蠢動⑥
一の予想以上の勢いでスレッドが埋まっていく。
スレッドを立ててから12時間ほどでレス数がカンストした。
一人目は丁寧に行なったが二人目以降は強硬手段を取ることにした。
目的地にいる人物に確認をとらず、耳の穴から不完全体を入れる。
1秒あれば終わる作業だ。
次々とこなしていく。
不完全体は物凄い勢いで数を増していった。
途中、変わった人物と出会った。
名前を 【地場 哲郎】 というらしい。
彼は俺を見つけるなり、こちらより先に近づいてきた唯一の人間だ。
「鬼神の面さんですよね!?やった!本当に会えた!」
明らかに今までの人間だちとは異なる行動。
一は少し警戒しつつ無言で地場を見つめた。
「あのですね、僕、変身に興味ないんです!」
?
「僕、爆弾作るのが大好きで、それで3回捕まってるんですけど、だけど爆弾への愛着が尽きることなくて…」
「そこで、鬼神の面さんの作戦で僕の爆弾を使ってくれませんか!?」
一は驚きを隠せなかったが、こいつは使えそうだとすぐ納得できた。
国葬の会場となる武道館。
正面の突破方法は既に目処が立っているが、裏口(非常口)の封鎖をどうするか遍いていたのだ。
「君とはゆっくり話してみたい。そこのカフェでいいかな?」
一は指差す。
地場は快く返事をした。
「威力は?」
「えっと、C4(プラスチック爆弾)なら何個でも作れます。だけど今回はとっておきを使いたいんです!
TNT換算で1tの威力がある、アタッシュケース型の小型爆薬です!」
その威力であれば申し分なかった。
地場は興奮したまま立て続ける喋る。
「僕、その爆弾の威力を体感したいんです!
つまり、自爆テロがやりたいんです!」
世の中にはとんでもない変人がいるものだ…
「作戦が成功さえすればいい。死ぬ死なないは自由だが約束は守ってもらう」
一は近くにいた女に少し改良した不完全体を入れた。
1つだけ新たな制約をかけた。
④2月3日13:00まで地場を保護・監視すること。必要であれば手伝うこと。
「そこの女が2月3日までお前をボディガードする。側から見ればカップルだろう。肉体関係や恋愛関係は自由にしろ」
地場はけっこう綺麗な女が自分を見つめていることに気付き、恥ずかしさを隠すように飲みかけのアイスコーヒーを一気に飲み干した。




