初の斬り目
初の登録作品。誤字が多いかもしれません。
“もう楽にしてもいいですよ…言わなくても結構という位に布団に入ったような心地よい気分ですよ”
“そうか…元亡き落ちた天下よりも気にいったのか”
“…”
私は言葉ができなくなった。それに申し訳なかった…金髪の女の御方。
“すまない”
謝礼を申したいのは私です。誰からの誘いでもありません。私御意志の行じた事でなくとも…自分がここまで来た事に皮肉っているのですから。
“もういいわ…美悦子。後ろにただ悲観しても戸惑うだけよ。そうだ一緒に食材取りでもしよう”
“はい!喜んで下さい!”
美悦子と名を言われた私は本名 田嶋美悦子。このクロヌリという国で豊かと激しさの交う暮らしを恐れも躊躇いもなく過ごす者。この国の特殊戦闘員と同じ意味を込められた戦士“特武”へ出世を願い、見習いの身を携わる。この世界へ流れ着いて以降の私の性格だが。それ以前とは私は別の世界の住人であった。そう私は転生者。
元世界では私は日本という国のとあるお屋敷の令嬢だった…金が豊富で、家族一人一人幸せな運命を背負っていた。ところが私だけは違っていた…治療不可能の死の病に取り付かれていた。外も出れず、家の中で過ごしてベッドで横たわる。それだけが私の人生そのものだった。
皆は私を“蓑虫”と苦い渾名を付けた。親も姉妹達も見下して…無視されて…針だけが私に対しての差し入れだった。家族とは助け合うものではなかったと学んだ。そうだ。唯一学んだのが“差別”だったんだ。この哀れな私は死んで欲しい位、私の存在が嫌いになった…
だから私は…死に物狂いで床を這い、窓から飛び降りた。地獄に落ちたら…鬼達に煮て食べられる。その方が良かった。
天国なんて行きたくなかった。
なのに
別の世界と転移するなんて。かなり昔っていう風柄の世界だった。ここへ生まれた私の初歩はまさかの苦しい切磋琢磨だった。
何でこんな事にしなくてはならない…そう考えて、口も動作も伝える暇もなかった。不思議と思ったくらいで別に嫌気を噴出した訳ではなかった。だって動けるから。
この世界の私の病は消えていたからだ。
ベッドの上で楽しみ馴染んだネットワークよりも夢中になれて私は察した。
自由…
ケーキよりもお金もずっとねだっていた物だった。生きているのが素晴らしいと思うぐらい、欲しかった。
汗だくに強いられても文句言う事は一度もなかった。自由を得て悔いのない生涯を造りたかった。
私を支えてくれたこの国の皆様。ありがとうございます。
私がこの世界の初めに踏んだ国をクロヌリ。島国である。この国は見るからにしては昔の、歴史の江戸時代か戦国時代か。内乱または天下統一という争い事が無く、民はほのぼのと暮らすから江戸に似てる方が正しい。服も自然もそっくり。
この小川に流れる紅、朱色の紅葉を摘まんだ。この気候をこの世界では秋とは言わなかった。霜降。紅葉蔦黄ばむ。季節の名を言う際、このどちらかを言うのが絶対。春夏秋冬。このこれら四文字を口に放ったら理解できず、首を傾げるのだ。
「美悦…」
この御方の女お侍さんも同じくそうだ。正統たる西洋人のような金髪と青白い瞳は化粧でもない、生まれつきである。
ただ者と呼んではいけない。彼女は特武の一員である。特武とは…通常の人間よりも倍強力な術を持っている、いわば特殊戦闘員。兵士の分野に置かれる。
特武を目指す兼生き学ぶ私を援する輩である。
女でありながら気の強い御方。でも私は…
「鮮やき落ちた色よ。この紅葉が良いわ」
黒色部分の一切無い黄だけの明るい紅葉が私の目を引いた。私はこの人と縁を切りたくなかった。
「降りましょ」
下山を告げに私は返事を返した。取れたて食材の積み込んだ背負い籠を背負い、歩む羅瑠渡の背を次ぐのだった。
“楽しかった”と思い呟く同時に一人で微笑んだ。
この国の下に据える街。山の出口からでは見えないがそこは海に接する港街だった。そこの地域が羅瑠渡の家が置かれている。
山の静かな虫の音演奏会とは対照的、会話のざわめき日常茶飯を感じる世界だ。
「美悦。この街に住んで怖いと感じた事は?」
「怖い事ですか…?」
「あなたの天下とはどう相違があるのか聞いていいか?いや苦しい思いするなら申し訳ない」
特に苦しいとは思わない質問だ。私の病話とかは外れ、その世界の常識を聞きたいそうだ。
ここと比べれば…豊かなのは確か。徒歩の数字はこの世界よりも少なめという楽を想定した設けだ。
足を動かず、座るだけで、移動。遠くの方と話などのやり合いができる。
ただそれらを脅かす悪事も無ではない。人間が強盗や欲望などで罪の無い殺害したり、乗る物同士が衝突して亡くす。
恐怖を齎すとして人間が頂点に立つ。という事だ。
「魔物がいないからか」
無論。私の世界としては物語だけしかいないものですから。そしてこの世界での最も危険因子たる物は魔物である事。
魔物はまだ、登場しません。