君の手
掲載日:2019/11/23
奇跡は信じるに値する。
そう思っても構わない。
ひとときの予感で、通路に響く足音も転調する。
空腹の我儘にも寛容なところを見せられる
蕩ける魅惑か、高まる野性か、君が選べばいい。
対価は言われるままに。
物乞いの運命はそのままに。
原因と結末の互換性もあるがままに。
ひとときの予感に酔わされて、賑わう通路を選んで歩く。
好きなものを食べろ。
欲しいものは、言葉にするな。
貪ったその後に、食欲を掻き立てる臭いのする骨だけ残る。
迷惑は百も承知で無様に笑え。
値札の色が染み付いた指先を下品に舐めろ。
今は誰も咎めない。
今なら誰も気づけない。
満たされた腹を自慢気に揺らして見せて。
君のこめかみに潜伏する後ろめたさは、振り返るたびに捨てていけばいい。
これは拡大解釈された予知夢に過ぎない。
原因と結末が君の手を引っ張りあう。
退場願う正義など、こちらから願い下げだ。
擬装した不安を狙撃するのは、か弱い雨。
ひとときの予感がか弱い雨に打たれて頭部を垂れる。
まただ、欲しいものを求めると口の感覚は鈍くなる。
ひとときの予感が消えないうちに。
忍び足の結末に追いつかれないうちに。
君の手を引っ張り走る。
絡み付く雨に諦めないうちに。
撃ち抜かれた偽造の奇跡を君に見抜かれないうちに。
君の望みを知る前に、君の手を掴んで走る。




