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#2-8 学校でくらそう!

『今まで黙ってて、ごめんなさい』


『いや、実際に祐子さんのおかげで助かったわけだし。責める理由は無いかな……』


 シロは苦笑しながら言うものの、ユウゾウは何故か不満そうだ。


『最初からアレでぶっ殺してくれてたら、話が早かったんじゃね?』


『アンタが変な約束したのが悪いんでしょうがー!!』


『いてぇっ! まだ少し横っ腹痛いんだから叩くなよっ!!』


 というわけで、私達は目を覚ました花子さんに屋上の鍵を開けてもらい、無事に脱出できた。

 あれだけドンパチやったにも関わらず全く騒ぎにならなかったと考えると、もしかすると人間達には見えていないのかもしれない。


『ところで、祐子さんの唱えてたアレ……この世界のモノでは無いね?』


 シロの問いかけに祐子さんはコクリと頷いた。


『私はリトルスターライトっていう……こことは違う世界の聖職者プリーストだったの』


『別世界で亡くなって、この世界で猫になったってこと?』


 私の問いかけに祐子さんは首を横に振った。


『私は生まれた時からこの姿でね。転生じゃなくて転移っていうのかな? この世界だと、私の種族をケットシーって呼ぶみたい』


『おおお、スゴイねっ!!』


 何故か花子さんが嬉しそうに反応したかと思ったら、祐子さんの両前脚を握ってブンブンと振っていた。


『わっ、わっ?』


『児童書で妖精猫ケット・シーといえば主役級だよっ! わぁー、まさかリアルでお目にかかれるなんて光栄だねぇ~!』


『わ、私こそ学校の七不思議の生き字引の花子さんと握手とか、光栄過ぎて……!』


 何故か祐子さんも感激しながら泣いていて、互いを讃え合うふたりを見て、他の皆はポカンとしていたとさ。



~~



 学校の片隅で、一匹のコウモリがフラフラと飛んでいた。


『畜生……絶対に許さねェ……』


 肉体の大半を根こそぎ消滅させられてしまったものの、どうにか一握りの魔力で素体を生成した悪魔は、再び魔界に戻るべく学校の外へ向かっていく。


『あの女は最後に殺るとして、まずは周りのザコ共からブチ殺してやる……』


 悪魔にとって、この世界の生き物は『単なる餌』に過ぎないはずだった。


『しかし、あんな化け物が居るとは……。次は慎重に場所を決めないとな』


 そして校門前まで来た時、正面に一匹の白猫の姿が見えた。


『アイツは……いきなり逃げ腰で俺に交渉してきた腰抜け野郎じゃねェか!』


 他の猫達の姿はどこにも見当たらない。

 もちろん、例の憎き茶色い奴も。


 そして悪魔は歓喜の表情でターゲットに狙いを定めた。


『……まずは腹ごしらえと行きますかねェ!』


 気づかれぬように空高く飛び上がると、闇に紛れながら一気に急降下!

 白猫の首に牙が突き刺さるかと思われたその時……



『エクストラシールド』



 白猫の呟きによって具現化した魔法障壁に顔面から突っ込んだ悪魔は、その反動で大きく吹っ飛ばされてグラウンドに転がった。


『い、いっでぇ……な、何が……?』


 意識が朦朧もうろうとなりながらも顔を上げると、前方からゆっくりと近づいてくる白猫の姿が見えた。


『祐子さんはなかなか優れた術士だけど、詰めが甘かったね』


 白猫の表情は笑っていたが、その瞳の奥に潜む深淵は、悪魔に恐怖を与えるには十分だった。


『あ、あああ、あの女といいテメエといい、一体なんなんだよォっ!!?』


『んー、君みたいな劣等種レッサーに真名を名乗る筋合いは無いね。僕の格が落ちてしまうだろう』


 白猫の言葉に一瞬だけ苛立ちを覚えた悪魔だったが、その意味を察してゾクリと寒気を覚えた。

 自分達の種族は格下の者に対し、決して自ら真名を名乗ることは無い。

 それは位階を定める上で厳格なルールであり、例え何者であっても反する事は許されない。


『俺を劣等種レッサーだと……?』


『事実を伝えたまでさ』


 この悪魔は決して卑しい身分では無かった。

 むしろ多くの悪魔が自分に屈する程の能力を持っており、あの屋上の結界ですら、世界に張り巡らせた幾万もの罠のひとつが反応し、それに対処したに過ぎなかったのだ。

 そんな自分を劣等種と見下す存在は……王の一族しか居ない。


『ま、まさか……まさか、貴方は……貴方様はアアアっ!!!』


『結構この生活も気に入っててさ。邪魔されると困るんだよね』


 先ほどと同じように見える白猫の笑顔……だが、その目は笑っていなかった。


『ひ、ひぃぃぃ! お助けをををっ!!』


 震える悪魔……いや、か弱い小さなコウモリを見下ろした白猫は、ニヤリと笑いながら口を開いた。


『さようなら』





『つーか、何でお前はあそこで俺をかばおうとしたんだ?』


 結局、ユウゾウ達も私達と一緒に行動する事に決まった。

 ……というか、元々彼らが小学校の片隅で暮らしていたトコに私達が勝手に住み着いただけな気もするけど、にゃん太は『桐子ちゃんを見守るのに都合が良い!』と、まるでお父さんみたいな事を言っていて、何だか微笑ましい。


 そんな事を考えていると、何故かユウゾウが私の顔をジーッと見ていた。


『まさか俺に惚れてるとか……!』


『は? 頭にウジ涌いてんの?』


『ひどいっ!』


 私に罵られて涙目のユウゾウを見て、皆は爆笑。


『うんうん、賑やかで楽しいねぇ。やはりペットの居る生活ってのは良いもんだよね~』


 花子さんは満足そうにウンウンと頷く。


『ぺ、ペットぉ!?』


『いいや、逆転の発想だコウイチ! 俺達はメジャーキャラである花子さんの使い魔的ポジションに就いた……つまり式神だ!!』


『なん……だと……!』


 コウイチとヒトシが言ってる事がよく分からないけど、幸せそうなので良しとしよう。


『これにて一件落着っと。快適な寝床も手には入ったし、カッコイイ祐子さんも見れたし、僕としては大満足だよ』


 花子さんとそっくりなポーズで、こちらもウンウンと頷くシロだったが、それを見た祐子さんは、いつものニコニコ笑顔で話しかける。


『私的にも、あのダークヒーロー展開はなかなか中二病っぽくて嫌いじゃなかったかな。フォロー、ありがとねシロくん』


 祐子さんの言葉にシロの表情が笑顔のまま凍り付いた。


『……どこから見てた?』


『さーてね』


 こちらもよく分からない会話をしているシロと祐子さんだったが『うぁー! 恥ずかしぃぃぃーー!』とか言いながらシロが悶えていたのが印象的だった。


『ねえユキちゃん、この生活は楽しい?』


 唐突に祐子さんに問いかけられて一瞬戸惑ったものの、そんなもの考えるまでも無く決まっている。


『当然でしょ』



―― もしもこの世界のすべての猫が転生組だったなら/白猫ユキの場合








... end?

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