻撃を反らしただけのヨスミ様、容赦なく反撃として攻撃を叩き込んだレイラ様とフィリオラ様なのです・・・。」

「ヨスミ様はまだ諦めていないようですね。」

「あーう。」

『なら私も遊ぶのー!』

「ハクア様はこっちで私たちと遊びましょうねー。」


とハルネはハクアとディアネスを連れて先ほどヨスミが作り出した階段に戻っていく。

攻撃の余波がエレオノーラのすぐ横を通り過ぎたことで、慌てた様子でハルネの後についていった。


「ヨスミ、さすがにあれは諦めなさいよ。」

「まだだ、まだ終わらんよ・・・!!」

「本当にあなたという人は・・・。」

「はあ・・・、ミラ。絶対に私の傍から離れない様にね。」

「ぴぴっ・・・」


ただ、ミラが張っているこの冷気バリアの外に出たら一瞬にして燃やされかねないため、転移でエヴラドニグスの傍に寄ることも、ましてや抱き着くことも触ることもできない・・・。


あの体が炎そのものなら、スキンシップはまさに命がけってことになるな・・・。

だが、諦められないのが僕の竜愛というモノよ・・・!


「・・・なあ、ミラ。」

「ぴい?」

「僕に耐火性能を上げられそうな防御魔法とかは掛けられないか?」

「触る気満々じゃない!」

「あ、あなた・・・さすがにあれに触ろうというのですの?!」


明らかに正気じゃないと疑われるヨスミの行動、思考ではあるが、実際にはヨスミに取ってこれが正常運転であるから質が悪い。


「どんな時でも、触れられる温もりで警戒心を解いていくのはセオリーなんだぞ?」

「いやいや温もり感じるどころか、こっちが燃やされるっての!」

「あなたのそのドラゴンへの深い愛に尊敬の念を抱きますわ・・・。」

「僕の愛はまだまだこんなものじゃないさ!」


どうすればいいのかわからず、困惑を続けているミラはとりあえずヨスミに防火魔法を掛けた。

全身を包む冷気を感じ、ヨスミは冷気バリアの外に恐る恐る片腕を出してみる。


だが出した腕から伝わってきたのは熱された大気の灼熱ではなく、ミラの魔力で包まれた優しい冷気()だった。


「ああ、ミラ・・・。君からの愛を感じるよ・・・!」

「ぴっ!?」


と突然そんな風に言われたミラは頬を赤らめ、動揺する。

そのせいでミラの魔力に乱れが生じ、周囲を包んでいた冷気バリアにノイズが走り始める。


「何いきなりミラを口説いているのよ!? 今ミラを動揺させたら冷気バリアが崩れ・・・あーっ熱いってば!」

「あ、あなたぁー!腕が、出してる片腕が燃えてますわぁー!?」

「いや、これはミラの愛のぬくもりだよ・・・!僕のわがままにもきちんとこうして応えてくれる、ミラの思いやり・・・すごく温かいよ・・・!」

「ぴ、ぴぃ~・・・ぴぴ・・・」

「あーっ!あーっ!これ以上ミラを刺激しないでぇ!ヒビが!隙間から熱気がぁ!」

「あなたぁー!腕を引っ込めてくださいましぃー!その腕を包んでいるのはミラの魔法(ぬくもり)じゃなくて、エヴちゃんの100%殺意ですからぁー!」


フィリオラが溜まらず顕現させたままの原寸大の尾をヨスミの頭を締め上げ、そのまま冷気バリアの中心部に引き込んだ。


酷く延焼している片腕が冷気バリアに入ったところでレイラが必死に鎮火し、習ったばかりの治癒魔法を急いで掛け始める。


「だ、大丈夫だ・・・。これも、あの子の、愛・・・」

「何馬鹿な事いってんのよもう!」

「ううう、腕が・・・あなたの腕がぁ・・・」


混沌とした冷気バリア内、エヴラドニグスは今がチャンスとばかりに先ほどよりも強烈な熱線を放つ。

明らかにエヴラドニグスに向けられていた警戒が緩んでいたはずだったが、フィリオラが透かさず魔法障壁を張り、阻まれた熱線は障壁に触れて無数に枝分かれし、軌道を変えて霧散した。


