蠢動④
2023年1月1日
「7さんですね」
三島大社鳥居前、大勢の人が初詣に来て人混み溢れる中、独りスマホを眺めていた若い男に声をかける。
男は驚いた様子で「マ、マジ?」と問いかける。
「マジですよ」と一(鬼神の面)は答える。
貴重な第一号なので一はいくつか質問をした。
「どうして今回投稿してくれたんですか?」
「生きていてつまらないから」、と男は答える。
「この国を変えたいですか?」
「変わっても変わらなくても、どっちでもいい。ただ単純に面白そうだから興味を持っただけ」
「そうですか。では、これを」
一は不完全体を掌に乗せて差し出す。
「これを飲み込めば、あなたは好きな相手に変態することができるようになります」
男は引き気味で問う。
「こ、こんなキモいの食わなきゃダメなの?」
「はい」
鬼神の面越しでもわかるような笑顔で一は答える。
男はため息をつき、
「まあ生きててもいいことないし、どうせいつか死ぬんだし、いっか…」
不完全体を受け取り、男は飲み込んだ。
「あ、ホントだ」
不完全体を飲み込んだことで能力を理解した男。
「それじゃ私はこれで」
一は帰り際に追加でお願いをする。
「そうそう、
私はみなさんと違って使えるチカラが一つ多いんです。
今から空を飛びますので、それを動画としてダークウェブにアップしてくれませんか?
それがあれば説得力が増すと思うんですよね」
男は承諾ついでに「じゃ、写真も」とスマホで鬼神の面をパシャリ。
「では」
一は宙に浮く。どよめく周囲の人々。
そしてそのまま東京に向かって飛んでいく。数秒で男の視界から姿が消えた。




