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白雪幽夢
雪白の花片が散っていた
赤に染まり、地に敷かれ、
誰にも掬われずに広がった
君とわたしは、名を捨てた翔鳥
光輝なる血を継ぎながら、落伍し、放たれたふたり
君を射落とした日、わたしは己の翼を捥いだ
君の瞳を抉った日、わたしは己の口を噤んだ
君を殺した日、わたしは生きて残ると決めた
紅雪よ、降りしきり、
醜いわたしを隠しておくれ
凍えるわたしに降り積もり、
幽けき夢が、潰えればいい
希求する
君へと溶け浸みて、渾然と為る朝を
憧れる
今一度、翼を並べて飛び立つ碧霄に
本編の五百年前、祥岐という国のお話です。