蠢動①
真純との同棲生活が始まった。ただしくは宇宙人同士かもしれない。
目の前にいる彼女は、地球外知的生命体の意志を一切感じさせないほど、彼女であった。
クリッとした瞳、肩下まで伸びた黒髪、白く美しい肌、なだらかで優雅な指。
部屋はきちんと整理整頓され、真純は朝食を作っている。
>「ご飯できたよー」
「はーい」
夢にまで見た真純との共同生活。
これも地球外知的生命体のおかげだ。
罪悪感?そんなものは人間をやめた時点で無くなっている。
食事を摂りながら考える。
祖父の家で見つけた地球外知的生命体の情報はすべて使い切った。
これからは自分のやりたいことをする。
人類の絶滅?一瞬で終わってしまう方法は取りたくない。
人間の生み出す混沌を、指揮者のように優美に操りたい。
「ごちそうさま!」
>「はい。おあいそさま」
朝食を食べ終え、何かいいネタはないかとネット記事を眺めていると、一つの記事が目に留まった。
《矢部元首相銃殺事件、国葬が2023年2月3日で可決》
自然とにやけてしまう。これだ。
衆議院と参議院、両院の議員が一箇所に集まる。
不完全体を使えば国会・政府を掌握できる。
理想は2/3の議員を不完全体にすることだが、半分も替えられれば十分だろう。
今日の日付は12月3日。ちょうど2ヶ月後だ。
テストを1回やって、あとは本番で俺が介入すれば成功する。根拠はないが確証があった。




