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すれ違う思い  作者: ねがぽじ
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すれ違う思い第1話

これは中学生オリジナルの百合小説です。


~すれ違う思い~


~第一話~


公園でゆらゆらと大枝を揺らして辺りに桃色の雨を降らせる桜の木からは、今が春だという事が伺えました。

桜が咲き乱れている中で楽しげな子供の声が聞こえてきます。

女の子の頭に大きなリボンを付けて、くるくるパーマの三つ編みの子が、熊のぬいぐるみを大事そうに抱え走り回っています。

幼稚園児ぐらいでしょうか?女の子の顔は、走れば走るほど赤くなっていき、息づかいも荒くなっていきます。


「おそいよ、しんちゃん、さくらちゃん」


乃愛は、走りながら苦しそうに顔を赤らめながら後から追いかけてている同じ年位の二人の女の子に楽しそうに話しかけました。

でも心の中では、早く乃愛を捕まえてよね。と思っていました。


「まってよ、のあちゃん。

そんなにはやくはしったらまたたいちょうをわるくするわよ」


茶色い髪を低い位置で2つに束ねた女の子が、心配そうに乃愛を見つめながら、乃愛の後を必死で追いかけまいます。

桜は、乃愛が体が弱いのが良く解っていました。

そして何時も無理をして苦しんでいる乃愛を見てると何時も心が辛くなりました。

だからから早く乃愛を捕まえようと頑張りました。

桜は、あと少しで乃愛に手が届く所まで来たけれども乃愛を掴む寸前で乃愛に避けられて乃愛との距離が離れました。


「だいじょうぶだよ。

もうさくらちゃんは、しんぱいしょうだな。

でもはやくのあをつかまえてくれないとつまらないよ」


乃愛は、楽しそうに笑うと走るスピードを速くしました。

すると、どんどん桜と乃愛の距離は、離れてしまいました。

乃愛が大きく右足を踏みだした、その瞬間でした。

乃愛が苦しそうに胸を押さえつけて、その場に倒れこんだのです。


「だいじょうぶか、のあ!?」

「だいじょうぶ、のあちゃん!?」


ツインテールの幼い女の子とのショートカットで黒髪の幼女が乃愛に走って近寄りました。

心配そうに乃愛を見つめながら体を支えてくれる紳とそれを今にも泣きそうな表情で乃愛を見つめる桜に乃愛は、二人を心配させないように辛いのを我慢して無理に笑って見せました。