「今はあなたに構ってる余裕なんてないの!」


と口が大きく裂け、高密度の魔力の光線が放たれた。

その光線はエヴラドニグスの腹部に直撃し、そのまま崖にどんどん押し付けられ、埋められる。


一度体を霧散させ、別の所に火が集まって体を形成し、エヴラドニグスが姿を現した。


・・・なるほど、周囲が灼熱の大気だからこそ出来る芸当か。

今この地帯は炎そのもの、だから攻撃を受けたとしてもすぐに再生できるし、なんなら僕の転移の様にこの灼熱の大気内ならどこにだって姿を顕現させることができるわけだ。


・・・つまりこの大気はエヴラドニグスの体の中と考えられる。

もし僕の考えが当たっているのなら・・・


とヨスミが考察した通り、エヴラドニグスの周囲に球状の炎の塊が無数に浮かび、そこから熱線が放たれた。


「そんなこともできるの!?」


と、フィリオラが急いで魔法障壁の強度を上げるが、今度はその背後に炎球が浮かび、そこから熱線が放たれる。


「うそでしょ・・・!?」


と片腕を反対側の方へと翳して魔法障壁を張り、何とか熱線を防ぎきるも今度は真上の方に無数の炎球が出現し、熱線が降り注がれる。


「な、めんな・・・っ!」


竜の腕を顕現させ、真上の方にかざして3つ目の魔法障壁を張り、熱線をなんとか防ぎきった。


その後、ミラが瘴気を取り戻し、揺らぐ冷気バリアを正常に張り直し、治癒魔法を掛け終えたレイラが低く腰を落とし、黒妖刀を構える。


「・・・<神速・斬>!」


と目にも止まらぬ速さで黒妖刀を抜き、横に切り払う。

魔力が乗った斬撃は目の前に広がる空間を一閃し、レイラの視界に映る空間がエヴラドニグスごと斜めにズレた。


直後、空間に大きなズレが発生し、灼熱の大気がズレた空間へと吸い込まれていく。

エヴラドニグスもその空間へと引きずり込まれそうになり、地面にしがみ付いて必死に耐える。


ズレた空間は徐々に元に戻っていき、数秒後には何事もなかったかのように元に戻った。


エヴラドニグスは何とか耐えたが、周囲の灼熱に熱された大気はその大半が空間内へと吸い込まれたようで、2頭分された体を修復できる力は残っていなかった。


徐々に体が冷やされ、体が小さくなっていく。


「レイラ・・・、今のは・・・?」

「さっきあなたが仰っていたイメージという奴ですわ。全てを置き去りに出来るほどの神速が発する衝撃波を思い出して、それを刀に乗せられるのではと思い、魔力を込めて思いっきり切ってみましたの!まさか目の前の空間ごと切れるとは思いませんでしたわ・・・」


・・・なるほど、神速なんて速度で放たれる剣撃ならその切り払った風圧はかまいたちのような役割を果たし、斬撃となって飛んでいったと。


しかもそれに魔力まで乗っていたわけだから、空間に漂っていたエヴラドニグスから漏れ出た灼熱の魔力で熱せられた大気まで斬られ、ズレたことでそこに真空が発生して一気に冷やされたというわけか。


体を回復させようにも、周囲を漂っているのは熱を帯びた魔素じゃなく、ただの魔素だから体を回復させることも難しくなったと。


「ミラ、冷気バリアは解いて良いよ。」

「ぴぃっ!」


ヨスミ達を包んでいた冷気は形が崩れ、静かに霧散していく。

ミラは周囲に漂う魔力を食べ始め、これで完全にエヴラドニグスは動けなくなった。


半分にされ、形を保てなくなったエヴラドニグスは徐々に弱っているようでその大きさがどんどん小さくなっていく。


本来なら、奴から漏れ出た灼熱の魔力溜まりの中でエヴラドニグスと戦うことになるわけだから、奴の攻撃で死ぬことだけじゃなく、周囲に漂う灼熱の魔力溜まりに触れて死ぬことになるわけだから、そりゃあ苦戦はするだろうし、大規模な戦いにもなるだろうな・・・。


今回はリュウスズメであるミラがいたことと、レイラの偶然が生み出した新技によって何とかなったってわけだ。


それにフィリオラの卓越した魔力操作が無ければ、エヴラドニグスの熱線を防ぎきることはできなかった。


・・・あれ、僕は何をしたっけか?


「あなた・・・。」

「ん?」


とレイラが心配そうにこちらをみている。

どうやらエヴラドニグスの事を心配しているらしい。


ヨスミは地面に弱々しく横たわるエヴラドニグスへ静かに歩み寄ると、傍にしゃがみ込む。

エヴラドニグスのと思わしき部分からは殺意と恐怖が入り混じった感情が読み取れる。


自分をこんな風にした僕たちへの恨みに対する殺意か、そもそも自分以外に対する純粋なる殺意なのか。

自らが死ぬ恐怖か、今から僕たちに何をされるかわからないことへの恐怖か・・・。


だがヨスミが取った行動は、エヴラドニグスにとどめを刺すわけでもなく、ただ小さくなった炎の体を優しく撫でることだった。


小さくなったとはいえ、エヴラドニグスは炎そのもの。

撫でる手に伝わってきたのは強烈な痛みと熱さ。


ようやくエヴラドニグスを撫でることができたと内心喜んではいたが、その反面炎を撫でているから実体はないのだろうと思っていた。


だがヨスミが撫でている手は確かに何かに触れていた。

そしてそれは微かに震えているように感じ取れる。


「あなた・・・、手が・・・」


レイラが心配そうにヨスミの傍に来て、触れている右腕に治癒魔法を掛ける。

再生していく手の平から、それは更に鮮明に伝わってきた。


そしてヨスミは悟った。


「そっか、そうだよな・・・。気付くのが遅くなってごめんね・・・。ゆっくりおやすみ。」


エヴラドニグスの感じてきた想いが、痛みとなってヨスミの心に刻まれ、そしてヨスミはエヴラドニグスに謝罪の言葉を掛けた。


そしてエヴラドニグスは静かに目を閉じ、炎の体はゆっくりと霧散していった―――――。



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