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第七十九話 時間をモノにする

「ふうん。なるほど。じゃあボクは、お外を見ながら待ってますね。ごゆっくりどうぞ」


 八幡ちゃんは私達から離れたシートに、靴を脱いで上がった。背筋を伸ばして正座した彼は、窓の外に身体を向けている。車窓からの景色を眺めるつもりらしい。


「あんたが降りる駅まででいいわ。何駅目で降りるの?」

「……ここから三駅目で降ります。じゃあ……何を話しましょうか」

「……」


 フサ子さんは長い足を組んだ。ロングブーツの黒革が擦れて、ギュッと音を立てる。

 

「……そうね……何を話せばいいのかしら……」


 きっとこれもフサ子さんの地球での経験値を増やすための、訓練の一環なのだろう。地球人の私と絡ませることで、ヨネ子ちゃんは部下を鍛えようとしているのだ。


「私から質問していいですか」


 話し出し方を完全に見失っている様子のフサ子さんに、私から切り出してみた。

 

「え……うん。何よ?」


 驚き顔のブロンド美女がこちらを見る。不意を突かれたのか、これまでよりも随分幼い印象を受けた。しかしこちらの方が、本来の年相応のフサ子さんなのかもしれない。


「あ、タメ口きいていい? その方が話しやすいし」


 彼女は私と変わらない年齢らしいので、そっちのほうが良い気がする。フサ子さんは更にびっくりした表情に変わったが、「いいわよ……好きにしなさいよ」と、しどろもどろに了承した。

 

 私今、全然緊張してない。緊張感ありまくりだった共通テスト全日程を、乗り越えた直後だからだろうか。ヨネ子ちゃんの意図するところが分かった上での、彼女の部下とのお喋りタイムだからだろうか。

 どっちにしたって、悪い気はしなかった。


「ありがとう。私ね、異星人とお話するの好きなんだ。知らなかったことを沢山教えてくれるから。常識が覆される感覚が新鮮で、楽しいっていうか」


 フサ子さんと共有する、この空間に流れる時間――それが私のものになったことが分かった。


『時間をものにする』……それが具体的にはどのような行為なのかは説明し難いけれど。支配する、主導権を握る、所有する……どの表現もあてはまるような気がした。そして支配を好む習性のレプレプ星人・フサ子さんにも、それは分かったようだった。


「……秋月一馬にばかり気を取られてたけど、あんたもある意味曲者ね」


 呟くようにフサ子さんは言った。私達は横並びに座っていたけれど、向かい合ってお互いを見つめている感覚があった。


 のろま地球人と青二才レプレプ星人との対話が、始まったのだった。

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