第3章 渇かない涙 ~⑨ 君へ・・・
時が過ぎ、やっと見えてくるものがある。
答えは、その中から選べばいいのかもしれない。
「 今でも 」
・・・冬が過ぎ
春が来て
やわらかな光が
風を変えても
今も私は
ここにひとり
君を消せずに
ただ 立ち尽くす
大好きだった
黒い瞳
髪、
声、
肩、
胸。
君を存在させた
それら全てが
今も私を
離してくれない
君はもう
戻らないのに
もう戻ることは
ないのに・・・
・・・見上げる空
こぼれる涙
ひとつ
ふたつ
みっつ
よっつ・・・
あきれる程に
止まることがない
この涙も
この
想いも・・・・・・
「"君"という大切なもの 」
いつも
君を見ていた。
真剣な横顔を、
やさしい笑顔を。
耳を済ませていた。
歩幅の広い足音に、
かわいい笑い声に。
触れたいと願っていた。
細く広い肩に、
クセっ毛の
やわらかそうな髪に。
ずっと
傍に居たかった。
他愛ない
お喋りをして、
肩を並べ歩いて、
一緒に
笑いあって・・・
・・・今まで
いくつか恋をしたのに
この恋だけは
いつまでも忘れられない
それは
この恋が
ツラすぎたから
君が
優しすぎたから
そして、
大事なことに
今、やっと気づいた
・・・君は
ちゃんと
私を
見てくれてた。
君は君の方法で
私を
受け入れてくれてた・・・
"勝手な思い込み"
そう言われたっていい
君がくれた言葉
君がくれた笑顔
感じていた温かいもの
それらはすべて事実
君と過ごした時間
君を愛した記憶は
とても大切なもの
とても確かなもの
だから・・・
忘れなくていい
涙が渇かなくても
君を思い出すたび
胸を痛め
涙が溢れても
"君"は
何よりも大切なものだから・・・
・・・ありがとう
他の誰でもない君に
君に、
出逢えて良かった・・・
今回で完結になります。ここまで読んで下さった方々、ありがとうございました!
また、短編の投稿を始めると思うので、よろしくお願い致します!