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新たなる出会い


「こっち、終わった・・・。」


アリスは床に転がっているゴブリンたちの死体から、耳を切り落とし、腰に付けている小型のマジックポーチへと入れていく。


「こっちも終わったよ。これでお互いにEランクの昇級試験に挑めるようになったね。」

「う、ん。わたし、がんば、る!」


あざといようなポーズでガッツポーズを取るアリス。

そんな姿を事件に横たわりながら見守るシロルティアの姿が見える。


『それにしてもヨスミのそれは便利だな。耳だけを転移させて直接マジックバックに入れているなんて、器用な事をするものだ。』

「わざわざ手を汚す必要もないから、便利なんだよねこのやり方。僕のスキルを有効活用しているだけさ。」

「むぅ、ズル、い・・・。」


顔は見えないが、きっと頬を膨らませているアリスの頭をフード越しにわしゃわしゃと撫でる。

ふと空を仰げば陽も傾き、オレンジ色の空模様になっていることに気がついた。


「よし、そろそろ戻ろうか。」

「・・・ヨスミ、なんか、あそ、こいる、よ・・?」

「ん?なんかって?」

「人・・・、いっぱい集め、られて、る。」


アリスが黒鎌を持ってとある方向を刺した。


人が集まっている、ではなくて()()()()()()ってことは、何かしらの事件に巻き込まれて捕まっている可能性が高い。


まあ、その概ねは借金の肩に奴隷として売られたとか、人攫いとかそんなもんだろう。


「・・・助け、ないの?」

「アリスは助けたいのか?」

「冒険者、ランク・・・のひょーか、てんに、なる・・・!」

「・・・なるほど、現金なことだ。」


暗闇で顔の見えないアリスはきっとドヤ顔を決めているだろう。

まあ、アリスはどうやらやる気満々のようだし、シロルティアが傍にいるから問題ないとは思うけど・・・


「それ、で、ヨスミ、は助け、ないの?」

「・・・あまり関わり合いにはなりたくはないんだけどね。まあ、仕方ない。」

「やった・・・!」

「何があるか分からないから、シロルティアの傍を離れないこと。いいね?」

「もち、ろん・・・!」


そしてアリスはシロルティアの所まで走っていき、その背中に乗るとシロルティアはその大きな体を起こしてヨスミの元へやってきた。


ヨスミたちはアリスが差した方向に向けて進み始めたが、茂みが生い茂り、木々もそこそこ生えていた。


”林”と見た方がいいのかな?

森とまではいかないが、町と村の違いが如く、その小さな森林の草木をかき分けながら進んでいくと小さな納屋のような建物が見えてきた。


きっとアリスが感じ取ったものはそこにあるのだろう。


そのまま小屋の近くまで進んでいくと、中から何やらすすり泣きのような声が聞こえてくる。

千里眼で中の様子を透視してみると、何十人もの冒険者のような人や普通の女性、子供なんかが手足を縛られて閉じ込められていることがわかった。


「なに、か・・・わかった、の?」

「ああ、うん。一応ね。まあ、人攫いの類で捕まった人たちのようだよ。きっと奴隷にでもするつもりなんじゃないかな?」

「そん、な・・・ゆる、せない・・・!ママ・・・!」

『はいはい。』


シロルティアは慎重に、そして優雅に小屋へと近づいていく。

周囲には見張りのような存在は見当たらず、その小屋を守っているような気配さえも感じられない。


「・・・む、ドア、に魔法陣・・・。」

『きっとこの扉が開かないようにするためのものだろう。』


ということは相手の中には魔法を扱える奴がいるということだ。

魔法使いがいるかいないかでは、厄介度は雲泥の差になる。


「・・・これで扉は開くはずだよ。」

「え・・・?今、何を、したの?」

「扉に掛けられてる魔法陣の位置を何もないただの壁に転移で移しただけ。無理に魔法陣を壊してこじ開けようとしたら、結界を張った奴に気付かれる可能性もあったし。」

「おおー・・・、さすがヨスミ・・・!」

「よせやい。ま、後は2人に任せるよ。僕は・・・」


とこれ以上の干渉をせず、その場から離れようとしたが黒鎖が突然飛んでくるとヨスミの体に巻き付く。


「だ、め。一緒に、助け、るの・・・!」

「えー・・・、僕はいいよ。本当に大丈夫だから・・・ぁぁぁぁああああ。」


と黒鎖を解こうとしたが全くほどけず、結果としてそのまま引き摺られながら小屋の前まで連れてこられるはめになった。


アリスがそっと扉を開けると、中にいた囚われている人たちの視線が一気に向けられる。

全員が絶望に染まったような何もかも諦めているような表情で、皆平等にボロボロだった。


そんな彼らにアリスは腰に手を当てて、しっかりポーズを決めながら彼らに話しかける。


「助け、に、きました・・・!」


アリスが告げた、助けに来たという言葉に、生気が消えた瞳が徐々に光が灯されていき、その目に涙を浮かべ始める。


アリスは不用心に中に入ると突然、小屋全体に巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「おおおお・・・!?」

