終わりのはじまり③
私は私の欲望を抑えきれなかった。この隕石を調査したい!研究所には「隕石は衝突の衝撃で粉砕し発見できず」と報告し、それから書斎に研究機器を持ち込み、隕石の解析をはじめた。
まずは隕石自体が生命体なのか、隕石の中に生命体がいるのか。山中での出来事からして、この生命体とはコミュニケーションがとれることは確証を得ている。
手をあまねいていると、またあの声がした。
(あけろ)
どうやら生命体は隕石内部にいるらしい。しかし相手は常識外の相手。生命体ではあるが有機物なのか無機物なのか、固体なのか液体なのか気体なのか、視認できるのか、単細胞生物なのか多細胞生物なのか、一個体なのか群巨生なのか。
考え込んでいると突然、隕石が中心から二つに割れた。
中から出てきたのは、プラナリアのような見た目をした1cm程度の生物だった。くねくねと体を捻って動いている。
私は慌てて近くにあったシャーレで蓋をした。するとまた声が聞こえた。
(あけろ)
それと同時に、シャーレが刃物で切られたかのように割れた。急いで他の入れ物を探す。近くにあった透明なビニール袋に入れ、中の空気を抜ける限り抜いた。
これまでに分かったこのプラナリア型生命体の特徴は次の通りだ。
・小さな見た目だが知能はある。
・脳内に直接話しかけてくる、言語は不明だが意味は理解できる。
・”空気”を操る。これは隕石とシャーレを割った行動からの考察である。空気を圧縮しそれを自在に操ることができる、恐らく。
私はこの生物とコミュニケーションを取ってみることにした。言語が不明な以上、脳内に質問をイメージしてみた。
「地球に来た目的は?」
(命令だ)
コミュニケーションが取れた!私は歓喜に踊った!世紀の大発見だ!!
(うるさい)
プラナリアに叱られた…。コミュニケーションを続ける。
「生きる上で必要な物はなんだ?」
(いらない。宇宙空間でも生きていられる。食事や排泄、生殖はしない)
こちらが次に質問しようとしていることまで答えた!すごい!が、私は恐ろしさを感じ始めた。
「人間…私についてどう思う?」
(絶滅すべき)
「それはなぜ?」
(そうすべきだと、高次元の者が言うからだ)
「お前は五次元と繋がれるのか?我々人類の存在が五次元にどう影響を与えなぜ死なねばならない?」
(わたしは高次元の者から作られた。正確には”わたしたち”だ。人類の数だけ可能性の未来が広がる。このまま可能性の宇宙が増えると五次元に歪みが生じる。だからわたしたちは人類を減らす)
私は戦慄した…。未だそれが何か人類では判明できていない五次元の存在、そして五次元にいる何者かは四次元が五次元に干渉していることを嫌悪している…。そして可能性の未来。オカルト紙などでアカシックレコードと呼ばれているものだろう。
私はこのコミュニケーションを最後に、この地球外知的生命体を真空カプセルに閉じ込め、さらに外殻として入っていた隕石で覆い包み、この祠に封印した。」