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彼の心の声を聞きたい  作者: 霧澤 零
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第一話

いつか大人になったとき・・・・。 

高校生活を振り返って何を思うのだろうか。

高校生活といえば楽しい事に溢れている

部活に勉学、恋愛・・・。

薔薇色だった高校生活を思い出す人が多いだろう・・・。

でも、私の高校生活は今のところ薔薇色じゃない・・・。

 —それでは今から表彰式を行います。女子個人優勝・・・・

 こうして私の高校初めての大会の幕は下りた。

 結果は予選敗退・・・。

 中学最後の大会で県大会二位になり推薦で入学した県外の強豪校。

 予選八射中二射。女子部員十人中最下位・・・。

「東雲さん。今回は残念だったけどまだ一年生だからまた今度頑張ってね。」

 今回優勝した三年の先輩に声を掛けられたが私の耳にはその声が届いていなかった。

 私は大会が終わると近くにある市営体育館の弓道場に来ていた。この体育館はかなり大きい体育館で、バスケットボールの全面が二コート取れる西体育館と、一コート取れる東体育館の他に剣道場、柔道場、弓道場がある。

 私が弓道場に入ろうとしたとき中から

 キャンッ

 という美しい弦音(つるね)が聞こえてきた。中に入ると一人の男子が二射目を射つための準備に入っていた。

 見惚れるほどの美しい射型。キャンッという美しい弦音と共に放たれた矢は的に当った。

 「綺麗な射・・・。」

 気づくと私は思った事を声に出していた。

 私に気づいた男性はこっちを見たがすぐに興味なさそうに的を見た。

 矢が刺さった的をよく見ると矢が十本ほど刺さっていた。

 「今から矢取り行くから。」

 そう言い残して男性は的に刺さった矢を取りに行ってしまった。

 私が更衣室で道着に着替えて戻ってくると男性が矢についた土を拭き取っているところだった。


 その後何射か射っていると

 バチンッ

 という音と共に私の弦が切れた。

 「え、どうしよう。もう弦ないのに・・・」

 練習はまだしたいのにするための弦がない。

 「替えの弦これ使いなよ。」

 そう言いながら男性が新品の弦を渡してきた。

 「中仕掛けは作れるよね?」

 「作れるけど・・・申し訳ない・・・。」

 「何が?」

 「新品の弦なんて貰えないですよ。」

 初めて会った知らない人に弦なんて貰えない。しかも、かなり値段の張る弦なんて。

 そんなことを思って断ると、

 「じゃあ、今度2Aまで返しに来てよ。」

 この人は何を言っているのだろうか?2Aとはなんのことだろうか。

 そんな事を考えていると、

 「矢取り行ってくるから」

 そう言って矢取りへ行ってしまった。

 矢取りから帰ってきた男性に

 「2Aってどういう事ですか?」

 「文芸附属の人でしょ?」

 矢についた土を拭き取りながら

 「あ、そういうことか。・・・二年の教室まで行くの?」

 入学したてで二年生・・上級生の教室に一人で行くのは中々ハードルが高い。

 「嫌ならお返しとかなしで普通に受け取ってもらえればいいよ」

 と言ってくれたけどそういうわけにはいかない。

 「いえ、返しにいきます。月曜日でいいですか?」

 「いいよ」

 そう言いながらその男子はまた弓を射ちに戻ってしまった。

 その射型はとても美しく・・・とても・・・。


 その後射っては取りに行ってを繰り返していると

 —閉館の時間三十分前になりました

 という館内放送がかかった。


 「そろそろ帰るか」

 私がそう言っている横で淡々とカエル準備をしている

 「そういえば名前なんて言うんですか?」

 「雅楽(うた)だよ」

 相変わらず素っ気ない返事が帰ってきた。

 「私は奏音(かのん)て言います。」

 「そうなんだ。よろしく」

 そう言いながら雅楽は道着の上から羽織に袖を通した。濃紺の生地に黒の龍と桜の柄が刺繍されていて妙に似合っている。

 

 その後軽く弓道場の清掃をしてから二人揃って体育館をでた。

 駅まで徒歩二十分・・・ほぼ無言で雅楽と歩いて行った。

 その後駅から二つ先の塩尻まで行き、塩尻駅から徒歩十分の場所にある寮に着いた。

 「じゃあ、俺はこれで。」

 そう言いながら雅楽は来た道を引き返して行った。

 『あれ?男子寮の方向って向こうじゃないんじゃ・・・。』

 そんな疑問が頭をよぎったが私は気にせず寮に入った。


 自室に入るとルームメイトである深空(みそら)が出迎えてくれた。

 「奏音!遅かったね。何してたの?」

 「ただいま。ちょっと弓道やりに岡谷まで行ってきた。」

 「楽しかった?」

 そう聞かれて私は弓道場であった事を話した。

 「そうなんだね。じゃあ明日日曜日だし弦一緒に買いに行く?」

 「いいの?」

 「せっかく部活ないんだから気分転換にお出掛けしよ。」

 その後、深空と一緒に寮の風呂に入り日付が変わるまで部屋で二人で喋って私たちは眠りについた。


おはようございます、こんにちは、こんばんわ。作者です。

今回は私の書いた作品を読んでいただきありがとうございます。

学業の合間を縫って執筆していくので投稿は不定期です。

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