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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@5/30『モフモフ旦那様』コミック2巻発売
本編

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100 なんとしても捕まえたい!


私をひと睨みした後、サラはリクトール公爵に向き直った。

リクトール公爵は冷静を装っていたが、箱から出てきた瞬間のサラを見て数歩後退りしていたのを、私は見ていた。



「……ごほん。

お話はこの中で全て聞いていました。

私はここにいる窃盗団……?の人達とは何の関わりもありませんわ!!

今日初めてお会いしたし、私もリディア様と一緒に牢に入れられていたのです!

私も被害者ですわ!」



……さすがね、サラ。


箱から幽霊のごとく登場したのに、何事もなかったかのようなその堂々たる姿。

そして間違いなく加害者側でもあったのに、完全なる被害者面しているその図々しさ。


たしかに貴女も一部被害者ではあったけど、荷馬車の中での態度は忘れてないからね!?



突然箱から出てきたサラを見て、完全に思考が停止しているカイザとイクス。

2人ともサラの言葉が頭に入ってきていないようだ。


リクトール公爵だけが、すぐに反論した。



「サラ令嬢……そんなところにいたのですね。

それはともかく、どのような言い訳をされても無駄ですよ。

この誘拐の計画を立て、実行させたのは貴女です」


「違っ……私は裏切られて……!」


「裏切られた?

という事は、元々は仲間だったという事ですね?」


「…………っ!!」



リクトール公爵はニヤリといつもの気味悪い笑みを浮かべると、スーツのポケットから1枚の紙を取り出した。

それを広げて腕を前に出し、サラに見えるようにしている。



紙?なんの紙?



その紙を目にしたサラの顔が、どんどん真っ青になる。

目を見開いて、身体はガタガタ震えだした。



「な、何でそれを……」



リクトール公爵は、次にカイザに向けて紙を見せた。

カイザは小難しい顔をしてその紙に目を通しているが、よくわかっていなそうな顔だ。



「あ?……この紙、なんだよ?」


「これは契約書ですよ。

サラ令嬢と窃盗団の、巫女誘拐に関する取引の契約書です」


「なんだと!?」


「えっ!?ち、違うわっ!!

私が契約したのは窃盗団じゃなくて、大神官……あっ!!」



サラは慌てて口をつぐんだが、遅かった。

契約内容に異論を申してはいたが、契約した事実については認めてしまったのだから。


カイザやイクスが信じられないといった顔でサラを見ている。



サラが誘拐に手を貸していたこと、Jはイクスに伝えていなかったのね……!!

自業自得とはいえ、この空気は重いわっ!



カイザが鋭い視線をサラに向けた。



「リディアの誘拐を企てたのは、お前か……?」



声を荒げないように気をつけているみたいだが、声から怒りの感情が滲み出ている。

私ですらゾッとしたのだ。

サラがガタガタ怯えているのも仕方ないだろう。



「そ、それは……でも、私も裏切られて……」



いつもの偉そうな態度も、甘えたような態度もしていない。

ただ蒼白な顔で震えているサラを、リクトール公爵がさらに追い詰めてくる。



「ほら。認めたでしょう?

今すぐに彼女を捕まえた方がよろしいですよ?」


「ちょっと待って!!」



我慢できず、つい口を出してしまった。

私を庇うように前に立っていたイクスが、驚いて振り返った。



たしかにサラも私を誘拐して売り飛ばそうとしてたけど!!



だからって、なんっっでお前は無関係みたいな顔してるのよ!?

サラだけじゃなくリクトール公爵だって捕まえてやるわ!!!



「たしかにサラは私の誘拐を企てたかもしれない。

でも主犯ではないわ!!

つい先程まで私と一緒に牢に入れられて、他国に売られそうになっていたもの!

