名探偵はちと?不安定
「この事件の大半は既に解決しています」
挨拶を終えたパーカーが最初に口にした言葉だ。
捜査本部長が少し苛立った口調で言う。
「我々2000人体制でさえ何が起きてるのか把握できていないのだぞ。それでも君には何が起きているか理解できるしてると?」
「はい」
パーカーは即答する。
「それでは私の推理をお伝えします」
パーカーは続ける。
「まず本件ですが、2つの事件が絡んでいます。
一つ目、同一型のDNAを持つ人物の片方が死んでいると言う点。
これは未確認生命体の仕業です」
「何を馬鹿なことを」
本部長が悪態をつくがパーカーは表情を変えず続ける。
「二つ目、この未確認生命体の正体は9月6日に最初の目撃情報があったマッハ12で飛ぶ人型UMAであること。
今日、日本各地で目撃事例があった人型UMAと同一であると考えています」
唖然とする室内、その後、爆笑。
「その推理は月刊ムーにでも投稿した方がいい。君はここじゃなくてオカルト研究会のサークルに行くべきだったな」
笑いながら肩を叩かれるパーカー。
それでも彼は続ける。
「私も最初はそれが、誰かの書いた売れない小説の一部であって欲しいと思っていました。しかし今日の事件で疑問が確信に変わりました」
少し興奮気味になりながら、早口で続ける。
「9月6日、UMAが確認。正体はその後の事件時の監視カメラから都内在住の【田中 一】と云う人物の姿をしていると判明しています。
同日夜、Twitterに気になる投稿がされました。『誰かに変身したい人募集』といったものです。この書き込みはアクセスログから、田中の契約した携帯端末から行われています。
私は特権を行使し、その投稿後のSNS上のDM内容を確認しました。相手は【赤井 みどり】。彼女は【日戸 理芽】さんのご主人、次雄さんに恋愛感情を寄せていた人物で、彼女は9月6日から行方不明となっています。
私が席を置いている機関の調査で、赤井さんの携帯端末を彼女の自室のゴミ箱の中から発見しました。端末自身は壊れてましたが、中身のデータは抽出することができました」
さらに興奮気味にパーカーが続ける。
「TwitterのDMで1万円支払った履歴があることもあり、念のため証拠にと残していたのでしょう。
ある自撮り動画が残っていました。
それはなんと!プラナリアのような生物を飲み込む赤井さんの姿!
その生物の摂取後、高笑いする赤井さんの声が聞こえすぐに動画は消えますが、1/60フレームだけ面白いものが映っていました。
動画内で着ている服装をした日戸理芽さんの姿です」
大興奮して改めて彼の推理を叫ぶ。
「つまり!このプラナリア型生物を取り込んだ人間は、好きな姿に変身できるということ!
そしておそらく、人間の頭部、つまり脳を摂取することでDNA型や記憶、全身の姿まで捕食相手に変身できる!
変身に必要なUMAは【田中 一】によって配られていると云うこと!
そしれてそれが今日、日本中で行われた!」
もう、パーカーを笑う者は誰もいなかった。




