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第六十九話 昔話

◇◇◇



 そろそろ寒空の元での一方的な立ち話はキツくなってきたな、と思い始めた頃だった。


「いやぁ。しかし君のそのモヒカンを見ていると、昔を思い出すなぁ」


 オーナーの話題が再びモヒカンに戻ってきた。世界各地のオススメバンドについての話から、ようやく日本に帰国したように感じた。


「うちの店でよく演奏してたギタリストが、ちょうどそんな感じのハードモヒカンでね」


 ああ懐かしいなあとオーナーは柔らかい笑みを浮かべて、空を仰ぎ見ている。


「真っ青に染めてたんだ。いつも控室でパキっとモヒカン立てて、『オーナー、曲がってないっすか?』なんて確認させられたっけ」


 青モヒカン。秋月くんのお父さんと同じだ。モヒカンって派手色に染めるまでがセットなのかな。


 あの夜と同じように青いモヒカンのイメージを脳裏に浮かべていたら、街角のスピーカーから夕焼け小焼けのメロディが流れてきた。夕刻を告げる音楽が、オーナーの思い出話を切り上げさせた。


「ああ、すまんね。つい話しすぎちゃったな。君ら受験生なんだっけ? 年明けすぐに試験なんだっけな。風邪ひかせたら大変だ。すまんすまん」


 またいつでもおいで、とオーナーは笑う。私達は一礼して駅へと歩き出そうとした。


「十八か。若いねえ。そういえば、あいつもそれくらいだったか」


 オーナーは送り出しのために振ろうとした手を止めた。再び話が始まりそうな独り言が聞こえる。彼は相当なお喋り好きのようだ。


「今話してたモヒカンのギタリストな。若くて稼ぎないのに子供出来て、その数年後にバイク事故で死んじまったんだよ」


 立ち去ろうとしていた秋月くんの動きが止まった。私も思わず振り返って、質問してしまう。


「亡くなったんですか」

「ああ。もう十五年近く前か。そんなに昔に感じないけどね……気の毒だった。息子が可愛い、もっと稼がないといけないから昼職を増やしたって、毎日張り切ってたのに。子供はもう君らと同じくらい大きくなってるのか……時が経つってのは、あっという間だなぁ」


 八幡ちゃんと目が合った。私達二人は、ほぼ同時に秋月くんへと視線を移したが、オレンジモヒカンの表情に大きな変化は見られなかった。


「オーナー、そろそろ夜の準備しないと」


 ジョージくんの言葉に、今度こそオーナーさんは話を切り上げた。


「それじゃあ、良いお年を。試験が落ち着いたらまたおいで」


 またねーと笑顔で手を降るプルプル星人に見送られながら、私達はようやくライブハウスを後にしたのだった。


 冬至直後の夕刻の空は、せわしなく色を変えていく。まだまだ昼間だと思っていたはずなのに、青は薄まり始め、雲が淡いオレンジへと染まり始めていた。もう少ししたらそこは、秋月くんの髪色のような鮮やかさになるのだろう。

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