12.第三王子の試練Ⅱ
それからユリウスは市場に通い詰めた。
商人たちとも話をしながら、貧富の差やスラムについても知識を深めた。
どうやらこの市場に出回っている商品は、適正価格よりも高く売られているらしい。
その理由は、城下町に入る時に関税がかかり、商人たちも高く売らざるを得ないということのようだ。
また、店によっても価格や品質がバラバラであり、一般市民が見極めるにはなかなか難しいとのこと。
貧富の差に拍車をかけているのは、税の徴収だ。
暮らしているだけでかかる税金と働いて得られる賃金とのバランスがとれておらず、食い繋ぐのにも精一杯だという物もいた。
「一体どうしてこうなっているんだ…」
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ある時、父親(護衛)を連れて、ユリウスがスラムに足を踏み入れた。
町の中心からかけ離れ、荒廃した様子に心を痛めながらも歩く。
「これが父上の行っている政治なのか?」
その時、路地裏からか細い声が聞こえた。
「誰か…だれか…助けて…」
急いで路地裏に駆け付けると、そこにはボロ布をまとった少女がいた。
「どうした!何があったんだ」
「私…病気で…家族も亡くなって…ここにいる事しかできなくて」
「何故だ?教会や病院へ行けば治療を受けられるのではないのか」
「病気の者は教会でも受け入れられず、治療を受けるにもお金が必要で…」
彼女はサリーといった。
私が彼女を連れて帰ろうとすると
「ユリウス、その者を連れて帰ることはできません。」
「何故だ!」
「彼女の病気を治し、貧困から救い出すのは、一人の力では無理だからです。このスラムの人を1人ずつ家に連れて帰りますか?彼女一人を連れて帰って、救い出したとしても、何故私は助けてくれないんだと殺到しますよ。それをあなたは受けれますか?」
「くっ」
そうなのだ。彼女一人を救えばそれで終わりではない。このスラムを変えるためには、仕組みそのものを変えなければならない。頭ではわかってはいた。
「では、どうすればいいというのだ…」
王子という身分でありながらも、何もできない無力感に私は包まれた。
私には何もできないのか…
「ですが、その者の治療を行うことはできるでしょう。」
「何!それは何故だ?」
「ユリウス、目の前で弱っている人がいて、助けない人が騎士になどなれません」
私は意地悪をされた気分だったが、彼の言うことには多くのヒントがあった。
為政者として、一人の人間だけを救うことはできないが、一人の人間として目の前の人間を救うことはできる。
なのであれば、私がすべきことは為政者として、どうすれば多くの人間を救えるかを考え、実行するか。
そこからこぼれる人があれば、またその人を救うためにはどうすれば良いか。
「わかった。ただ、この少女は連れていく。治療と食料を与え、使用人として教育を頼む」
「わかりました。」
私がすべきことが何のかが少しずつ分かり始めた。




