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6話 え…あの……俺のお金…

「ホノカ! サシャ! 俺の左右に散れ!」


窮地だ!窮地の他ない!


しかし、冷静になるんだ俺。


 ジャイアントスライム含む、スライム系統の魔物の攻撃パターンは至って単純だ。


 触手を伸ばして攻撃を仕掛けるか、上から押し潰す形で飲み込んで体液で溶かす、この2つが基本的だ。


俺は左右に散った2人に、続けて支持する。

「それぞれを頂点として湖上に三角形を描くんだ!」


「わかった!」

「どういうことですか!?」


俺の戦略は至ってシンプルなもの。


 要はヘレナさんが魔法を放つまでの時間稼ぎが出来ればそれでいいのだ。


この湖は周長が割と短い。そしてほぼ円状だ。


 だから円の上に三角形をそれぞれが描く形で散り、攻撃を分散させようという策である。


 俺たちはそれぞれの場所へ移動し、俺は大声でヘレナさんに尋ねた。


「ヘレナさあん!! あとどのくらいですか!?」

「んー、あと1分くらいかな」


あと1分…!?

まあまあな長さじゃないか!


…だがしかし、こいつは未だに攻撃を仕掛けてこない。


このままいけば────

とフラグめいたことを考えた俺が馬鹿だった。


突如として蠢き出すジャイアントスライム。

途端、触手が俺に向かって伸びてきた。


 俺は腰に携えている剣に手を伸ばす。太さが俺の体ほどあるその触手が顔の手前まで来た所、ギリギリで俺はそれを剣で切り落とした。


 そして直ぐにホノカとサシャの方へ視線を移す。…サシャは大丈夫そうだ。触手を大剣で捌き、受け流していた。


一方のホノカは────

「レオさああん! 助けてくださああいい!!」

伸び続ける触手から高速で逃げ続けていた。

「ホノカああ! あの力使えばいいじゃないかあ!」

ホノカは俺の言葉を聞くと、パッと足を止めた。

「あっ、そっか!」


そして再び俺は目撃する。

彼女の体から湧き上がる青白いオーラを。


 ホノカが触手に向かって振り返ると、何をするでもなく、触手は塵となっていた。


サシャは顎を外したかのように驚愕していた。

俺も驚く。


…やはり彼女には何かがある。


 その正体を色々と思考したいところではあったが、少しでも気を緩めると、この次々と襲いかかって来る触手の攻撃を食らってしまう。


「ヘレナさああん! 残り時間はあ!?」

「んー、まだ40秒はかかるかなあ」


クソっ…!

何であんなにも危機感がないんだあの人は!


