02 方位が
不定期更新ですよ
迷わないように、木を食べながら進む事にした。
……不味い。
[強靭EX]か[強化EX]のお陰だろうが、幹にかぶりついても余裕で噛みきれる。
だが、あまりにもサクサクと噛みきれる為、噛み応えが無い。
などと考えていたら、急に硬い煎餅のようにいい歯応えになった。
「なるほど、意思で変わるのか。こりゃいい」
一度しっかりと味わおう。
割りばしでも噛んでいる気分だったが、奥歯でしっかりと噛み締めると樹液が出てきた。
ほんのり甘い。
だが、ほんのり甘いと言っても、樹木本来の渋みが勝る。
砂糖水に少しつけた割り箸の味。
12点かな。
樹木を食べ始めて4本目、幹の中に宝石があった。
樹液の化石、琥珀と見間違う輝きだ。
溶けない飴という感じでかなり甘い。
べっこう飴より甘いかも。
少し甘すぎるが、46点。
この琥珀を食べてから、方位がわかるようになった。
木だけに気のせいかも知れない。
だが、何となくこっちが北……ではなく、ハッキリと東西南北がわかる。
何故だ?
ただ、方位がわかってもどっちに街があるかは解らない。
何も根拠が無いが暖かそうな南に向けて歩きだした。
捕まえた生き物や木々を食べながら進んでいく。
かれこれ、1時間は歩いただろうか、数人の声と打撃音が聞こえてきた。
音のする方に耳を傾け進んでいくと、突如飛んできた物が顔に激突する。
避ける様な反応も出来ない速度で飛んできたそれは折れた剣先であった。
硬い。
鉄スプーンを口に含んでいる気分になるが、スキルのお陰でポテチの様に噛み砕ける。
「食感は良し、味はイマイチ。樹木のような渋みはない。だが、やはり金属、味が受け入れられない味。8点だな」
そのまま歩みを進めると、灰色の熊と戦っている者達を見つけた。
折れた剣を持つ革鎧姿の男性。
絵に描いたような魔法使いの風貌の女性。
二人とも若い。
よく見ると、灰熊には矢が数本刺さっている。
だが、二人の装備には弓が無い。
再び、矢が灰熊に刺さる。
軌道を見ていて気付いたが、木の上から矢を放っている少年がいた。
あー、矢も食ってみたいな。
全体を見る限り、どうやら劣勢のようだ。
取り敢えず、灰熊を食いたいから間に入っていく。
間とは勿論、熊とパーティーの間だ。
剣折れの男性がこちらに気づいた。
「兄さん、危ねぇ!」
「あ、どうも」
剣折れに声を掛けられたので、丁寧に頭を下げて挨拶する。
背後の灰熊の長い爪が、ガラ空きの男の背中目掛けて振り下ろされる。
「ザシュッ!」