「ごめんね、またふたりにめいわくをかけちゃったよね」


乃愛は、申し訳なさそうに紳と桜を見渡すと一回深呼吸をするとゆっくりと立ちあがろうとしました。


「きゃっ!?」

「あぶない!?」


立ち上がる寸前の所で体のバランスが崩れて倒れようとしました。

でも倒れる前に紳が乃愛の体を支えました。


「まだたいちょうがかいふくしていないのにあんまりむりをするなよ、のあ。

わたしがベンチに、はこんでやるから、すこしやすんでいろよ」

「もうこんなからだは、いやだよ……」


紳は、乃愛の体を姫様抱っこするとベンチに向かいました。

紳に抱っこされた上で乃愛は、泣きそうに涙を瞳に溜めながら辛そうに俯いた。

紳は、乃愛を優しく見つめながらベンチまで運ぶとベンチの上に降ろしました。


「そんなかおをしないでよ、のあちゃん。

おおきくなったらからだのたいちょうもかいぜんされるとおもいますよ」


桜は、乃愛の体を優しく抱きしめると耳元で囁きました。

それを見た紳は、桜の上から乃愛を抱きしめた。


「のあは、からだのことをきにしすぎだ。

からだのたいちょうがわるくしてもわたしとさくらがほろうするからのあは、どんとかまえていろよ」


紳は、乃愛を安心させるように、優しく耳元で話しかけました。

顔を上げた乃愛は、手の甲で涙を払うと桜と紳に向かって、柔らかく笑って見せました。


「ありがとう、さくらちゃん、しんちゃん。

のあ、もうすこしがんばってみるね」


それから乃愛は、体の弱さを隠すようによりやんちゃをするようになりました。

それが桜と紳それに乃愛の両親に気を使わせない一番の方法だと考えていました。

そして乃愛の事は、紳達にとってお転婆の姫様として受け入れられるようになりました。


「乃愛、朝よ、起きなさい」


乃愛は体がゆらゆらと揺さぶられているのを感じ、目を覚ました。

目を開けるとそこには、呆れたような顔をした乃愛のお母さんが腰に手を当てて立っていました。


「う……んっ……お母さん……?」


乃愛は、目を擦りながら自分の体にかかっている布団を捲り体を起こしました。

それと同時に乃愛のお母さんは、部屋のカーテンを開けました。


「『お母さん……?』じゃないわよ。

いつまで眠ってるつもり?

