【4巻発売記念】ロイド皇子に品定めされるイクス(イクス視点)
小説4巻発売記念SSです。
4巻の一部シーンの裏側になるのですが、4巻を読んでいなくても大丈夫だと思います。
本編・イクスルート後のお話です。
「ルイード様に伝えなきゃいけないことがあるの」
そう言って王宮にやってきたリディア様を見送り、俺は馬車の中で彼女の帰りを待っている。
約束のない突然の訪問だったというのに、あっさりと案内されたな……。
まあ、あの皇子がリディア様の訪問を断るわけがないか。
真っ青な顔で震えていた彼女の様子から、何か重大なことを伝えにきたのだということはわかる。
あの二人が会っているというのにこんなに心が落ち着いているのは、きっとそれが理由だろう。
何か皇子によくない知らせか? それとも、国に関する……。
「イクス卿。ロイド殿下がお見えになっております」
「……えっ?」
考え事をしていると、突然御者に声をかけられた。ロイド殿下? と深く考える暇もなく、勝手に馬車の扉を開けられる。
そこには、少し前のルイード皇子にそっくりな少年が立っていた。
ルイード様の弟!? 似すぎだろ!
って、なんでその第3皇子がここに!?
「お前がリディアの新しい恋人か?」
「!」
その一言でなぜこの皇子が俺のところにやってきたのかを悟り、すぐにピッと姿勢を正す。
「……イクス・ジラールと申します」
リディアの新しい恋人か──その質問にはハッキリ答えず、自分の名前を名乗る。
その遠回しな回答を、この幼い皇子はしっかり理解してくれたらしい。再度問われることなく、「ふーん」と言って俺をジロジロと見ている。
な、なんだ? 何しに来たんだ?
まさか、その確認のためだけに?
どう反応していいのかわからず戸惑っていると、ツンとした表情だったロイド皇子がフッと鼻で笑った。
「なーんだ。ルイード兄さんを振ったくらいだから、どんないい男かと思ったら……全然普通じゃん」
は?
「リディアってほんとバカだよね。これならルイード兄さんのほうが何倍もいいのに」
「…………っ」
この……クソガキが……っ!
ギロッと睨みつけたいのをなんとか我慢して、拳を力いっぱい強く握る。
今ここにクソ兎がいたなら、俺は迷わず八つ当たりして殴っていたことだろう。
顔はルイード様にそっくりだけど、性格は全然違うな!
なんて生意気なガキ……いや。ルイード様も穏やかに見えるだけで、嫌味な一面もあるからな……。
まあ、この第3皇子よりはマシだけど!
いくら年下とはいえ、相手は皇子だ。
悔しい気持ちがありつつも、仕方なく話を合わせる。
「……そうですね」
「あれ? 同意するんだ。そこは『俺のほうがいい男だ!』って言い返すべきなんじゃないの? 本当にリディアが好きなわけ?」
「ルイード様が誰よりもリディア様に相応しいのは、俺が一番よくわかっています」
「!」
「ただ……リディア様を好きな気持ちは、負けるつもりはありません」
目をそらすことなく堂々と答えると、ロイド皇子はしばらく黙ったあとプイッと顔を背けた。
口を尖らせて怒ったような表情をしているが、どこか嬉しそうな空気を感じる。
……なんだ? 怒ってるのか? どっちだ?
ソワソワと無言の時間を気まずく思っていると、王宮の執事がロイド皇子を呼びに走ってきた。
「ロイド殿下! 会議が終わりましたので、陛下にお会いできます」
「! わかった。すぐに行く」
陛下に会うため待っていたらしい皇子は、走り出す直前に俺を振り返った。
「あのさ。リディアはあれでも一応この国の巫女なんだからね。泣かせたり不幸にしたら……僕もみんなも絶対に許さないから」
「!」
それだけ言って走り出した皇子の背中に向かって、「もちろんです!」と大声で叫ぶ。
皇子は振り返ることなく、そのまま行ってしまった。
口は悪いけど、リディア様のことを大事に思ってくれてるんだな。
『あれでも一応』という言葉は引っかかるが……ひとまずリディア様には言わずにおくか。




