終わりのはじまり②
そこには石造りの小さな祠があった。祭壇?にあたる部分には石が置かれている。俺は祭壇の脇にノートがあることに気づいた。思わず手に取りライトで照らしながらその場で読み始めた。祖父の実筆のようだ。
「まず初めに、誰もこれを読むことがないことを祈る。もしこれを読んでいる者が現れたなら、どうか”アレ”が世の中に放たれないよう、国の機関に届出て欲しい。”アレ”がここにあるのは生物学教授の責務を放棄し一人の科学者としての好奇心を抑えられなかった私の罪の象徴である。
以下、私の調査による記録である。
1970年7月11日23時29分、穂高岳に隕石が落ちた。明朝、遺伝学研究所の命令により、落下地点から一番近い場所に住んでいた私に回収任務の白羽の矢が立つ。
7月12日15時5分、目的物の回収に成功。下山途中、突如脳内に声が響いた。
(揺らすな)
慌てて周囲を見渡すが人影はない。現象はその一度きりだった為、気のせいだろうと下山を続け、麓に止めてあった自家用車に荷物を乗せた。運転中、再度脳内にあの声が響いた。
(揺らすな)
それと同時に、車は宙に浮き私のコントロールを離れ弧を描くように下降した。地面にぶつかるその刹那、ふわりと車は着地した。私は科学者として興奮を抑えきれず叫んだ、と同時に隕石を見た。不思議な声と不思議な現象、両方とも隕石を拾ってからの出来事だ。私は瞬時に仮説を立てた。この隕石はただの隕石ではない。”地球外生命体”なのではないかと。