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#2-5 学校の七不思議

 ふと気づけば夕日は沈みかかり、校舎の中はどんよりと薄暗い雰囲気になっていた。

 校内に残っているのは既に私達ネコ4匹と職員室の先生達だけで、辺りに生徒達の姿は見当たらない。


『そろそろユキは帰った方が良くねーか? 仲間達が心配するだろ』


『んー、今まで何度か遠出して朝帰りした事もあるし大丈夫よ』


『ガキのくせに朝帰りとは、世も末だなァ……』


『何だか年寄り臭いわねぇ』


『うっせぇ! 俺はまだ二十代だっ!!』


 見た目的には猫になってから20年以上生きているようには見えないので、どうやら人間だった頃もカウントして計算しているようだ。


『でも確かにアンタの言う通り幽霊に襲われたら危ないし、そもそもアンタ達に襲われるかもしれないわね。怖い怖い』


『人聞きの悪い事言うんじゃねえやっ。それに、お前を襲ったら末代まで祟られそうだぜ』


『まるで次の代があるかのような口振りね……?』


『それ真顔で言うのやめてくれねえかなっ!? ホントに傷つくからっ!!』


 涙目で訴えてくるユウゾウを見て、私達が笑っていると……



『なるほど、声の正体は君達だったのね!』



『『『……っ!!!』』』


 いきなり声をかけられ、驚いた私達は慌てて声の方へ振り向いた!

 そして、振り向いた先には一人の女の子の姿が……。


『さ、最悪だ……』


 ユウゾウが青ざめながらガクリとうなだれたが、それもそのはず。

 私達は猫に転生する前に『人間に正体を見破られたら地獄行き』と念入りに女神から言われていたわけで、つまりここに居る全員がアウトだ。


『兄貴ぃー、俺達どうなっちまうんだーーっ』


『うわーんっ!』


 コウイチとヒトシは抱き合いながら、おいおいと泣き出してしまった。


『え、えーっと、何でこの子達は泣いてるのかな……?』


 困惑する女の子に目を向けて、私は溜め息を吐いた。


『私達は人間に正体がバレたら地獄に落ちるって神様から言われてんの。つまり、アンタに目撃されちゃった私達、全員お先真っ暗ね』


 ジト目でボヤく私を見て、女の子は目を見開いて驚いた後、手を振りながら笑った。


『あはは、それなら大丈夫だよ。私、人間じゃないし』


『へ?』


 私が首を傾げながら返事をすると、女の子は保健室の前にあった鏡を指差した。

 鏡の中に映っているのは4匹の猫だけで、この子の居るはずの場所には……何も無かった。


『『くぁwせdrftgyふじこlp;@:!!!!』』


 バターーンッ!!!


 恐怖が限界突破したのか、コウイチとヒトシは声にならない声を上げた後、その場にひっくり返ってしまった。


『わわっ、驚かせてごめんっ。久々に誰かと話が出来て嬉しくてさ……』


 申し訳なさそうにシュンとしながら、女の子は倒れた二匹の頭を撫でた。


『……貴女の正体は人間ではなくて、幽霊って事で良いのかしら?』


 私の問いかけに、女の子は少し首を傾げてからコクリと頭を縦に振った。


『どちらかと言うと、子供達の強い創造力が生み出した精霊みたいな感じなのだけど。君、トイレの花子さんって聞いたことないかな???』


『知らないわね』


『あれまー。これも時代の流れなのかな~』


 私の答えを聞いた花子さんとやらは残念そうにしょんぼりしてしまった。

 だが、その一方でユウゾウは今にも泣き出しそうな顔で震えている。


『アンタといいコイツらといい、ホント情けないわねぇ。男のくせに、こんな可愛らしい女の子を相手に、何をビクビクしてんのよ』


『うっせえ! 知ってる奴にとってはマジで洒落にならねーんだよ!!』


 本気で怖がる様子のユウゾウに、何故か花子さんは『ふふんっ』とか言っていて、何だか満足げな様子だ。

 怖がられるのが嬉しいのだろうか???


『で、花子さんはヘナチョコ猫達に何かご用なの?』


『うーん、猫さん達に相談するのはおかど違いとは思うんだけど。最近、屋上の辺りから凄く嫌な感じの気配がするんだけど、何か知らない?』


 屋上と言えば立入禁止とか、入ったら看護婦さんに凄く怒られる印象しか無いな。

 というか、初めてココに来たばかりの私は完全に専門外なわけで、何かを知っている理由すらない。

 試しにユウゾウに目線を向けたものの、彼もまた残念そうに首を横に振った。


『知らねえな。そもそも屋上は施錠されてて入れねーし、入れたとしてもせいぜいエアコンの室外機とか、貯水タンクがあるくらいだろ』


『へぇ、詳しいんだね君』


 感心する花子さんに対し、ユウゾウは『ま、まあな!』と少し緊張しながらも自慢げに応えた。


『困ったなぁ。ここでの暮らしは結構気に入っててね。でも、屋上の嫌な感じの正体を明らかにしないと落ち着かないのよねぇ』


『俺はどっちかというと、誰も居ない放課後とか夜中にピアノが勝手に鳴るほうが、すげー怖いんだがな……』


『あ、ゴメン。それ私だ』


『アンタかーーーいっ! つーかトイレの幽霊だろ!! 行動範囲どうなってんだ!?』


 ユウゾウのツッコミに、今度は花子さんが自慢げに胸を張った。


『いや、一応は小学生児童の幽霊って設定だし。JSならピアノくらい弾くよね?』


『設定って……。何だか夢がどんどん壊れていく感じがしてイヤだなぁ』


 そんなたわいもない話をしていると……


『う、うーーん……』


 今まで気絶していたコウイチが目を覚まし、むにゃむにゃ言いながら前脚で目をこすっている。

 それを見た花子さんがフワリと空中を飛んでコウイチの前まで行くと……


『バアッ!!!』


『ギャヒーーーッ!!?』


 花子さんのドッキリで驚かされたコウイチは哀れにも、目覚めて早々に泡を吹いて倒れてしまった。


『ひっでぇ……』


『てへへ、トイレの花子さん的には怖がらせてナンボかなーって』

 

 結局、後で目を覚ましたヒトシも同じイタズラをくらって、卒倒したのであった……。

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