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第九十四話 楽しいこと

「もしかしてヨネ子ちゃんも、マイム・マイム会合に行ったのかな」


 車に乗り込んでシートベルトをしめると、私は先程フサ子さんに言いかけたことを口に出した。


「あ? 何だって? 会合?」

「そっか。まだ話してなかったっけ。今朝のことだったからなぁ」


 秋月くんには既に話していた気になっていたけれど、まだだったようだ。私はエイリアンたちの楽しいイベントについて説明した。


「……奥多摩の山中で、夜通しマイム・マイム踊るだけ?」

「そう言ってたよ」

「なんだそのシュールな集会は」

「だからマイム・マイム会合だってば」

「あの集まりは、楽しいけど結構ハードだよ。なんたって日没から夜明けまで、ずーっとぶっ通しで踊り続けるんだからね」


 運転席からプルプル星人が会話に加わってきた。


「ジョージくんも行ったことあるの?」

「うん。八幡さんに誘われて、一昨年の夏に一度だけ」

「その時の踊りは何だった?」

「ドラえもん音頭だよ」

「そんなものまで!」

「楽しかったけどねぇ……次の日筋肉痛で大変だったから、それ以降は踊り手としての参加はしてないよ。僕は体型まで変える擬態は慣れてないし、子どもの姿形を保つだけでも、結構なエネルギーを消費しちゃうから」

「へえ」


 そういえばあの会合って、参加者は皆地球人の子どもの姿になるんだっけ。子どもたちが夜の山中で夜通し輪になってドラえもん音頭やマイム・マイムを踊る様は、想像だけでも妙にミステリアスな光景だ。うっかり目撃してしまったら、かなりヒヤリとするだろう。


「僕は踊らないけど、打ち上げ準備には関わるよ」

「打ち上げ?」

「うん。日の出まで踊り明かしたら、皆でご馳走食べながらワイワイお喋りするんだ。そこだけ参加するエイリアンも結構いるんだよ。僕も会場までご馳走の運搬をしたら、そのまま打ち上げに出るつもり。それだけなら、子どもに擬態しなくても大丈夫だしね」


 そんな関わり方もできるのか。楽しそうだなぁ。


「ご馳走って、もしかしてイカタコ亭の料理を運ぶの?」

「うん。さっき注文しておいたから、夜に取りに来るよ。奥多摩行ったら、ついでに天体観測に良いスポットも探索してくるね」


 宇宙人たちの打ち上げが終わる頃。私と秋月くんの試験も終わっているのかな。少し先の未来の予定を思い浮かべて、なぜだかむくむくとやる気が湧いてきたのだった。


「明日、がんばろうっと」

「どうした突然」


 ぎゅっと拳を握り、小さくガッツポーズを作った私を見て、秋月くんが小さく笑った。


「私も楽しく打ち上げたいなって思って」

「楽しいことが待ってるって、いいよねえ」


 ジョージくんがハンドルを切りながら、ウンウンと頷いている。


「二人とも、今日はもう学校には戻らないんだよね? このまま家まで送るよ」


 たまたまだろうか。出発してから今まで、ずっと交差点で赤信号に捕まることがなかった。私達を乗せた黄色の車は、穏やかな昼下がりの町の中を滑らかに走り抜けて行った。

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