31 ざまぁ展開見れなくて残念です
王宮滞在3日目でございます。
私の1日は、バラの花びらたっぷりのお風呂に入る事から始まります。
その後は全身マッサージに顔のパックをして、軽いメイクにヘアアレンジ、真っ白なレースのドレスに着替えて天使リディアの出来上がり。
……ってどんな姫様待遇だよ!!!
やばいやばい!!こんな生活に慣れちゃったら、だらしない人間になってしまいそう!!
お断りしたいところだが、ルイード皇子の命令だからとメイド達が聞く耳を持たない。
このまま本当にルイード皇子の妻にされそうで怖いわ!
この3日間、私は自分の部屋と皇子の部屋を行き来するのみ。
王宮内のお庭も、他の部屋も、廊下にすら出るのを禁じられている。
退屈だが、現在絶賛命狙われ週間なのだから仕方ないだろう。我慢するしかない。
食事は常に皇子と一緒に食べているため、支度が終わったら皇子の部屋へ行くのが日課だ。
私に合わせて、皇子は自室で食事を取っていた。
「おはようございます。ルイード皇子」
ノックをした後、お互いの部屋を繋いでいるドアから部屋へ入る。
いまだに、私を見るたびに頬を赤く染める皇子の可愛いことよ。
この顔が見たいために、メイド達は朝から私の支度を張り切っているのだろう。
今も部屋の端で小さくきゃあきゃあ言っているメイド達が目に入ったが、気づかないフリだ。
「お、おはよう…。リディア」
照れながらはにかみ笑顔で挨拶するルイード皇子に、私も一緒になってきゃーーと言ってしまいそうになる。
可愛いすぎるだろぉぉぉ!!!
あなた本当にリディアより年上なの!?
とりあえず敬語はやめてもらったから、年上感は少し出てる…かな?
なんとか頑張って笑顔を貼り付けたポーカーフェイスでいるが、心の中はアイドルにキャーキャー言ってるただのアラサー女だ。
メイドの皆様には申し訳ないけど、ルイード皇子は私にとって可愛いアイドルなのであって、恋愛対象ではないのよね。
どちらかと言うと、イクスのような少しクールな男の子のがタイプかなぁ〜。
そんな事を考えながらイクスの方をチラッと見ると、ばっちり目が合ってしまった。
え!?今、私の事見てた!?
思わずパッと目を逸らす。
イクスは王宮のメイド達とは離れた場所で、待機している。
メイドの何人かはイクスの事をチラチラと見ている子もいた。
ま、まぁ…私の護衛騎士なんだから、私を見てるのも当たり前か。
でもなんだか照れ臭い。
顔赤くなってないかな?
皇子と向かい合って座り、朝食を食べる。
この数日…皇子は見違えるほどに回復していた。
青白かった顔色はだいぶ健康的な色になったし、なによりご飯をめちゃくちゃ食べるようになった。
解毒薬を飲み、体調が良くなればなるほど皇子の食欲は増してゆく。
この調子でいけば、すぐに標準体重まで増えるんじゃないかしら。
なぜかご飯をバクバク食べながら、時たまイクスの事をチラチラ見ているけど…なんで??
イクスの体型を目指しているのかしら??
その割には少し厳しい視線を送っているようにも見えるけど…。
イクスはイクスで、そんな視線に知らんぷりだ。
まるで無関心といった態度で、静かに部屋の端に立っている。
…なんなのこの2人?
最近いつもこんな状態だった。
食事が終わり、自分の部屋でまったり紅茶を飲んでいるとエリックが来た。2日ぶりだ。
金髪の髪をなびかせ、めずらしく爽やかな顔をしている。
「リディア。全部終わったよ」
「え?」
エリックが爽やかな笑顔で爽やかに言った。
全部終わった??
「レクイム公爵の件ですか?証拠がたくさん集まったのですか?」
「ああ。それを差し出して、先程陛下の前で断罪してやったところだ!
レクイム公爵は皇子暗殺未遂の他にもたくさん悪事をしていたからな。
温厚な陛下もさすがに処刑を命じられたよ」
えっ!そこまでもう終わったって事!?
早ッ!!!
展開早くない!?
てゆーか、私はその場にいなくていいの!?
「あなたの悪事は全てわかってるのよ!」とか言って決め台詞吐いたりしなくていいの!?
よく見る異世界漫画では、転生したキャラが裁判とかでも活躍してるような……って現実じゃそんなものか。
いくら神の声を聞いたからって、こんな15歳の令嬢が参加できる訳ないわよね。
小説でのレクイム公爵の断罪シーンはかなり悲惨な光景っぽかったし…ちょっと見てみたかったなぁ。
まぁ、そんな事エリックお兄様には絶対に言えないけどね!
「だからもう家にも帰れるぞ。
陛下がぜひお前と食事を…と言ってくださってるから、それが終わったら帰ろう」
エリックがいつものように頭ポンポンしてくれる。
全く…これ、私が妹だからいいものの。
普通の令嬢にエリックが頭ポンポンなんてしたら、みんな鼻血出して倒れるレベルの破壊力があるって…わかってるのかしら?
最初は私だって叫び声あげそうになったし。
「はぁ…。やっとあの皇子から離れられるのか…」
私の後ろの方で、イクスがなにやら呟いていたけど…よく聞こえなかった。