ほら、早く起きて制服に着替えてご飯を食べちゃいなさい。

もう少しで紳ちゃんが迎えに来ちゃうわよ」

「は~~~い」


乃愛のお母さんが部屋から出て行くのを見送ってから、乃愛は制服に着替え、髪をクシでとかしはじめました。

昔からの天然パーマのおかげで、髪をとかすのに毎朝苦労させられるのです。

やっとのことで三つ編みにした髪に、チャームポイントである赤い大きなリボンをつけると、乃愛はその場でくるりと回って見せました。


「うん、完璧だよね」


乃愛は、鏡に映っている自分に向かって一回ウインクをしてから頷くとリビングに向かいました。

リビングでは、乃愛のお母さんが焼いた食パンをのせたお皿をテーブルに運びながらため息を吐きました。


「乃愛は、もう中学二年生なんだから自分で起きれるようにしなさいよ」


テーブルの上には、乃愛のお母さんが妬いてくれた香ばしい匂いのするパンがお皿の上で「私を早く食べてよね!」と訴えるかのように、乃愛の食欲に、火をつけました。


「早く朝ご飯を食べないと紳ちゃんが迎えに来るわよ」

「急いで食べるから急かさないでよ」


乃愛が椅子に腰掛け、食パンを二口頬張り、牛乳を飲みこんだ、その時です。

家の中で呼び鈴が鳴り響きました。


「わっ、もう紳ちゃんが来たの!?」

「ほら、言わない事じゃない」


乃愛は、急いで立ち上がると牛乳を一気飲みしてからお母さんに近づきました。


「いってきます、お母さん」


乃愛は、お母さんの頬にキスをしました。


「行ってらっしゃい、乃愛」


お母さんも、乃愛の頬に、軽くキスをしました。

乃愛が食パンをもぐもぐと頬張りながら玄関を開けると、黒髪のショートヘアーの女の子がそこに立っていました。


「おはよう、紳ちゃん」

「おはよう、乃愛」


乃愛は、食パンの最後の一切れを口の中に詰め込んでから紳ちゃんの方を向いた。

紳ちゃんは、呆れたようにこちらを見ていて一回小さくため息を吐いた。


「お前な……年頃の女の子なんだから行儀が悪い事をするなよ」

「もう紳ちゃんは、硬いんだから、少し位良いじゃない」


乃愛は、紳ちゃんの腕に絡みつき、甘えるように上目使いで紳ちゃんを見つめました。


「はぁ……乃愛に何を言っても無駄だな……」


紳ちゃんは、苦笑交じりにため息をつくと、そっと乃愛の右手を左手で包み込んでくれました。


「ほら、早く行かないと学校に遅刻するよ」

「うん、早く行こう、紳ちゃん」


乃愛は、紳ちゃんの手を握り返すと歩き出しました。

しばらく歩くと茶髪のセミロングで低い位置にツインテールをしている女の子が見えてきました。


「おはよう~~~~さくらちゃん」


乃愛は、左手を振りながらさくらちゃんに近づきました。

さくらちゃんが乃愛に気が付き乃愛の方を向きました。


「おはようございます、乃愛ちゃん、紳ちゃん」


さくらちゃんも右手を軽く振りながら乃愛に近づいてきました。


「おはよう、桜」


紳ちゃんは、さくらちゃんににこやかに挨拶をしました。

さくらちゃんは、乃愛と紳ちゃんがつないでる手を見て、ふふふっと楽しそうに口元に手を当てて微笑みました。


「紳ちゃんと乃愛ちゃんは、本当に仲良しなのね」

「うん、乃愛と紳ちゃんは、仲良しなんだよ」


