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#1-3 にゃんだーらんど

<とある路地裏>


『んでよ、あそこのジジイはケチくせぇから野良猫の俺らには煮干しオンリーよ! マジで肉食わせろっつー話だぜ!』


『くれるだけマシマシ。三丁目のオニババ屋敷なんて、近づくだけでホウキ持って追い払おうとするんだから』


 クロブチと茶トラの言葉に、他の猫たちもウンウンと肯く。


『新入り、お前んトコは?』


 いきなり話を振られてアワアワするものの『か、カリカリを少々……』と無難に答えておく。


『にゃん太っちは家猫だもんにゃ~。それにアメショは毛並みと模様が良いよなぁ~』


 そう言いながら、宅配業を営みそうな見た目のクロが俺の背中をポフポフと叩いてくる。


『男でアメショよりも、黒猫の方が何だかカッコイイ気がするんだけどなぁ』


『なあに、お互い隣の芝生は青く見えるもんさ~』


 うーん、そういうもんかなぁ?


 ……という、どうでも良い戯れ言は置いといて、俺がお邪魔させて頂いているココは、言うまでもなく猫の集会場である。

 どうして俺がそこに顔を出しているのかというと、その発端は女神様の一言だった。



……




『一応言っておくと、この世界の猫って、みんな貴方と似たような境遇だよ』


 桐子ちゃん一家が寝静まった後、俺と女神様は誰も居ないリビングで駄弁だべっていた。


『似たような……って、猫ぜんぶ転生組なのっ!? マジでっ!!?』


『うん。人から人の方が比率としては多いのだけど、猫だけは例外的に記憶を保持したまま転生するテスト中なんだよ』


 ひえぇ、何だか凄い話だなぁ。

 ……って、あれ?


『猫って、やたらワガママだったり言うこと聞かなかったりするけど』


『自分より年下の若造の指示なんか聞いてられるかっ! みたいな老害のプライドだね』


『言い方ァァッ!!!』




……



 というわけで、他の転生者の皆様にご意見を頂戴しにやって来たわけである。

 猫同士の「派閥」はあるらしいけど、幸いにもここに集まってるにゃんこさんたちは皆フレンドリーな感じだ。


『しかしまあ、飼い主さんを守る事が使命とか、珍しい条件だな』


 リーダーのシロが、まるで人間のように前脚で腕組み(脚組み?)しながらドラム缶に座って首を傾げている。

 この姿を人に見られたら一発アウトだろうに、さすがリーダーだけあってその辺は抜かり……



   ガタッ!



 近くの家で物置のドアが開く音が聞こえるや否や、シロはバタバタしながらドラム缶から転がり落ちた。

 あっ、これ通りすがりに野良猫とバッタリ会ったときに見たことある反応だわー。


『……珍しい条件だな』


 大事なコトなので二度言いました。


『そもそも使命とか条件とか、私たちそういうの無かったからね~』


『あれ、そうなの?』


 キョトンとする俺に対し、一同が肯く。


『ボクの時は人間か猫か好きな方を選べと言われたから、即答で猫を選んだね……』


『即答って』


『ふふっ、人間は怖いからさ……』


 君のダークオーラの方がコワイヨー!!


『でも、女の子を守る使命だなんてロマンチックだねぇ~。憧れるなぁ~』


 茶トラがうっとりしながら呟くと、他の皆がヤレヤレ……と呆れた顔になる。

 なるほど、この子はそういうのが好きなんだなぁ。


『それはさておき、せっかく転生組同士知り合えたんだ。困ったときは頼って来いよ?』


 再びシロがドラム缶の上で腕組み(もうこの表現でいいや)しながら俺を諭す。

 うーん、さっきあんなにダイナミックに転がり落ちたのに、どうやらこの方のポリシーのようだ。


『うん、色々教えてくれてありがとう。これからも宜しくね』


 心強い仲間たちに見送られ、俺は桐子ちゃんの通う幼稚園へ向かった。

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