星まつりの夜
北の国の山おくに、はりねずみの兄弟が住んでいました。
今日は年に一度の星まつりの夜。
村の子供たちもこの日だけはちょっぴり夜更かししても怒られません。
「じゃあ、お母さん、行ってきまーす!」
いきおいよくお家を飛び出したのはお兄ちゃんはりねずみ。
「暗いから夜道に気をつけるんだよ。あと、弟とはぐれないようにちゃんと手をつないであげてね」
「まかせとけ!」
「わーん、おにいちゃん、まってよー」
「あ、ごめん、忘れてた」
さっそく弟はりねずみを置いていこうとしているお兄ちゃんはりねずみ。本当にまかせて大丈夫かしら、とお母さんはりねずみは思いました。
◆◆◆◆◆
「みてみて、こんなにおみせがいっぱい。ボク、こんなのはじめてみたよ」
「ふふん、すごいだろ」
村の通りにはいくつものすてきなお店がならんでいます。
そしてなぜかお兄ちゃんはりねずみはじまんげです。
「ボク、あのどんぐりが食べたいなあ。あ、あっちのコガネムシもおいしそう」
「おやつは1人1こまでだぞ」
お母さんはりねずみからもらったおこづかいで、兄弟は甘いイチゴを買いました。
◆◆◆◆◆
広場のまん中ではたのしそうな音楽がながれ、たくさんのどうぶつたちが集まっていました。
「おい見ろよ、うさぎのダンスショーだってさ」
「「きゃー、かわいいー」」
おくれてきた兄弟は、前のどうぶつがじゃまになって見ることができません。
「おにいちゃん、よくみえないね」
「しょーがないよ、ボクたちは小さいから」
「僕の肩の上ならよく見えるよ。でもとげはささないでね」
2匹はうしろにいた大きなくまの子にひょいとかかえられました。
「「ありがとう、くまのおにいちゃん!」」
「どういたしまして」
◆◆◆◆◆
うさぎのショーがおわるころにはあたりはもう真っ暗です。
どうぶつたちは星ぞらが一番きれいにみえる丘の上にいどうをはじめました。
「ぜったい手をはなすなよ」
「うん、わかった」
はりねずみの兄弟はお母さんはりねずみにいわれたとおり、しっかりと手をつないで山道をのぼっていきます。弟くんのはやさにあわせているので、だんだんと他のどうぶつたちからはなされてしまいました。
「おにいちゃん、みんないっちゃったよ?」
「だいじょうぶだって。たぶん・・・」
「あら、まだこんなところにいるの?いいわ、のせていってあげる。でもとげはささないでね」
2匹はあとからきたゆきひょうの姉妹にのせてもらいました。
ゆきひょうの姉妹はびゅーんというはやさで山道をかけぬけていきます。
「「あわわ・・・あ、ありがとう、ゆきひょうのおねえちゃんたち!」」
「「どういたしまして」」
◆◆◆◆◆
丘の上では、たくさんのどうぶつたちが家ぞくや友だちといっしょに夜ぞらをみあげていました。
今にもふってきそうなまんてんの星ぞらです。
「きれいだね、おにいちゃん」
「うん、そうだね」
だれもがみんな、しずかに、きよらかに星ぞらをながめています。
そんな中、きらりとひときわかがやいた星が大きなこをえがいて流れていきました。
「わぁ」とかん声があがります。
「おにいちゃん!」
「おお!」
はりねずみの兄弟はながれ星にむかっておねがいをしました。
(ずっといつまでも、村のみんなが仲良しでいられますように)
2匹のねがいはきっとかなうでしょう。
夜はゆっくりと、ゆっくりと流れていきます。
はりねずみの兄弟は、つないだ手をぎゅっとにぎりしめました。