だがしかし、そこで俺に妙案が舞い降りて来た。


「ホノカ! “あの力” 溜めて放つことは出来るか!?」

「え!? やったことはないですが……恐らく!」

「よし! お前ら集まれ!」


2人は俺の元へ駆け寄って来る。


俺が思いついたのは、ホノカの力を活かす作戦だ。


 先程彼女が放ったあの力は、触手を塵にしてみせた。つまり、どういうわけか知らないが、彼女の力は “有効打” なのだ。


「レオ! どうしたんだ!?」

「レオさん!」

「2人とも、よく聞いてくれ!」


 彼女たちは俺の傍に近寄り、それぞれ触手を捌きながら俺の言葉に耳を傾けた。


「このクエスト、こいつを倒せば多額の金が手に入る。だけど、俺は平等主義だからな。山分けだ。」


「それはありがたいですね」


「だが、ヘレナさんを含めると、1人分の金が少なくなる」


「仕方なくないか?」


「ああ。ヘレナさんの力を借りるならな。だけど、俺たちだけの力でこいつを討伐すれば?」


「「お金は私たちだけのものに…!」」


「そういうことだ!」


 俺は触手を強く弾き返し、ジャイアントスライムはほんの少し怯んだ。


その隙に、俺は彼女らへ作戦の全貌を話す。


「まずサシャ。お前は俺にめいいっぱいの打撃を与えてくれ」


「そ…そんなことしていいのか…?」


心配そうに俺を見つめるサシャ。

安心させるように、俺は笑いかけた。


「ああ、むしろ助かるよ。そしてホノカ。お前はひたすらあの力を溜めてくれ。」


「わかりました!」


俺は笑みを浮かべた。


「お前ら! 気合い入れろよ! これが俺たち初の魔物討伐だ!」


「「了解!」」


 俺が指示をすると、サシャは俺の手のひらを連続して殴り続けた。


俺はその打撃の威力を『抹消デリート』で吸収していく。


 ある程度その威力が溜まったところで、俺はホノカをお姫様抱っこで持ち上げた。


「え!? ちょっとレオさん!?」

「悪いな、我慢してくれ!」


 俺は溜めた威力を両足の先から一気に放出、空を駆けるように飛んだ。


 巨体であるジャイアントスライムを上から見下ろせる程の高さにて、ホノカへと尋ねる。


「ホノカ! 力溜まったか?」


「はい! ある程度は!」


「よし! なら突っ込むぞ!!」


「う…嘘でしょおお!!」


 俺は頭の中で飛び飛び数えていたカウントダウンがゼロになったことを確認し、ヘレナさんに叫んだ。


「ヘレナさん!! もう打てますよね!? 俺に向けて打ってください!!」


「そうか…! レオくん!」


彼女は俺の考えを悟ったようで、魔法の詠唱を唱え始めた。


「『闇は収束し、光は発散する。万物をも穿つ我が魔法よ。今、神の力を借りて、ここに放つ』


沐雨疾風の贈与(デルタ)』…!」


 刹那、ヘレナさんの目の前に大きな魔法陣が何重にも重なり、超高濃度であり超強力な魔力が俺へと放たれた。


「『抹消デリート』!」


 俺は能力を発動し、拳にヘレナさんの魔法の威力を閉じ込めた。強力な魔力の影響で、バチバチと拳の周りに火花が散っていた。


俺は空中でホノカを手放す。

落下しながら、俺は言う。


「いいかホノカ。タイミングを合わせて、同時に攻撃するんだ。…できるな?」


「…私たちを誰だと思ってるんですか? 将来魔王になる者たちですよ?」


「ふっ…そうだな」


 俺たちはジャイアントスライムの脳天であろう部分を目掛けて一直線に落ちた。


「「うおおおおおお!!」」


 獣のように咆哮をあげながら、俺たちはジャイアントスライムに拳をぶつけた。


 と同時、ジャイアントスライムの体が勢いよく弾ける。その破片、もしくは肉片は、雨のように周囲へと降り注ぎ、俺たちは湖の中に落下した。


    1


ギルドに戻ると、俺たちは盛大な祝福をされた。


「よっ!! ギルドの英雄さん!!」

「あなたたち意外と強いのね!!」

「よくぞ生きて帰ってきた!!」


そしてその場にいたみんなで酒を酌み交わした。

それはもう盛大に。

ホノカは酒を飲めず悲しそうにしていたが。

華奢な見た目をして案外酒豪なサシャが楽しそうに飲んでいたのが印象的だ。



俺たち3人は2000万ケルトという大金を手にした。

“ケルト”というのはこの世界の通貨の名称である。


ケルトは日本円とほぼ同じ価値だ。

ヘレナさんには、俺たちを危険に晒したということで1万ケルトしか分けなかったが、それでも彼女は大いに喜んでいた。


 余程貧乏な生活をしているのだろうと、俺たちは少しひいた。


そして大金を手にして帰宅、後に就寝。

翌朝、二日酔いの頭痛で目が覚めた。


俺は慌てて外出する。


昨日のクエストの報酬で俺が得たのは670万ケルト。

そして今ある借金が600万ケルト。


そう!

借金は今日をもって無くなるのだ!

特に生活に変わりはないが、それでも幾分気分が楽になる!


 それに貯金が170万も増えるのだ。嬉しいことに他ならない。


 俺は借金を返すため、ドリトランが運営する銀行へと向かった。


「こんにちは、レオさん。借金返しに来たんですか?」


「ええ!」


 彼女は『ハル』さん。この銀行に務めている女性だ。この前、借金をした際にはお世話になった。


「随分とご早い返済ですね。それでは残りの600万ケルトをご返済お願い致します」


 俺は大金の入ったバッグの中身を確認する。そして感じる確かな違和感。


「…あれ……?」


簡潔に言おう。

バッグの中には、あるはずの大金がなくなっていた。

なんなら、残りは2万ケルト程だった。


「スゥゥー……」


俺は大きく息を吸う。そして吐いた。


「ハルさん。絶望したことってあります?」

「はい?」


…さて、どうしようか。


    **


「多分、奪われた」

「え!? それって……ええ!?」


 俺は家に帰り、ホノカへとお金のことを話した。俺は酔っても記憶が残るタイプなので、昨日のことは鮮明に覚えている。


 俺は大金の入った大きめのバッグの中身をしっかりと確認してから帰宅した。


 それから寝る寸前まで俺はベッドの横にバッグを置いて、その中にある大金を眺めていたのだ。


 そして翌日の今日、俺はバッグの中身を確認せずにそれを持って外に出た。


 道中、人とはあまりすれ違わなかったし、バッグのチャックも閉めていた。


だから、盗まれたとしたら俺が寝ている間なのだ。


俺が寝ている間、家にいる者としたら───

「─── 一応聞くが、お前じゃないよな?」


「私なわけないじゃないですか! こう見えても、レオさんには感謝してるんですよ!」


「だよなあ…」


俺はしばらく沈黙し、思考する。


とりあえず悩んでても仕方ないな。


 それに窃盗の確信がないため、国に相談することも出来ない。そのうえ、借金を返すのが遅くなってしまうと利息が膨らんでしまう。


ならば、手っ取り早く、再びお金を稼ぐしかない…!


「よし! クエストするか!」

この話には借金の話が含まれていたと思いますが、作者は借金をしたことがないので、その仕組みがよくわかってません。

表現が、どこかで間違っている可能性が大いにあります。

その場合はご遠慮なく申してください。

というか、この話の舞台は異世界なんで、あんま気にしないでください。

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