乃愛は、嬉しそうに微笑みながら答えると紳ちゃんと手を握ってない左手でさくらちゃんの右手を握り締めてにっこりと微笑みました。


「でも乃愛は、さくらちゃんの事も好きだよ」


紳ちゃんとさくらちゃんは、乃愛の言葉を聞いて互いに見つめあうと互いに声をこらして笑い出しました。


「乃愛ちゃんには、敵わないですね」

「本当だな……でも乃愛らしくて良いと思うよ」

「もう紳ちゃんもさくらちゃんもそんなに笑う事は、ないじゃない!」


乃愛は、頬を膨らせながら紳ちゃんとさくらちゃんを少し睨みました。


「ごめんなさい、乃愛ちゃん。

でも乃愛ちゃんを馬鹿にしたのではないんです。

乃愛ちゃんの全てが愛おしいって紳ちゃんと思っていただけです」


さくらちゃんは、後ろで腕を組むとやんわりと微笑みながら乃愛を見つめるとちらって紳ちゃんを見ました。


「まあ……否定は、しないけれどね」


さくらちゃんの視線と紳ちゃんの目が合うと紳ちゃんは、少しだけ気まずそうに軽く自分の後ろ髪を触りなが苦笑いを浮かべました。


「うぅ……なんだかさくらちゃん達に丸め込まれた感じがするよ……」


乃愛は、不満そうにさくらちゃん達を見つめました。


「私達は、単純に乃愛ちゃんの事が好きってだけですから乃愛ちゃんは、私達の好意を素直に受け取っていいと思います」


さくらちゃんは、優しく微笑みながら乃愛の頭を撫でました。


「んっ……そうだよね……ありがとう、さくらちゃん」


さくらちゃんに、頭を撫でられて気持ち良さそうにしながらさくらちゃんが乃愛の撫でた手を軽く触りながら照れくさそうに微笑みました。


「早く学校に行こうよ、紳ちゃん、さくらちゃん」


乃愛は、紳ちゃんとさくらちゃんに向かって両手を差し出しました。

紳ちゃんとさくらちゃんは互いに見つめあうと少し笑いながら紳ちゃんとさくらちゃんは、乃愛の手を握りしめました。

乃愛達は、三人で手を握り締めながら学校へ向かいました。

学校の校門に入るとある出来事が起きました。


「あ、あの、紳先輩!」


声をした方を向くと黒髪のおかっぱで乃愛よりも背の低い女の子が手紙を持って立っていました。


「これは私の気持ちです、受け取ってください!」


女の子は、紳ちゃんに手紙を差し出すと紳ちゃんは受け取りました。


「ありがとう。

気持ちは、嬉しいよ……」


紳ちゃんは爽やかに微笑むと女の子は、顔を真っ赤にして舞い上がりながら声を裏返しにして答えました。


「は、はい!

それでは、失礼します」


女の子は、ふかぶかと頭をさげると走って去って行きました。

今の女の子は、女の子らしくて可愛らしい女の子だったな……。

紳ちゃんは、あんな女の子が好みなのかな……。

乃愛は、そう考えると胸が苦しくなりました。

乃愛は、苦しそうに自分の両手を握りしめながら横を向きました。

横を向いたらさくらちゃんも辛そうに紳ちゃんを見つめていました。

さくらちゃんは、乃愛の視線に気が付きそれを誤魔化すように乃愛に向かって優しく微笑みました。

乃愛は、さくらちゃんの微笑みを見ても心ももやもやが治まらずに辛そうに俯きました。


「どうしたんだ、乃愛?」


紳ちゃんは、乃愛の異変に気が付き乃愛の顔を覗きこんできました。


「ッ!?何でもないわよ!

紳ちゃんは、可愛らしい女の子から貰ったラブレターでにやけてれば良いでしょう!

