6 美少女すぎるのですがどうしましょう?
次の日の朝、目覚めたと同時に飛び起きた。
目に入ったのは、昨日見たのと同じ趣味の悪い部屋。
チラリと自分のキラキラの金髪が見えて、ため息が出た。
はぁ……やっぱり元に戻ったりはしてないか……。
コンコンコン
ピッタリのタイミングで部屋をノックされる。
「お嬢様、メイです」
このメイド、本当にすごくない?
監視カメラでも付いてるんじゃないかって疑ってしまうくらい有能だわ。
私が起きたと同時にノックしてくるなんて、ただの偶然なの?
「入っていいわよ」
「おはようございます。お嬢様。
お支度を致します」
私より遅く寝たはずなのに、メイはもうピシッとメイド服に身を包み髪の毛も綺麗にまとめられている。
そんなメイに促され、ドレッサーの前に座らせられた。
えっ?お支度?
「メイ!もう昨日みたいなメイクはしないわよ?」
慌ててそう言うと、メイはまるでそんなの当たり前ですと言わんばかりの顔で答えた。
「はい。少しだけお肌を整えさせていただくだけです。
髪の毛も巻かずにアレンジ致します」
良かった……。
ほっと安心すると共に、鏡に映る自分に改めて惚れ惚れしてしまう。
本当に美しすぎるわ……!!
この美少女が私なんて……。
肌を整え、頬に薄いピンクで色をつける。
髪の毛は上半分だけ編み込み、小花で飾りつけ。
サラサラの金髪がなびけば、そこにいるのは天使だ。
いや。もう女神かな?
「お洋服はどうなさいますか?」
リディアの広すぎるドレスルームに入り、唖然とした。
赤!!黒!!金!!
派手でケバいドレスしかない。
全てのドレスにはレースやらリボンやら宝石がたくさん付いていて、どれもこれも普段着るような服には見えない。
今すぐパーティーにでも行けそうだ。
ちょっと……。
天使にこんな服似合う訳ないじゃない!!
「こんな派手な服しかないの?
もっとこう……清楚な感じの……」
メイも同じ事を考えていたらしく、なにか考え込んでいた。
そしてはっ!とした顔をして、ドレスルームの奥にあった箱を取り出した。
大きい箱だが、開けられた形跡がなさそうに見える。
「以前、殿方からいただいた贈り物です。
お嬢様は趣味じゃないからと着た事がなかったのですが……」
箱を開けると、中には薄いブルーの爽やかで可愛いらしいワンピースが入っていた。
少し入った刺繍とレースが高級そうだ。
「これにするわ!!」
可愛い!!これなら天使に似合う!!
ワンピースと一緒に靴やアクセサリーまでも入ってるじゃない!!
誰か知らないけど、よくやったわ!!
全てを身につけた私は、光り輝いていた。
なんっって可愛いのーー!!
何時間でも見ていられる!!
自画自賛に見られてしまうかもしれないが、あまりの美しさに鏡から目が離せない。
「お嬢様、とってもお美しいです!!」
メイも涙目になりながら私を見ている。
大満足といった様子だ。
「メイ。謹慎中で部屋から出られないという事は、部屋にいれば何をしてもいいのよね?
例えば……この部屋の壁紙や家具を全部取り替える……とか」
「すぐに手配致します」
どうやらメイも、この部屋に不満を持っていたらしい。
すぐに部屋から飛び出して行った。
執事に伝えに行ってくれたようだ。
そして出来るメイドは、朝食と共に戻ってきた。
後ろにはまたイクスを連れて。
「リディアお嬢様。おはようござ……」
そこまで言って顔を上げたイクスは、ピタリと動きを止めた。
私を見て、口を半開きにしたままポカーンとしている。
昨日までのリディアとはまるで別人だものね。
目の前に天使がいたものだから、ビックリしすぎて心臓でも止まってしまったかな?なーんて。
「お美しいでしょう?」
なぜか誇らしげにメイが話しかけると、イクスは私から目を逸らし小さい声で答えた。
「そうですね。とてもお美しいです」
うおおおお!?
いや!!私が美しいのはわかってるけど!!
こんなカッコいい人に美しいって言われたら、さすがに照れちゃうぞ!?
イクスは昨日と同じように、私の後ろにそっと立った。
気のせいかな……?
昨日より暗い顔はしてないように見える。
私が昨日食事やハグを拒否したから少し安心したのかしら。
このままイクスへの逆セクハラを止めたら、そんなに嫌われなくなるかな?
少しでも仲良くなれれば、家出を手伝ってもらえるかもしれないわ。
無表情のイクスからは、あまり感情が読み取れない。
イクスが味方になってくれたら、かなり心強いわよね。
よし!!イクスとはできるだけ仲良くなれるようにがんばってみよう!!
まずは、私の事を嫌い……という感情を捨ててもらうところからね。
そう決心して、ご飯を食べ始めた。