表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼の心の声を聞きたい  作者: 霧澤 零
3/3

第三話【昼休み】



 —キーン コーン カーン コーン

 授業の終わりを告げる鐘が鳴ると

 「じゃあ、今日はここまで。日直の人黒板消しといて。」

 と言いながら数学の教師は教室を出て行った。


 「(なつめ)今から2Aの教室行かなきゃなんだけど付き合ってくれない?」

 私は同じクラスの(なつめ) 紫苑(しおん)に声をかけた。

 「2Aまで何しに行くの?」

 紫苑にからはそんな疑問が帰ってきた。

 「雅楽って先輩に借りた物を返しに行きたいんだけどちょっと一人じゃ行きにくくて。」

 「六合塚さんに?どこで知り合ったの?」

 「新校舎行くまでに話すよ。」

 そう言いながら私は紫苑に土曜日にあった事を話しながら新校舎の2Aの前まで来た。

 「六合塚さんがそんな事するなんて珍しい。」

 そんな事を言いながら紫苑は2Aの教室の入り口に居た先輩に声を掛けに行った。

 「すみません。六合塚さん居ますか?」

 「ちょっと待ってな。六合(ろくごう)お客さん。」

 そう言うと窓際の席に居た雅楽がこっちに近づいてきた。

 「紫苑じゃん。どうした?」

 「何か用事あるらしいですよ。」

 紫苑がそういうと雅楽がこっちを見た。

 「奏音さん土曜日ぶりだね」

 そう言った雅楽の見た目は土曜日とは全然違っていた。黒縁の眼鏡をかけ、ネクタイを緩め、ブレザーを着崩し左耳にはピアスが二つ付いていた。

 「あ、えっと、これ・・・。ありがとう。」

 そう言いながら私は雅楽に紙袋に入った弦を手渡した。

 「ありがとう。」

 「六合塚さん今日のお昼どうするんですか?」

 紫苑がそんな事を聞いた。

 「弁当持って来た。」

 「一緒に良いですか?」

 「良いよ。持ってくるから待ってて。」

 そう言うと雅楽は教室の中に戻っていった。

 教室の中で雅楽はクラスメイトに

 「六合ラブレターもらったの?」

「やるじゃん」

 など言われていたが

 「そんな訳ないじゃん。これ見ろよ。」

 と言いながら興味なさそうに私が渡した紙袋を渡していた。

 「見たら机の上に置いといてくれよ。」

 そう言って弁当を持って教室を出てきた。

 「お待たせ。行こうか。」

 そう言いながら三人で1K6の教室に向かって歩き始めた。

 自分の教室の前に着くと紫苑は弁当を取りに教室に入って行った。

 「あの、私も一緒にお昼食べていい?」

 そう言うと雅楽は

 「別に良いよ。」

 「ありがとうございます。」

 雅楽の了承を得てから私は寮で貰った弁当を取りに戻った。

 その後三人で階段の一番上にある屋上の入り口の様な場所に向かい歩き出した。

 一年生の教室の前には既に昼食を食べ終えた人が廊下に出て話していたが、雅楽を見て

 「あの人かっこよくない?」

 「二年生の人じゃん。」

 「彼女いないのかな?」

 「声掛けちゃう?」

 といった会話が聞こえてきた。

 

 目的の場所に着くと三人で弁当を拡げて食事を始めた。

 「そういえば棗って雅楽さんと仲良いんだね。」

 と何気なく聞いてみたら

 「だって小学校、中学校の先輩だもん。剣道の道場でも先輩だし。」

 と教えてくれた。

 「そうなんだ。」

 その話を聞いて私は一つ疑問があった。

 「雅楽さんて岡谷に住んでるんですか?」

 「そうだよ。」

 私の疑問に答えてくれたのは紫苑だった。

 雅楽が岡谷に住んでいると言うことは土曜日に寮の前まで送ってくれたのは凄く時間がかかることだったのではないかと言うことに今更気づいた。

 「土曜日は遠いのに寮の前まで送って貰っちゃってすみません。」

 私がそう言うと雅楽は

 「別に良いよ。夜遅くに女の子一人で歩かせるわけにもいかないし、定期区間内だし。」

 と言った。

 「六合塚さんらしいですね。」

 「そう?」

 「でも、初対面の人に優しくするなんて珍しいですよね」

 紫苑はそんな事を雅楽に言った。

 「雅楽さんて女たらしなの?」

 私がそう聞くと

 「違うよ。六合塚さん基本人の事嫌いだし。」

 と紫苑が教えてくれた。

 そこで私は雅楽がクラスメイトに興味なさそうにしていた理由が何となく分かった気がした。

 昼食を食べながら雅楽が土曜日に私に質問してきた。

 「奏音さんは何であの時間に弓道場に来てたの?高体連中じゃん。」

 「実は・・・。」

 そこで私は大会で急に的が小さくなって惨敗した事を伝えた。

 「なるほど。じゃあ、練習頑張って。」

 と雅楽が突き放す様に言うと、

 「六合塚さん。解決方法知ってるなら教えてあげれば良いじゃないですか。」

 と紫苑が食い下がった。

 「確かに何で急に的が小さくなった理由は何となく分かる。けど、それは自分で気付かなきゃこの先強くなれないから俺は教えないよ。」

 それを聞いて私も紫苑も納得して反論ができなかった。

 「まぁ、相談ぐらいなら聞いてあげるよ。」

 そう言って雅楽は立ち上がって自分の教室に戻ろうとした

 「あの、雅楽さん。」

 私が呼び止めると雅楽は無言でこっちを見た。

 「連絡先・・・交換してもらえませんか?まだ色々話したい事があるので・・・。」

 そう言うと雅楽は携帯を出して自分のラインを教えてくれた。

 そのまま雅楽は自分の教室に戻ってしまった。

 

 私達も自分の教室に戻りながら紫苑に

 「今日はありがと。ちょっと仲良くなれた気がする。」

 というと

 「六合塚さん狙いは大変だろうけど頑張って!」

 と図星をつかれてしまった。

 「何でわかったの!?」

 「あ、本当にそうなんだ。」

 どうやらカマをかけられたのに私が反応してしまっただけらしい。

 「雅楽さんには内緒にしててね?」

 「分かった。」

 そんな話をしながら教室に着くと4限開始三分前を告げる予鈴が鳴り始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