紳ちゃんの事なんかほっておいて先に行こう、さくらちゃん」


乃愛は、さくらちゃんの手を握り締めると学校に歩き出しました。


「待てよ。

乃愛は、何を怒ってるんだよ」


紳ちゃんは、何もわかっては無いような不思議な顔をしながら乃愛に近づいてきました。


「ふん、あっかんべ~~~~~!」


乃愛は、一回紳ちゃんの方を向くと両眼を瞑ってベロを出してあっかんべ~~~をするとさくらちゃんの手を握り締めたままさくらちゃんと学校の下駄箱に走って向かいました。

乃愛とさくらちゃんが上履きに履き替えていると紳ちゃんが後から現れました。


「乃愛は、何を怒ってるんだよ……」

「……別に怒ってないわよ」

「は~~……」


紳ちゃんは、深くため息を吐くと下駄箱を開けると下駄箱から大量のラブレターが落ちてきました。

それを見た乃愛は、心を落ち着かなくて横を向くとさくらちゃんは、一瞬辛そうとも見える表情で紳ちゃんを見つめていて乃愛の視線に気が付きいつものにこにこ笑顔に戻りました。

紳ちゃんは、少しため息を吐くとラブレターを拾い始めました。


「紳ちゃんは、相変わらずモテるのね」


さくらちゃんは、からかうみたいに悪戯っぽく微笑みながら落ちたラブレターを紳ちゃんと一緒に拾い始めました。

さくらちゃんは、ラブレターを全て拾い終わるとラブレターを紳ちゃんに渡しました。


「そう言えば紳ちゃんは、何でいつも告白を断ってるの?

紳ちゃんは、誰か好きな人がいるの?」


さくらちゃんは、不思議そうに首をかしげました。

紳ちゃんは、自分の髪を少しだけ触りました。


「そんな子は、いないよ。

それに今は、うちのじゃじゃ馬なお姫様の面倒をみるので精一杯だしね」


紳ちゃんは、乃愛の方をちらって見ました。


「もう紳ちゃんたら酷いな、そんな事を言わなくてもいいじゃない!」


乃愛は、ぽかぽかと紳ちゃんの胸を強く何回も叩きました。

紳ちゃんは、乃愛をなだめるように軽く乃愛の肩を触りました。


「ちょっと痛いって、あんまり叩くなよ、乃愛」

「あ~~もううるさい、うるさい、うるさい、うるさい!」


乃愛は、紳ちゃんの頭を強く何回も叩きました。

紳ちゃんは、少しだけため息を吐くと乃愛を軽く抱きしめました。


「私が悪かったから機嫌を直せよ、乃愛」

「ふん……紳ちゃんなんか知らない……」


乃愛は、不機嫌そうに横を向きました。

紳ちゃんは、乃愛を抱きしめたまま乃愛のおでこにキスをしました。


「これで、機嫌を直してくれるよね」

「うぅ……紳ちゃんは、ずるいよ。

そんな事をされたら許せないわけないよ……」


乃愛は、紳ちゃんを抱きしめると恥ずかしそうに顔を赤らめながら紳ちゃんを見つめました。

紳ちゃんも乃愛を抱きしめ返すと乃愛を見つめ返して紳ちゃんは何か言おうとすると咳が聞こえてきました。

咳が聞こえた方を向くとさくらちゃんが立っていて申し訳なさそうに乃愛達を見つめていました。


「お取込み中すいません。

もう少ししたら予鈴が鳴りますから、早く教室に行った方が良いですよ」

「えっ、もうそんな時間なの!?