主犯はリクトール公爵、貴方です!!」



サラが少し驚いたかのように私を見た。

リクトール公爵は全く動じた様子もなく、冷静に私の言葉に反論してくる。



「サラ令嬢が裏切られたのだとしても、それは彼女と窃盗団の間の話であって、私は関係ありません。

私が彼女を牢へ入れたのを見たのでしょうか?」


「あ、貴方が入れたんじゃないけど……。

でも窃盗団の人は、()()()に頼まれたからって言ってたわ!」


()()()ねぇ。

そこに私の名前が出たのでしょうか?」


「出て……ない……けど……」



リクトール公爵と話していると、彼を犯人だとする証拠が何もない事に気づく。



本人が首謀者だと言ってはいたけど、録音なんてしていないし。

私の証言が意味をなさないのであれば、それは証拠にはならない……。


最初から、万が一の事を考えていたんだわ!!

万が一私に逃げられたとしても、全ての罪をサラと窃盗団のせいにできるように工作してた!

なんて狡賢い男!!



私が言い負かされているのを見て、カイザがポツリと呟いた。



「…………殺るか?」



この言葉を聞いて、さすがにリクトール公爵がビクッと反応をした。

イクスがすぐに答える。



「そうですね……と言いたいですが、騎士団からは王宮に連行するようにと言われています。

相手はリクトール公爵家ですし、カイザ様の立場も危うくなってしまいます!」


「俺の立場なんてどうでもいい。

コイツが本当にリディアを狙った犯人なら、絶対に許さねえ。

捕まえられないなら殺すまで……」



カイザがリクトール公爵の方に一歩ずつ近づいていく。



え!?ほ、本当に殺す気!?



思わずイクスの服をギュッと握りしめた。

さすがにそんな場面は見たくはない。


リクトール公爵が慌てて何か言いかけた時、部屋に新たな人物の声が響いた。



「カイザ!!待て!!」



声のする方を見ると、カイザの後ろ……部屋の入り口にルイード皇子と王宮騎士団のルビウッド団長が立っていた。

今カイザを止めたのはルビウッド団長らしい。

2人ともかなり急いでこの場所に来たのか、ゼェゼェ息切れしている。


ルイード皇子は私の姿を見て安堵していたが、何故かすぐに少し不機嫌そうな顔に変わった。



一瞬イクスを睨んだように見えたけど、気のせい……?



「貴方は……リクトール公爵!?」



ルビウッド団長の大きな声が響き、私達の視線はまたリクトール公爵へと移った。

皇子や団長が来て、リクトール公爵は安心した様子だ。



さすがに2人の前ではカイザも勝手には動けないもんね。



カイザはチッと舌打ちをすると、すぐ後ろに立っていた皇子と団長に小声で現状を説明していた。

ルイード皇子の輝くネイビーの瞳が、だんだん暗くなっていくのがわかった。


カイザの説明が終わると、ルイード皇子がカイザの前に出てリクトール公爵に向き直った。

いつもの可愛いらしいほんわか皇子の姿ではなく、王宮のパーティーの時に見た堂々たる第2皇子様の姿だ。



「リクトール公爵。

巫女誘拐の件で、一緒に王宮へ来ていただきます」



ルイード皇子の言葉に、リクトール公爵は一瞬驚いた顔をしたものの冷静に答えた。



「何をお聞きしたのか存じませんが、私はこの件には無関係でございます。

よって、そのような命令には従えませんね」


「私は関係者として……とは言っていません。

公爵はこの誘拐を事前に知り、巫女を助けるためにここに来たと言ったそうですね?

その情報を詳しく教えて欲しいだけです。

犯人達を裁く際に必要な情報ですからね」



ルイード皇子がにっこりと笑う。

可愛いのにどこか怖い。目が笑っていない。



そうか!!

犯人としての連行じゃなく、情報提供者として王宮へ連れて行くつもりなのね!


刑事ドラマとかでも、よく別件逮捕してから余罪をあきらかにする!とか見るし。

今回もそんな感じ?

とりあえず王宮に連れて行かせるのが第一!的な?



……でもこの論破男をうまく言いくるめられるかしら?


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― 新着の感想 ―
[一言] ルイード皇子頑張れ~~~! 結構頼りになるじゃないか皇子!! カイザじゃないけど、死人に口無し! やっちまえ!!って思っちゃいましたww まったくどうでもいい話ですが、「リクトール公爵」を…
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