私の天使はオオカミでした
可愛い。
マジ天使。
私、佐藤あずさは文芸部の部室で本を読むふりをしながら愛でているのが、文芸部の後輩に当たる今井千鶴だ。
彼女の身長は150㎝に届かないぐらいであり、他の生徒と比べても小柄だ。そんな彼女は美人というよりかは可愛い顔立ちをしており、綺麗な艶のある黒髪をツインテールにしている。うん、とても可愛い!
見た目はクールな感じだが、性格は恥ずかしがり屋であまり自分からおしゃべりをする方ではない。そういうクールな見た目とのギャップがあるところも最高に可愛いく、私の中の何かを刺激する。
「千鶴ちゃん!」
「……!」
というわけで、さっそく私は語尾にハートマークがつくくらいの甘えた声で千鶴ちゃんに後ろから抱きつく。千鶴ちゃんは抱きつかれてびっくりしたようで、抱きついた瞬間に身体がビクッとなった。
「……いきなり抱きつかないで、あずさ先輩」
と千鶴ちゃんは上目遣いで睨んでくる
……睨んでる姿もとても可愛い
「え~!千鶴ちゃんが可愛すぎるのがいけないんだよ!」
「……別に、可愛くない」
何でも無い風に言っているが、千鶴ちゃんの顔が赤くなっている。クールな見た目で恥ずかしがり屋さんなところもマジ天使!
「そういえば、この間話してた恋愛映画って千鶴ちゃんもう見た?」
私は先週二人で話していた恋愛映画の話題を持ち出す。あわよくば二人で映画館に見に行こうと、デートに誘うことを模索している。
「……まだ、見てないです」
――来た!来た!来た!!
今私の目の前には二つの選択肢が表示されている
・千鶴ちゃんを映画デートに誘う
・千鶴ちゃんを映画デートに誘わない
勿論私が選択するのは前者の千鶴ちゃんをデートに誘うだ!
「そっか~、まだ見てないのか~」
「……」
「ねぇ、今週の土日のどっちかで映画見に行かない?」
「……い、良いですよ」
よっし……来たーーーー!
天使とのデート!
やはりデートに誘うを選択して良かった!
デートの約束を取り付けた私は部活そっちのけで千鶴ちゃんがデートに着てくる服を想像していたら、部活終了時間になっていた。
※※
可愛い
マジ天使
待ち合わせ場所が良く見えるカフェに30分前に来た私は……
今待ち合わせ場所に来たばかりの千鶴ちゃんを遠目から見て観察している
彼女は10分前行動を心掛けているため、私は少しの間彼女を観察していても約束の集合時間に間に合うのだ。しかし、今日の千鶴ちゃんも可愛い。千鶴ちゃんは黒色のブラウスに青色のスカートを着ている。そのまま、今日は映画に行かずにお持ち帰りしたい。
しかし、いつまでもそんなことを言ってはいれないので、私は待ち合わせ場所に向かうとしよう。千鶴ちゃんが変な男にナンパされたら大変だし。
「おはよう、千鶴ちゃん!」
「……お、おはようございます」
「待たせてごめんね!」
「……い、いえ」
まぁ、本当は30分前から駅にいたのだが……
映画館に着いた私たちはそれぞれ食べ物を買ってきた。私はキャラメルポップコーンとウーロン茶とホットドッグとナチョス。千鶴ちゃんはコーヒーとコーンマヨポップコーンとかいう物を買っていた。
映画の内容は男子高校生の高木一斉がひょんなことから出会った斎藤歌恋に恋心を抱いていくのだが、実は彼女は病を患っており余命一年を宣告されていた。そんな二人が繰り広げるお涙ちょうだいな感じの映画だった。
隣に座っている千鶴ちゃんは映画に感動したのか、その可愛い目からが涙が零れている。んん?私?……いや、正直映画より千鶴ちゃんを見るのに忙しかったから――映画の内容は全然覚えていない。この映画だって千鶴ちゃんが好きそうだから誘ったのだ。
……そんなこんなで映画が終わった私たちは千鶴ちゃんの家にいた。実は千鶴ちゃんは一人暮らしなのである。その為、映画が終わった後は千鶴ちゃんの家でお互いの感想を言い合うことになったのだ。デュフフフ!千鶴ちゃんのお家だ!