早く教室に行こう、紳ちゃん、さくらちゃん」


乃愛達は、急いで教室に向かいました。

急いだおかげでどうにか遅刻せずにすみました。

学校の授業は、難しくて席が窓際って事もあって、眠気に襲われて気付くと眠っていました。

しばらくすると名前を呼ばれた声が聞こえてきてゆっくりと目を開けると呆れた表情で紳ちゃんが見つめていました。


「う~~ん……紳ちゃん……?」


乃愛は、目を擦りながら顔を上げてから口元を押さえて小さく欠伸をしました。


「何まぬけな顔をしているんだ、もう昼休みよ……」


紳ちゃんは、ため息を吐きました。


「えっ、もうそんな時間なの!?」

「そうですよ。ですから早く弁当にしましょう」


声がした方を向くとさくらちゃんがにこにこしながら立っていました。


「うん、弁当にしようよ、さくらちゃん、紳ちゃん」


乃愛は、紳ちゃん達の方を向きながら話すと紳ちゃんとさくらちゃんと一緒に屋上に向かいました。

屋上に着くと紳ちゃんは、敷物をひいて鞄から4段重ねの弁当を広げました。


「わ~~~~~、凄く美味しそうだね」


乃愛は、目を輝かしながら弁当の中を覗き込みました。


「どうぞ、めしあがれ……」


紳ちゃんは、弁当に向かって軽く手を広げました。


「いただきます、紳ちゃん」


乃愛は、両手を合せていただきますをしました。


「いただきますね、紳ちゃん」


乃愛が両手をあわせていただきますをしたのをみて、さくらちゃんも両手を合せていただきますをしました。


「う~~~ん、やっぱり紳ちゃんのおにぎりは、美味しいよ」


乃愛は、おにぎりを幸せそうに食べました。


「さすがは、紳ちゃんですね。

舌がとろけるほど美味しいです」


さくらちゃんは、唐揚げを美味しそうに食べました。

紳ちゃんは、乃愛とさくらちゃんがおかずを食べるのを優しく見つめていました。

しばらくすると紳ちゃんは、口元を押さえてくすくす笑いながら乃愛に近づきました。


「乃愛、頬にご飯がついてるよ……」

「えっ、嘘!?」


乃愛は、慌てて両手で自分の頬を拭きました。


「紳ちゃん、取れたかな?」

「いや、取れてないよ。

私が取ってやるから少しじっとしてろ」


紳ちゃんは、乃愛に近づくと右手で乃愛の左頬に付いているご飯粒を取るとそのままご飯粒を食べました。


「取れたよ、乃愛……」

「ありがとう、紳ちゃん」


乃愛は、紳ちゃんに頬に付いたご飯粒を食べられたのを見て恥ずかしそうに顔を赤らめながら紳ちゃんにお礼を言いました。


「別にお礼言われる事ではないよ」

「そう言えばさっきから紳ちゃん、弁当のおかずを食べていないよね」


乃愛は、お箸で唐揚げを掴むと紳ちゃんに唐揚げを向けました。


「はい、紳ちゃんも食べてね」

「いいって、自分で食べれるから……」


紳ちゃんは、顔を赤くしながら横を向きました。


「遠慮しないで、食べて、紳ちゃん」


乃愛は、紳ちゃんの態度に根負けしてため息を吐きながら乃愛を見つめました。


「は~~~……解った、食べるよ。

本当に乃愛には、敵わないな……」

「はい、紳ちゃん、あ~~~~~ん」


乃愛は、にこにこしながらお箸で唐揚げ掴むと紳ちゃんの口元に持ってきました。

紳ちゃんは、一回唐揚げを見ると一口で唐揚げを食べました。

乃愛は、紳ちゃんが食べたのを見て満足そうに微笑むと今度は、卵焼きをお箸で掴むと紳ちゃんの口元に持ってきました。


「はい、紳ちゃん、あ~~~ん」

「ちょっと、乃愛、もう良いって!」

「紳ちゃん、今の乃愛ちゃんに何を言っても無駄ですよ」


声がした方を向くとさくらちゃんが苦笑いを浮かべながら紳ちゃんを見つめていました。


「こうなった乃愛ちゃんは、誰にも止める事は出来ません。

ですから紳ちゃんは、諦めてください」

「それは、私も理解してるよ。

乃愛、好きにしてくれ……」


紳ちゃんは、ため息を吐くと乃愛が向けた卵焼きを食べました。


「うん、そうするね」


乃愛は、にこにこしながら今度はプチトマトをお箸で掴むと紳ちゃんに向けました。

紳ちゃんは、自分に向けられたプチトマトを食べました。

さくらちゃんは、少しだけ考え込むように俯いてから紳ちゃんの方を向きました。


「紳ちゃん、私のも食べ下さい」


さくらちゃんは、にこにこしながら箸で唐揚げを掴み紳ちゃんに向けました。


「ちょっと、桜、お前もか!?」

「まさか乃愛ちゃんのが食べれて私のは、食べれないって事はありませんよね」


さくらちゃんは、これでもかってくらいにこやかに微笑みながらプレッシャーをかけました。


「うっ……桜のもちゃんと食べるからそんな顔するなよ……」-

「うん、わかれば良いのですよ」


紳ちゃんは、さくらちゃんのお箸で向けた唐揚げを食べました。

紳ちゃんは、交互で乃愛とさくらちゃんに食べさせれました。

紳ちゃんとさくらちゃんと乃愛のやり取りは、紳ちゃんのお腹が一杯になるまで続きました。


「ごめん、乃愛、さくら、これ以上は、食べられないよ」


紳ちゃんは、乃愛とさくらの方に両手を向けて拒否しました。


「本当に紳ちゃんは、小食だよね」


乃愛は、お箸で昆布巻を掴むと自分の口に入れました。


「乃愛が大食いなんだよ……」


紳ちゃんは、ため息を吐きました。


「だって紳ちゃんの作る料理美味しいもん」


乃愛は、弁当に残っている最後のおかずの唐揚げをお箸で掴むと食べました。


「う~~~~ん、美味しかった。

ご馳走様、紳ちゃん」


乃愛は、両手を合せてご馳走様をしました。


「ご馳走様です、紳ちゃん」


乃愛がご馳走様をしたのを見て、さくらちゃんも両手を合せてご馳走様をしました。


「お粗末様でした」


紳ちゃんは、乃愛とさくらちゃんに向かって薄く微笑むと弁当箱とお皿とお箸を鞄に直しながら話しました。


「そう言えば、乃愛、さくら、今日の放課後の事だけれども、先に帰ってくれないかな」

「どうかしたの、紳ちゃん?」


弁当箱を鞄に直す手を止めて乃愛の方を向きました。


「先生に学校の進路の事で相談があるんだよ」


紳ちゃんは、バツ悪そうに話すとそれを誤魔化すみたいにまた弁当を片付け始めました。


「それならその相談が終わるのをさくらちゃんと待ってるね」


乃愛は、さくらちゃんの腕に自分の腕を絡ませながら紳ちゃんを上目使いで見つめました。


「その……ごめんなさい、乃愛ちゃん。

用事がありますから今日は、早く帰らないといけません」


さくらちゃんは、すまなそうに話しながら軽く乃愛の手を触りました。


「え~~~~、さくらちゃん、今日は、早く帰るの?

