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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/5『主人公より溺愛』コミック7巻発売
本編

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11 街でのナンパ


エリックの許しをもらえたので、早速メイとイクスと街へやってきました!!


異世界漫画でよく見る、ヨーロッパ風の街並み。

異世界漫画でよく見る、馬車に乗って。

異世界漫画でよく見る、お出かけ用ドレスに着替えて。



まぁ私の場合、そのお出かけ用ドレスが真っ赤で派手派手で、すでに周りからの視線が痛いんですけどね!!



メイの案内で連れて行かれたお店で、今の自分好みの服やドレスを注文する。

ほとんどメイがやってくれていたけど。



私、以前は喪女だもの。

これは嫌!!っていうのはあるけど、どんなのがいいか聞かれても答えられないわ。

メイに任せれば大丈夫でしょう。



ふらふら……と店内を歩く。

ふと、窓際に置いてあったドレスに目がいった。


薄いピンクのドレス。

シフォン生地でふわふわひらひらしている。

細やかなレースが女の子らしさをさらにアップしていて、とにかくとても可愛い!!!

あぁ語彙力がない自分!!



私が無言でドレスを見つめていると、イクスが言った。



「着てみてはいかがですか?」


「えっ……い、今?」



試着……というと、以前の私にはあまり良い思い出はない。

ひきつり笑いをした店員さんに、気を使われて「お似合いです」って言われるか、「どうですか?」って自分なりの感想聞かれて困った思い出しかない。



このドレスを試着してもし似合わなかったら、みんなに気を使わせてしまうかも……ってそんな訳ないじゃない!!

こんな美少女のリディアだもの!

似合うに決まってる!


それに、できる事なら今着ているこの派手なドレスは脱ぎ捨てて、これに着替えたいのが本音。



私は店長に伝えて、着せてもらう事にした。

浮き足立った店長は靴や帽子まで合う物を用意してきてくれた。



仕事が早い……!!プロね!!



ドレスは想像以上にリディアに似合っている。

このまま1人で街に出たら、数秒で誘拐されてしまうんじゃないかしら?

そんな心配をしてしまうほどに美しい。



「イクス……どうかな?」



隣でまたもやポカンとした顔をしていたイクスに聞いてみる。

イクスはすぐにハッとして、自分の口を手で押さえたかと思うと小さな声で



「似合ってると思います」



と答えた。

心なしか顔が赤い気がするけど……気のせい?



ガチャッ


その時お店のドアが開き、店内にお客が入ってきた。

男性2人だ。

1人は高級そうなスーツを着ているから、良いところの貴族だろう。

まだ20代前半くらいだろうか。


貴族の男は店内に入るなり、店員の声かけは無視して一直線に私の元へやってきた。



な、なに!?



慌てて身構えると、私の目の前にイクスが立った。



「失礼ですが、なにか御用でしょうか」



少し声のトーンが低くなっているみたい。

私をずっと見つめていた貴族の男は、イクスをチラッと見た後にまた私に視線を戻した。


まるで舐め回すかのようなねっとりとした視線に、思わず鳥肌がたつ。



ううっ!!気持ち悪い!!



思わずイクスの服の裾を掴んでいた。

イクスが一瞬ピクリとしたが、またすぐ男に向き直る。



「あぁ。驚かせてすまない。

外から彼女が見えたものだから。

あまりにも美しくて、つい吸い寄せられてしまったんだよ。

お嬢さん、お名前は?」



貴族の男は、イクスを無視して私に紳士の礼をした。



うわーーー!!!

出た!!キザな男!!

本当にこんなセリフ言う男なんているのね!!



苦虫でも噛んだかのような顔をしてしまいそうになったが、なんとか踏みとどまった。



名前なんて教えたくないわ!!

でも、こんな時どうすればいいのかしら。

男に言い寄られた事なんてないから、全然わからない!!



返答に困っていると、イクスが助けてくれた。



「申し訳ございません。

お嬢様にはすでに婚約者様がいらっしゃいますので、お答えする事はできません」



貴族の男の顔が一瞬で曇った。

心なしか、イクスの顔も曇っているように見える。



そうか!!婚約者がいると言えば良かったのね!!

そういえばモテる女子達が、ナンパされたら彼氏がいるフリをするって話していたのを聞いた事がある。


私の場合はフリじゃなくて本当だけど。

まぁ名ばかりの婚約者ですけどね。



男は未練がましく私を見つめていたが、イクスからの圧にやられてしぶしぶ帰って行った。


どうやらこの世界では、婚約者のいる相手に手を出すのは許されない事のようね。

もっとしつこく言われるのではと心配したけど、大丈夫みたいで安心した。



「エリック様に報告しなくては……」



男が店から出て行くのをずっと見ていたイクスが、何か小声で言っていたがよく聞こえなかった。


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