「それで千鶴ちゃんはどのシーンで感動したの?」
私は千鶴ちゃんに夢中だったので映画を詳しく喋れない。その為、千鶴ちゃんに質問しながら会話をすり合わせる戦法だ。
「……そ、そうですね。ラストシーンで主人公の高木君が『それでもやっぱりすき焼きよりたこ焼きが好きだ!』って叫んだシーンです」
……う、うん。いや、千鶴ちゃんは興奮しているのかいつもより饒舌だ。それは可愛いのだが……
――どんな映画だよ!!ってかそんなラストシーンで感動するかよ!!
「……そっか……千鶴ちゃんはあのシーンで感動したんだ。そのシーンのどのあたりが良かったの?」
「……た、たこ焼きって大声で叫んだところが」
……さっぱり分からん
「……さ、さらにヒロインの歌恋が『私はたこ焼きより牛タンが好き!』と叫んだところです」
本当にどんな映画だよ!?
「ハハハ……私はお好み焼きが好きかな……」
「……」
「ハハハ……」
待って!なんかいきなり千鶴ちゃんが無表情になったんだけど!
「あずさ先輩、実は謝らないといけないことが」
「え?な、何かな?」
「さっきの映画の感想は嘘です」
「へ?どういうこと……」
「さすがにそんな変なシーンはありません」
……ということは、たこ焼きや牛タンのくだりは嘘ってことか。まぁ、さすがにそれはそうだよね。冷静に考えればそんな恋愛映画あるわけないもんね。というか千鶴ちゃんが普段よりハキハキ喋っているような?ま、何でもいっか。
「というか先輩は映画をちゃんと見てなかったってことですよね?」
……うん、どうしよう。まさか千鶴ちゃんをずっと見てましたとか言えないし。
「先輩は映画ではなく誰を見てたんですか?」
これ、私が千鶴ちゃんを見てたのバレてるよね?だって誰を見てたんですか?って言ってるし。え――普通にバレてんじゃん!
ここは正直に言ってみるか
「……ち、千鶴ちゃんを見てました」
「はい、ちゃんと正直に言えてえらいですねあずさ先輩」
なんか褒められたけど……
やっぱり千鶴ちゃんがいつもよりハキハキしてる。
……っていうか、何かオーラが出てて怖いんですけど
「私って、少し人見知りなんですけど。あずさ先輩の前での人見知りは、わざとだったというか?」
「うん??」
「あずさ先輩ってスタイルもいいし可愛いですよね!」
「あ、ありがと……ハハハ……」
「実は一目惚れだったんですよ」
「へ??」
あれ?じゃあ、千鶴ちゃんは私のことが好きだってこと?
Likeではなく、loveで?
「なので、初めてあずさ先輩を私の家にお持ち帰りするまで人畜無害を装っておいて、家に招待したら一気に攻めようかなと思ってたんですよ」
「……そ、そうなんだ」
「でもあずさ先輩も私のこと好きですよね?映画そっちのけで私を見ていたわけですから」
うん、確かに私も千鶴ちゃんのことが好きだ。でもlikeではなくloveの方の好きなのかは、今の私には正直判断できない。どうしよう?なんかすごい展開になってきたな。私がよく読む百合小説かよ。
「私はあずさ先輩が抱きついてくるたびに……結構興奮してたんですからね!」
……マジか!
マイエンジェルよ
「とういうことで……先輩」
そう言って千鶴ちゃんは私を押し倒し、そのまま唇を重ねてくる。柔らかな感触が唇に触れ、目の前には可愛い千鶴ちゃんの顔が。
「……ん、んっ」
そのまま千鶴ちゃんは私の唇に舌を入れた。私が動揺して動けないでいる内に、千鶴ちゃんの舌は私の歯茎を蹂躙し、そのまま唇を好きなようにしていく。
「……はっ、っ!」
やっと解放された私に向けて
「あずさ先輩……逃がしませんからね!」
と言った千鶴ちゃんは私が着ているパーカーの中に手を侵入させてきた。その時、私はこのまま流されても良いかなと思い始めていた。
……そして、気が付いたら朝を迎えていた。
いや!マジか!
流されるなよ……
そんなことを考えていると
「せーんぱい!逃がしませんからね~」
と後ろから千鶴ちゃんに抱きしめられた
お母さま……どうやら私は逃げられそうにありません。