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第六十四話 レプレプ星

「私達レプレプには、母星がありません」


 ヨネ子ちゃんの最初の言葉に、私は首をかしげた。


「母星……っていうのは、レプレプ星人の故郷のことですか」

「ええ。地球人のあなた方にとっての地球、パカパカ星人の八幡くんにとってのパカパカ星と同じ意味です。私達の故郷は、もうこの宇宙に存在していないのです」

()()? なくなったって、ことですか?」

「そうです」

「なぜだ?……星の寿命を迎えたから?」


 秋月くんの質問に、ジョージくんがあからさまに表情を曇らせた。彼は答えを知っているのだろう。


「いえ。もっと不幸な理由です。レプレプ星は惑星の住民同士による戦争で、破壊されてしまったのです」


 ヨネ子ちゃんはジョージくんのように暗い顔をすることなく、緩い微笑を浮かべたままだった。


「地球の皆さん……特に日本に住むお二人は、想像しやすいのでは? 核兵器の威力をご存知でしょう」

「核兵器」

「そうです。二つの街に落ちましたよね。ああいう兵器を使いすぎて、レプレプ星は木っ端微塵に砕け散りました」


 返す言葉をなくした私と秋月くんの反応を見て、ヨネ子ちゃんは二度三度短く頷いた。


「我々レプレプ星人は、元来競争や争い好きの、血の気が多い種なんです。一つの星の中で、ずっと戦争をし合ってきました。そして遂に母星まで破壊してしまった――滑稽でしょう。その時大半のレプレプ星人は、母星を離れて別の星に散らばっていたので、幸か不幸か……絶滅を免れました。母星を破壊する核兵器は、完全遠隔操作で操っていたのです」

「……その戦争の原因と目的は、何だったんですか?」

「当時私はまだ生まれていませんが――領土争いが原因と聞いています。国境がどこからどこまでだ、ここから先はどっちの土地か。そんな諍いが発端です。なのに挙げ句の果てに、領土全てを宇宙の藻屑にしてしまったのです」

「……」

「笑っていただいて結構ですよ。本当に滑稽な話です」


 ヨネ子ちゃんはフフ、と声を出して笑った。


「それから我々レプレプ星人は、宇宙の中をさすらうようになりました。住みよい惑星を見つけてはそこに住み着き、原住民達を支配したりして。八幡くんとフサ子から、既に私達のことはお聞きでしょう? レプレプは支配好きな種。よその星の原住民達の中に入り込んで密かに主導権を握り、その星を支配する――そんなことを生きがいにしているのです」

「ろくでもないエイリアンだな」

「あああ秋月くんっ!」


 正直過ぎるモヒカンの一言に、私は思いっきり吃った。


「ふふ。良いんですよ。本当にろくでもないと、私だって思いますからね」


 ヨネ子ちゃんは小さな手で頬杖をついている。笑う口元に、小さな笑窪ができていた。

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