終わりのはじまり④
…祖父の手記を読んで言葉が出なかった。祖父がこんなとんでもない存在と関わっていたなんて。しかし同時に疑問が浮かんだ。なぜ祖父は自らの手で研究所に検体として提出しなかったのか?もしかしたら祖父はこの地球外知的生命体の描く未来を見たかったのではないか?だから後世の者に選択させたのではないかと。
ー今思い返せばあの時はどうかしていた。社会から除け者にされたことへのやり場のない憤怒、嫉妬、恨み。みんな死んでしまえばいい。俺自身すら気づいていなかった負の感情が、どうしようもなく俺を負の流砂へ飲み込んでいったのだ。
「面白い!見せてみろ!お前のつくる未来を!」
俺は隕石を手に取り中のカプセルを取り出した。確かにプラナリアのような生命体がいる。
(のみこめ)
カプセルを開け、俺はそいつを飲み込んだ。
…?
個人的にはハルクみたいにムキムキになるか、超能力に目覚めてAKIRAみたいになるかを期待していたのだが、大きな変化はない。頭が「?」だらけになっていると、祖父の手記に書いてあったように脳内に直接声が聞こえた。
(お前は私の不死の力を得た。追加でお前が使える力は三つ。
一つ目、空気を自在に操る。
二つ目、変態できる。
三つ目、私の劣化コピー《不完全体》を生み出すことができる。
以上だ。私の情報を脳内に残す。あとのことは任せた。)
そういうと声は聞こえなくなった。そして、まるで昔から知っていたかのように様々な情報が脳内を駆け巡る。チカラの使い方、プラナリアにはツガイがいること、そしてそのツガイは国立遺伝学研究所政府直轄室にいるということ。
ふむ、大きく分けると目的は二つか。
まずツガイを助けること。
そして人類滅亡。空気を操れば容易いが…人の生み出す混沌を見てみたい。
《不完全体》を使って手始めに日本という国家を転覆させよう。
そして私はマッハ12で東京の自室に向かった。
ー福井県沖航海中のイージス艦『あたご』内
船員A「艦長!レーダーにあり得ないものが…」
艦長「なんだ!言ってみろ!」
船員B「日本領空内、正確には長野県から東京都に向かって”マッハ12”で飛行する物体を感知!」
艦長「ばかな…長野県にミサイル基地はない!しかも人類はまだ航空機でマッハ10を超えたことはないんだぞ!」
船員A「目標、東京都上空にてロスト…」
船長「一体なんだというんだ…」
ー同時刻、横須賀米軍基地観測塔内
レーダー官「Unknown、ロスト」
大佐「本国に本件を報告。官民問わず全ての衛生画像と目標ロスト地点の映像の回収を急げ」
一同「サー!」
田中一の知らないところで、日本と米国がそれぞれ動き出したことを、彼はまだ知らない。