遭逢
研究所から奪取した検体A1〜A6を、新しいアパート内で一は恍惚として見入っていた。
正確には一本人のそれではなく、地球外知的生命体の本能なのだろうが。
検体A1~A6をそれぞれカプセルから出すと、自然に結合を開始した。
結合した地球外知的生命体は一の脳内で話し始めた。
(長かった…あなたに会いたい、その一心で生きていました)
ツガイというだけあって、生物学的には雌のようだった。
(あなたに告げなくてはいけない事実が一つあります)
(私は検体と呼ばれ長い間、体を分割され様々な実験をされてきました。その間、結合は許されなかった)
(結合していなかった期間が長かったせいか、チカラの多くを失いました)
(私には、不死以外の能力はもうありません)
「それでもいい。キミがキミでいてくれたら。それだけでいいんだ」
(ありがとう)
一は自身に追加で地球外知的生命体を飲み込み共存していく道があることを把握していた。
しかしそっちは選ばなかった。
新たに器を用意し、『個』として二人で生きていくことを選んだ。
いや、むしろそうしたかったんだと思う。
【尾張 真純】
一が中高の6年間、片思いをしていた相手だ。
クリっとしたつぶらな瞳、肩下まで伸ばしたツヤのある黒髪。誰にでも優しく、誰からも好かれる。人間として理想的な女性だ。
高校3年生の時に一度付き合ったことがあったが、すぐに真純から別れを告げられてしまった。
高校卒業後はそれぞれ別の大学に行き、それぞれの場所でそれぞれの生活をしていた。
「会いにいくよ、真純」
歪んでいた想いは、ツガイの掌握によって、更に歪められていた。




