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第三十三話 妖精さん

「お、お、お、お邪魔します‼」


 旧式ロボットの動きのまま、私は深々と玄関先で頭を下げていた。ブルブルと震える両手で神殿に捧げる供物のように掲げたのは、うまい棒コーンポタージュ味三十本入りだ。途中のスーパーで手土産選びに迷いまくる私に、痺れを切らした秋月くんが「これでいい」と選び取った品である。


「ご丁寧にどうもぉ。ああ、これ。うまい棒のコンポタ味。うちの子供たち皆大好きなんだ。ありがとねー」


 供物、もとい手土産のうまい棒の大袋を受け取ったのは、とても小柄な女性だった。痩せていて、風が吹けば飛んでいってしまうのではないかと心配になるほど儚い印象を受けた。顔立ちも柔和で、秋月くんとは全然似てない……と一瞬思ったが、優しい表情を浮かべた時の彼と、通じるものがあるかも知れない。


「秋月く……一馬くんのおばあ様ですね。私、渡邉悠里と申します! 一馬くんにはいつもすごくお世話になっていて」

「あははっ! 一馬くんだって!」


 途端におばあさんは、可笑しそうに大笑いした。小さな鈴をりんりん鳴らしたような、高くて可愛らしい声だった。しかし声量は大きくて、第一印象の儚さが薄れた気がする。


「笑いすぎなんだよ」


 苦い声を出したのは秋月くんだ。顔を見れば……あれ? ちょっと赤くなってない?


「だってさあ、一馬が『一馬くん』なんて女子から呼ばれてるの、久々すぎて笑えるじゃん。幼稚園以来じゃないかねえ。あ、悠里ちゃん。私のことはね、『ユカちゃん』って呼んで! ばーちゃんには違いないんだけど、家でも皆『ユカ』呼びだから。ね」

「え? あ、そうなんですね。じゃあ、ユカさん……」


 正直おばあさんと呼ぶのに強い抵抗感を抱く程、彼女は若く見えた。いや、見えるだけではなくて、実際そこまで高齢ではないだろう。軽くウェーブのかかったロングの茶髪に艶があるし、メイクもしているみたいだけどそれにしても肌艶が若い。四十代半ばのタックより年下に見える。


「ダメダメ。ユカ“ちゃん”ね! ユカちゃん‼」

「は、はい! ユカちゃん‼」

「よしよし」


 ハア、と頭上から秋月くんの呆れ気味のため息が聞こえてきた。


「ユカ。いい加減上がらせろよ」

「あー、ごめんごめん。さ、どうぞ。悠里ちゃん! 大したおもてなしは絶対できないから、期待しないで軽い気持ちでね。ほら、入った入った」


 ユカちゃんは喋り口調も年齢不詳な感じだった。足取り軽く、私を手招きしながら踊るように導いていく。


「ユカちゃん、妖精さんみたいです。可憐な人ですね」


 楽しそうに声を弾ませる八幡ちゃんの感想に、完全同意だ。彼女を喩える言葉として、『妖精さん』はぴったりだった。


「若作りに命かけてるのと、精神年齢が低いだけだ……ああ見えて五十六だから」

「え⁉」


 やっぱり妖精さんだ。ユカちゃんの実年齢を聞いた私は、そう確信した。

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