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第六十話 美女

 景品が全てなくなり、ビンゴゲームは終了した。その後はステージ上から奏でられるクリスマスソングに彩られながらの歓談タイムとなる。八幡ちゃんは知り合いとお喋りしてくるとホールに向かい、ジョージくんは事務所で仕事中のオーナーさんに軽食を運びに行った。


「そのヘアスタイル、素敵ですね」


 私達が切り分けられたケーキをつついていると、ある人物が秋月くんに声をかけてきた。


「色も良い。整え方も上手。とてもセクシーだわ」


 ブロンドのロングヘアを掻き上げて微笑んでいるのは、美人のお姉さんだった。真紅のタイトスカートは深いスリットが入っていて、白く長い脚が覗いている。ドレスと同じ色の唇は肉厚だ。そこからこぼれた声が妙に官能的に揺れる。彼女こそセクシーを全身で体現したような人だった。


「どうも」


 秋月くんは短く返事を返し、軽く会釈した。私達は視線を交わし、再びセクシー美女に目を向けた。彼女もエイリアンなのだろう。


「ふふ。突然声をかけてしまって、ごめんなさいね。最近は昔ほどあまり見かけなくなったから、モヒカンヘア。地球の流行り廃りは激しいものね」


 美女は私達の方へ一歩進んで、小首をかしげて笑った。


「つい親近感を抱いてしまって。私と同種のオスは、皆そんな形の頭をしてるのよ」

「あ」


 この言葉で、私は身近なエイリアン二人が話していたことを思い出した。


「レプレプ星人?」

「あら、ご存知だった?」


 美女の視線はずっと秋月くんにだけ注がれていたが、ここにきて初めて私を見た。


「あなた、ビンゴで一等賞だったお子様ね」

「おこさま?」

「意外だわ。地球人のお子様が私達のことを把握してるなんて。まあ我々レプレプは、実質この星の主導権を握ってるようなものだから。存在感が溢れ出して隠しきれないのかしらね。ほほほ」


 何だこの人。話し口調が突然高飛車に変調した。見下すような視線が私に注がれる。秋月くんへの態度と、随分落差があるじゃないか。

 それにしても、今の彼女の言葉はちょっと不穏だ。この星の主導権を握ってるだって?


「時間錠を集めてる地球人なんて、久しぶりに見たわ。しかもパカパカとプルプルと随分親密にしてるみたいね? だから少し前からマークしてたのよ、あなたたちのこと」

「マーク?」

「見張ってたってことか」

「あらやだ、プライバシーを侵害するほどのことはしてないわ。安心して? ちょっとした素性調査を入れただけ。ある程度分かったから、もうしないわよ」


 秋月くんが食べかけのケーキ皿をカウンターに置いた。一歩前に出た彼の目が、威嚇するようにすっと細められる。

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