それならちよちゃんの所で時間をつぶしていようかな……」


乃愛は、さくらちゃんを離すと自分の頬を触りながら考え込むように少しだけ上を見つめました。

紳ちゃんは、弁当箱を鞄に直し終わると乃愛をじっと見つめました。


「紳ちゃん、そんなに見つめてどうしたの?」

「……あんまり先生に近づかない方がいいよ」


紳ちゃんは、少しだけ考え込むとゆっくりと話し始めました。


「何でなの?」


乃愛は、紳ちゃんにゆっくりと近づきました。


「先生が気に入った女の子に悪戯をしてるって噂があるのよ……」


紳ちゃんは、言いにくそうに横を向きながら自分の髪を触りながら話しました。


「もう紳ちゃん、何を言うのよ。

先生がそんな事をするわけないよ」


乃愛は、口元を押さえてくすくす笑いました。


「でもただの噂話って感じではないんだよ。

それに私は、乃愛が心配なんだよ……」


紳ちゃんは、真剣な表情で乃愛を見つめました。


「いくら紳ちゃんでも、噂話だけでちよちゃんを悪く言うのは、許さないわよ」


乃愛は、怖い顔で睨むと突然手を叩く音が聞こえてきました。

音が聞こえた方を向くとさくらちゃんが自分の両手を合わせてにこにこしながら乃愛と紳ちゃんを見渡しました。


「はい。

喧嘩は、そこまでです」


さくらちゃんは、乃愛の方に近づき優しく話しかけました。


「本当は、紳ちゃんが乃愛ちゃんの事が心配で忠告してくれているって解っていますよね」

「うん……」


乃愛は、気まずさそうに俯きました。

それを見たさくらちゃんは、次に紳ちゃんに近づきました。


「紳ちゃんも紳ちゃんです。

乃愛ちゃんにあんな言い方をしたら怒る事は、解っていましたよね」


さくらちゃんは、紳ちゃんに優しく話しかけました。


「それは……」


紳ちゃんは、気まずさそうに横を向きました。


「二人とも悪いと思うのでしたらちゃんと仲直りしないといけません」


さくらちゃんは、乃愛の右手を掴んでから紳ちゃんの右手を掴むと紳ちゃんと乃愛の手を重ねてから優しく紳ちゃんと乃愛を交互に見つめました。

それを見た紳ちゃんと乃愛は、互いに見つめるとどちらともなく謝りました。


「その……ごめんね、紳ちゃん」

「こちらこそごめん、乃愛……」


乃愛が紳ちゃんの手を握りしめると紳ちゃんも乃愛の手を握り返しました。

その様子をさくらちゃんは、紳ちゃんと乃愛ちゃんを親愛を込めて見つめながら微笑みました。


「やっぱり紳ちゃんと乃愛ちゃんは、仲良しが一番です」


さくらちゃんの笑顔を見ていたら喧嘩してるのが馬鹿馬鹿しくなりました。

それから直ぐに昼休みの終わりを知らせるチャイムがなりました。

午後の授業は、眠気に襲われて授業所ではなかったです。

授業が終わると真っ先に保健室に向かいました。

保健室の中に入ると、真っ白い白衣を着た保険の先生が退屈そうに書類を見ていました。

白衣にちよちゃんの黒くて長い髪は、よく映えています。

白衣の下に着ている薄紫色のワンピースから伸びる綺麗な長い足と、一つにくくられた髪で、ちよちゃんの綺麗度が、格段に上がってるような気がします。


「ちよちゃん、忙しそうだね」


ちよちゃんに話しかけるとちよちゃんが顔をあげてこちらを向きました。


「乃愛ちゃん、どうしたんだい?

保健室は、元気の人が来る所では、ないんだよ」


乃愛は、保健室の中を少し歩き回りました。


「ちよちゃん、固いな~~~。

乃愛とちよちゃんの仲じゃない」


それから乃愛は、ベットの上に寝っ転がるとちよちゃんの方を向きました。


「だから先生をちよちゃんと呼ぶのは、どうかと思うよ」


ちよちゃんは、ため息を吐くと書類に目を落としました。


「……ところで乃愛ちゃんは、少し疲れているみたいだね」


ちよちゃんは、書類に目を通しながら話しました


「えっ、ちよちゃんには、解るの?」

「これでもお医者さんだからね。

乃愛ちゃんの体の調子位は解るよ」


ちよちゃんは、書類から顔を上げて乃愛の方を向きました。


「さすがは、ちよちゃんだね」

「今は、疲れを取るのが先よ。

時間になったら起こすから、安心してベットで眠っていなさい」


ちよちゃんは、乃愛に近づき乃愛の頭を撫でました。


「それじゃあ、ちよちゃんの言葉に甘えて少し眠らしてもらうね」


ちよちゃんの頭を撫でる手が気持ち良くて直ぐに眠りの底に落ちて行きました。

しばらくすると頬を触る感触を感じて目を開けると近くにちよちゃんの顔が合りました。


「ちよちゃん、どうしたの……?」

「そんなに無邪気に眠られたら襲って下さいって言ってる物だと気づいて欲しいね」

「それは、どういう意味なの……?

きゃっ!?」


乃愛は、体を起こそうとするけれども、ちよちゃんに体を押し倒されました。


「ちよちゃん、お願い、止めて……」


乃愛は、子犬みたいに目を涙で濡らせながらちよちゃんを見つめました。


「こんなチャンスは、そう無いんだから、止めるわけない事くらい理解してもらいたいね」


ちよちゃんは、乃愛の頬をキスをすると怖い表情をしながら乃愛の口にちよちゃんの口が近づいてきました。

乃愛は、目を瞑り心の中で紳ちゃんの名前を呼ぶと突然保健室のドアが開く音が聞こえると誰かが入ってきました。


「先生……そこまでにしてもらえませんか?

