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王様は名君として、名を遺したい  作者: 司


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10.第二王女の試練Ⅳ


ヤバイヤバイヤバイヤバイ…

これは私と彼が踊ることによって起こる余波を考えると相当にヤバイ!

この手を取るだけで、莫大な利益がウチの国入る事が約束される。

ただその分だけ責任と覚悟が必要だ。父上と母上に相談も無く、今、私が決断しなければいけない。


私が背中に汗をかきながら戸惑っている事を察知したのか、彼は続けて言った。

「今は、何も考えず社交の一環ぐらいで、踊っていただきたいです。利益だなんだは別にいいのです。今この場で、このダンスは何の利も発生しないと約束したっていい。ただ、一人の女性を口説く時間が欲しいのです。」


「く、口説くですか…?」


「ええ、私が理想とする女性が目の前にいるのですから」


私が戸惑っている中、音楽が鳴り始めてしまった。


「さぁ踊りましょう」


サッと手を握られ、流れるように会場に出てきてしまった。


「私は、そこまでダンスは得意ではないのですが…」

「えぇ大丈夫ですよ。私のエスコートの腕にお任せを。」


「あなたは何故私のことを慕って下さるのですか?」

「私は心身共に強い女性が理想なのです。あなたは今までは軍事に携わっていた。身体的には強い方だというのは周辺国は皆知っております。私が更にあなたのことを好きになったのは、社交の世界に進出したと聞いてです。」


私の頭には「?」が浮かぶ


 「今まで軍事に関わっていた方で、社交にも明るい方はそういません。あなたは苦手な分野だとわかっていながらも、懸命に努力し、身に付けようとなさっている。やれといわれたからやるなどという次元ではない。常人ではそうはいかない。そんな一生懸命なあなただから、気高く美しく愛らしいと私は感じるのです。私が愛しているのは、ありのままのあなたなんです。」


私は言葉を失っていた。知らないうちに私は涙を流していた。頭では理解できた。この人は分かってくれる人だと。


それ以上に私は()()()()仕方がなかった。

家族以外でありのままの私を見つけてくれた人がいた。

軍隊にいたときも、社交に出たときも、私を王女として、女として見てくるものばかりだった。


彼はいち女性として気遣いながらも一人の人間として私を見てくれる人だ。


「どうかこのダンスが終わったら改めて、お返事を聞かせて頂けますか?」

「…はい」


短くも濃密なダンスの時間が終わり、楽団が音楽を止めた。


「アンジェリカ殿下、私と結婚してください。」

「…は…い。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


それからの二人は早かった。

母上の元に行き、挨拶をし、結婚するつもりだと伝えると大変に驚いていた。

母上でもこんな顔をするのだと正直、やってやった気分になった。

ただ、それよりも彼の隣に立てることに感謝していた。



舞踏会の後から、彼とは文通やお互いの国を行き来している。

初めての船には、大層酔ったが、これから自身の腕とも足ともなると思えば、頑張れた。

私はどこでも私らしくいれる。彼がいつでも見ていてくれるから。


そこには、武力も社交も全てを自身の力に変え、他国との交渉に臨む第二王女の姿があった。


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