表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/119

第三話 ヘンゼルの小石

 無事に余裕を持った時刻に学校に付き、私は小テストの直前対策まで済ますことができた。おかげで出来はバッチリだった。タックの小言攻撃を受けるどころか、「珍しく満点じゃないか」と驚かせるにまで至った。数学は苦手科目の筆頭なのに、今日は頭が冴えまくっている。


 気分良く朝一番の授業を終えた私は、友人達と足取り軽く次の移動教室へと向かった。


「あ、ノート忘れちゃった。先に行ってて」


 いつもだったらうんざりする忘れ物を取りに戻る時にも、今日はなぜだか嫌な気分にならない。朝のスタートが良かったからだろうか。


 予鈴が聞こえた。


――行かなきゃ


 鞄からノートを取り出し、教室を出る。廊下を抜けて目的の教室へと向かう階段には、既に人気がなくなっていた。


 その時。

 階段を降りる私の視界に、キラリと小さな光が入り込んできた。


「あ!」


 思わず大きな声が出て、あわてて口を塞ぐ。辺りの教室は無人だった。私は光った場所にしゃがみこんだ。


「やっぱり! この石だ」


 拾い上げたのは、今朝見つけたあの石と同じもの――――厳密には同じ個体なわけがないが、同じ種類の石なのだろう。大きさも色も特徴も全て一致している。

 特徴。そう、その小石は白く発光していた。


「えっ。うそっ」


 そしてまたしても、その小石は手の上で消失した。やはり私の手のひらに吸い込まれるような、溶けていくような消え方だった。


 そして――――


「え……」


 私の耳に、信じられない音が入ってきた。


――予鈴がまた鳴ってる……?


 私が小石を見つけて拾い上げる直前に鳴ったはずの予鈴が、再び聞こえてきたのだった。

 しかし私が更に仰天したのは、この後だった。


「ええ! なんで⁉」


 時刻を確認すれば、まだ休み時間にすらなっていなかった。まだ数学の授業が行われているはずの時間だったのだ。時計が指している時刻が正しければ、休み時間まであと五分以上あった。


「え? え? どういうこと?」


 今朝の電車に間に合ったことを思い返し、私は更に混乱してきた。廊下がぐにゃりと曲がったように見えた。目眩だろうか。


「あ……また……」


 私はまた見つけた。


 あの光る小石である。


 見れば、廊下の隅に点点と落ちている。一定の間隔を空けた小石の列は、私を呼ぶように白くぼんやりと発光していた。


――ヘンゼルとグレーテルみたいだな


 お伽話の一場面が思い浮かんだ。森から家へ帰るための道しるべとして、ヘンゼルが落とした白い小石。あの場面のようだった。


 私はふらふらとした足取りで、誘われるがまま小石の行列へと歩み寄った。


――まさか、家まで続いてるわけないよね


 ヘンゼルが落とした小石は、確かに兄妹を家へと導いた。しかしこの小石が導こうとしているのは何処だろう?


「消えないで」


 消えたらまた、信じられない現象が起こりそうだ。

私はなんとなく素手で触っているのは禁忌である気がして、拾い上げた小石を少しだけたくし上げたスカートの上に乗せた。スカートは上の方を少しつまんだ程度なので、これくらいなら下着は見えない。うっかり誰かに見られても恥ずかしくない――とっさにこんなことまで考えたが、そんな思考はすぐにどこかへ消えていた。


「あ、あっちへどんどん続いてる」


 私は小石を拾い集めることに夢中になり、持っていたノートや筆記用具を廊下に置きっぱなしにしたまま歩きだしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