『2段トラップだったか・・・!』

「まあ、そうだよね。もし突破されたとしても必ずその先の警戒はするわけだ。まあ、今回は運が悪かったね。」


そういって、その魔法陣を全くの別の所に転移で移しかえる。

直後、大きな爆発音が辺りに響き渡った。


「・・・ズルい、ヨスミの、それ。」

『魔法陣までも転移の影響を受けるとはな・・・。』

「まあ、やろうと思えば多分なんでもできるよ。」


そう、きっと試せはいないだけできっと色々なモノを転移させられるはずだ。

傷を負ったという概念さえも別の者に移し替えることができたわけだし。


故に、傷を負った概念が無くなった物体はそもそも怪我をしていなかった事になり、体は回復するっていう感じのようだ。


とりあえず、ついでに彼らを縛り付けていた枷さえも全て転移で外す。


「ここまでやったんだから、後はアリスが何とか・・・」

「え・・・?あ、あんたは・・・」


とそこで小屋に閉じ込められた中で、1人見覚えのある人物が酷く驚いた様子でヨスミの事を見ていた。


そしてすぐさま嫌悪感のある目に変わり、ヨスミの事を強く睨む。

そう、ドンデイル洞窟の帰り道で、ベドウという冒険者と共に僕たちを煽り散らかした冒険者の1人だった。


だが、格闘家の女の子だけで他に見かけたレンジャーと神官の姿はどこにも見当たらない。

あのベドウの姿がないということは元居たパーティーを裏切った、ということなのかな?


まあ、僕にとっては心底どうでもいいことだが・・・。


「いっしょ、に・・・町に、戻ろう・・・!」


アリスは手を差し伸べる。

近くに居た女性がその手を取り、立ち上がると捕まっていた人たちが次々とゆっくりと立ち上がり、小屋の外に出る。


全員が出た所で、アリスが何か言いたげの表情をきっとしているはずでヨスミの方を見ていた。


「・・・わかったよ。ただし、僕がするのは彼らを送ることだけだ。後はアリスだけで何とか助けるんだぞ?」

「はー、い!」

『すまないな、ヨスミ・・・。』

「別に構わないさ。それじゃ、後は宜しくね。」


そういって、アリスとシロルティア、捕まっていた人たち全てを対象に、カーインデルトの入口へと転移で飛ばした。


残されたヨスミは大きく欠伸をした後、その小屋から立ち去ろうとした時、背後の茂みから6名ほどの変わった衣装を着た人間たち、そしてその手には鎖が握られており、その繋がっている先には一人の・・・


・・・ん?

あれは・・・、人間じゃない?


頭に生えた角、肌の上からでも見えるほどの薄い鱗のような模様に、腰のあたりから生えた爬虫類特有の尻尾・・・。


髪は金色の長髪、瞳はまさしく竜の目そのもの・・・!

口には犬歯、ならぬ竜歯が2本しっかりと這えてるな・・・!


これは、フィリオラと同じように人型の携帯を取っている竜か?


「んだあ?てめぇ、どっから湧いて出てきやがった!それに・・・、ああああああああ!!」


と一人の男が、扉の開いた小屋を指さして驚きの声を上げる!


「奴隷として売り飛ばす商品たちが消えてるぞ!?」

「馬鹿な・・・、確かに魔法陣は発動せずに残っているぞ・・・!一体どうやった・・・!」

「それを素直に話すと思うか?」


正直、ヨスミは彼らの事よりも、彼らが今奴隷として連れてきたその首輪の子が気になって仕方がなかった。


「ったく、せっかく苦労して竜人(ドラゴニュート)を捕まえたってぇのによぉ・・・。これだけじゃあ赤字だぜぇ、全く・・・。」


ど、ドラゴニュート・・・・!

つまり、竜人種ってことか?!


竜が人に姿を変えているというわけではなく、人として竜の遺伝子を持った亜人ということか。


「おい、お前・・・。今すぐその小屋の中にいた奴らをどこに隠したか吐け。」

「なあ、そこの君。」

「・・・ぇ?」


ああ、声も可愛らしいと来た・・・。


「助けてほしいかい?」


男たちをガン無視しながら、ヨスミはボロボロの竜人(かのじょ)に話しかける。


「てめぇ、俺らを無視するたあいい度胸じゃねえかよ!!」

「にげ、てぇ・・・」


彼女から口に出た言葉は、ヨスミの問いに対する答えではなく、ヨスミを思い、生き残ってほしいという思いやりだった。


そんな状況でも僕の事を心配してくれるなんて・・・。


「僕なら平気だ。だから君は自分の事だけを考えて返事を聞かせてほしい。だからもう一度聞くよ?君に酷い事をした彼らから助けてほしいかい?」


そう笑顔で話すヨスミの表情を驚くような顔で眺めながら、次第に苦しそうな表情へと変わり、涙を浮かべてぼそりと一言だけ呟いた。


「・・・は、ぃ。わたし、をたす、けて・・・」

「わかった。それじゃあ今から少しだけ目と耳を塞いでてくれるかな?きっと怖い思いをすると思うから。」

「・・・わか、りました・・。」

「おい、おめえら!こいつを殺して、女どもをさが・・・・ぁえ?」


直後、その場にいた奴らのうち1人を残して他全員の首だけが同時に消えた。

そして、残された男のの関節全てに細長い楔のような棒が突き刺さり、悲鳴が上がった。


「な、なんなんだよぉ・・・一瞬にして、仲間たちが・・・死んで・・・ひぃっ!?」

「お前には聞きたいことがあったから生かしているだけで、聞こえたらそのままここでこいつらと同じように死ぬか、衛兵に渡されるか、どっちがいい?」

「ひぃぃいい・・・!?」

「そう、この竜人ちゃんを一体どこでどうやって捕まえたのか、たっぷりと聞かせてもらいたいねぇ。あんな綺麗な鱗や肌をこんなにも傷物にしたんだ・・・。それじゃあ、始めようか・・・。」


右目の眼帯を取り、中から覗かせるは無数の瞳がみっちりと詰まった異形の目。

その瞳はそれぞれが独自で動いており、統一性のない動きを見せている。


だが、今回はヨスミが抱き、向けられている憎悪に合わせてその男に全ての視線が集まる。


その瞳を見た男は、あまりの悍ましさに気を失った・・・。



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