それ以上、乃愛に近づいたら、いくら先生でも許しませんよ」


目を開けると紳ちゃんが立っていました。


「紳ちゃん……」


乃愛は、涙を流しながら紳ちゃんを見つめました。


「綾倉さんは、本当に何時も良いところで現れるよね」


ちよちゃんは、乃愛から離れました。

すると紳ちゃんは、乃愛に近づくと右手を掴むとちよちゃんの方を向くと怖い顔でちよちゃんを睨みました。


「乃愛は、連れて帰ります。

今度、乃愛に同じ事をしたら、いくら先生でも許しませんから覚えていてください」


ちよちゃんは、両手を軽く横に広げて苦笑いを浮かべました。


「それは怖いね。

あんまり痛い目に合いたくないから気をつけるよ」


紳ちゃんは、キッて怖い顔でちよちゃんを睨むと直ぐに軽く頭を下げました。


「それでは、失礼します」

「ちょっと待ってよ、紳ちゃん」


乃愛は、紳ちゃんに手を引かれて保健室を出て行きました。

紳ちゃんに手を引かれて家に帰る時も紳ちゃんは、怒ったかのように無言でした。

乃愛は、紳ちゃんの様子に我慢できなくて恐る恐る紳ちゃんに話しかけました。


「その……紳ちゃん、今日は、助けてくれてありがとう」


控えめに紳ちゃんに話しかけたけれども紳ちゃんは、無言で何も言わなかったです。


「紳ちゃんの忠告を聞かなくてごめんね」


もう一度紳ちゃんに話しかけたけれども紳ちゃんは、何も言ってくれなかったです。


「その……もう紳ちゃんの事を疑わないから……」


もう一度勇気を振り絞って紳ちゃんに話しかけたけれども紳ちゃんに無言で返されました。


「ねえ、紳ちゃん……?」


恐る恐る紳ちゃんの顔を覗き込みながら話すけれども相変わらず紳ちゃんは、何も言ってくれませんでした。


「お願い、黙ってないで何か言ってよ……紳ちゃん」


乃愛は、辛そうに話すと紳ちゃんは、突然立ち止まり、乃愛の方を向きました。


「あの……紳ちゃん……?」


紳ちゃんは、怖い顔で乃愛を睨みました。


「……私は、先生に気をつけろって言ったよね」

「それは……」


乃愛は、気まずそうに俯きました。


「それを無視して先生に会いに行ったのは、乃愛だよね」

「ごめんなさい……」


乃愛は、俯いたまま紳ちゃんに謝りました。


「何時も乃愛は、そうだよ。

警戒心が無くて無鉄砲で私がどれだけ苦労してると思ってるんだよ!」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」


乃愛は、俯きながら自分の両手を握り締めました。


「乃愛は、体が弱いんだから少しは、大人しくしてろよ。

乃愛に迷惑をかけられのは、うんざりなのよ!!」

「ッ!?」


紳ちゃんに気にしてる事を言われて気付くと乃愛の目から涙があふれてきた。


「はっ!?」


紳ちゃんは、乃愛の涙を見て我にかえった。


「ごめん……今のは、言い過ぎた」


紳ちゃんは、優しく乃愛の肩を触ろうとしたけれども乃愛は、それを避けて紳ちゃんから距離をとり後ろを向いた。


「ま、待て、乃愛!」


紳ちゃんが乃愛の手を掴もうとする手を避けてその場を走って離れました。

乃愛は、昔から体が弱くてよく倒れていました。

乃愛の親は、それを心配されてばかりです。

だから乃愛は、わざとやんちゃをしました。

そうする事で両親を安心させようとしました。

その事は、紳ちゃんも解っていた思っていました。

でも紳ちゃんにあんな事を言われて紳ちゃんにとって乃愛は、迷惑をかけるだけのお荷物と言われたみたいで悲しくて走りました。

次から次と涙が溢れてきて、何度手でこすっても乃愛には、涙を止める事は、できませんでした。

~つづく~


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