国葬事変①
ー2023年2月3日。
国葬当日。
後に、《国葬事変》として語られる歴史の一幕が上がった。
警官2万人以上を動員した厳重な警備体制の下、”国”を賭けた正義と悪意の衝突が始まる。
ー11:00
国葬開始1時間前。
武道館は参列者と一部の報道陣を残し、立ち入り禁止に。
周辺はイベントを一目見ようと集まった野次馬と、不完全体たち。
一は1月2日以降も不完全体を増やし続け、その数は4,000を超えていた。
しかしまだ動き出さない。
ー12:00
国葬が始まった。
しかしまだ不完全体たちは動かない。
ー12:10 武道館 裏口 より1.0km地点
「あのー、武道館の裏口方向ってここで合ってますか?」
そこにはアタッシュケースを持った【地場 哲郎】と世話人の姿があった。
一斉に銃撃体制をとる警察官たち。
「貴様ら、どこから来た!?」
地場が答える。
「ええと、この人についてきただけですけど…」
と、世話人の不完全体を指差す。
「道中に警官がいたはずだ!どうやって警備をすり抜けてきた!」
「ええと、この人が警官の人を食べて、警官の人に変身して、”不審者の連行”って言われながら連れてこられました」
途端、発砲する警官たち数十名。
当然、警備無線も入る。
<こちら裏口!不審者2名!うち1名はUMAと思われ>
地場を硬化した身体で守りながら、一がやったように360°に無数の槍状の突起物が生え、警官たちの息の根を止める。
「ありがとう」と世話人に礼を告げる地場。
アタッシュケースを開き、爆弾を起動した。
間髪入れず、無線連絡を受けた警官たちが集まり、地場に発砲を続ける。
しかし、弾丸は二人を傷つけない。
地場が強い口調で叫ぶ。
「僕が選んだ死は爆死だ!銃殺じゃない!」
<ピー>と電信音をあげ、赤い液体と青い液体がアタッシュケースの機械の中で混ざっていく。
地場は世話人に「ありがとう。もう、大丈夫」と告げる。
閃光を放ち、轟音が響く。
爆発により半径1.0kmにTNT火薬1トン相当の衝撃。
それによって、武道館裏口は瓦礫で塞がれる。
爆弾で死ぬ人たち。
熱風で死ぬ人たち。
パニックになった人間に踏み潰され圧死する人もいた。
皇居に狼煙があがった。




