03 灰熊
不定期更新てすよ
「ザシュッ!」という音がした。
一瞬静まる空気。
この時、冒険者であろうパーティーの面々は何を思い考えただろう。
一般人を巻き込んだ?
助けられなかった?
余計な犠牲者を出した?
そんな考える余裕を与えず、灰熊が叫ぶ。
男の背中に当たり根元から折れた爪を天に掲げて。
これを見た3人は固まる。
「「「は?」」」
男は背中を撫でられた感触があり、灰熊の方を向いた。
途端に、逆の前足で腹を突かれる男。
灰熊の表情がヤバイ。
攻撃した側なのに、激痛で顔が歪んでいる。
理由は灰熊の前足を見ればわかるだろう。
10cmはあったであろう爪が指に、手にめり込んでいるのだ。
男は腹に接している灰熊の手を掴むと一言。
「いただきます」
指先にかぶりついた。
「ミチミチッ」と肉が引き裂かれる音がする。
「ゴリッ」と骨や爪の砕ける音がする。
冒険者パーティーの3人は目の前で起こっている事が理解出来ず、武器を構えたままの姿勢で、しばらく硬直していた。
その間にも男の食は進む。
灰熊は逃げようとするも、逃げられない。
生きたまま刻一刻と削り喰われていく痛みと恐怖。
「獣臭いな。焼けば美味いかな。でも歯ごたえは良好。肉の旨味も上々。だが獣臭さが難点。血生臭いのも減点だな。25点だな」
前足を掴まれているので爪が根元から折れた方の前足で必死に男の顔を殴るが効果は見られない。
それどころか、殴り付けた辺りで骨が折れている。
だが、灰熊は構いはしない。
このまま喰われるなら前足の2本くらいと考えている間に始めの1脚は食べ終えていた。
そして、そのまま首に噛みつかれ、憐れ御臨終とあいなった。
が、止まる訳もなく喰い進める。
そして心臓辺りに到達した時に灰熊の中に石を見つける。
「なんだこりゃ」
無色の宝石。
まるで、ダイヤモンドのようだった。
空に掲げその輝きを確認する。
それを見たパーティーがようやく正気を取り戻した様で、男に声をかける。
「それは魔石だ。魔物の体内には必ずある」
「ふ~ん」
話しを聞いて、そのまま口に放り込んだ。
「ちょっ! おいっ!!」