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いつのまにか、私も・・・
夏子は、会社の人事に呼ばれた。
兼ねてからの決定事項の確認だった。
「岩崎さん、今月末で、受付業務からは、外れてもらうから、そのつもりで」
岩崎 夏子は、会社の受付嬢を勤めて、丸5年になる。
そして、今年で30歳の三十路だ。
夏子にとっては、もうベテランという域の受付業務だが、会社の決まりで、受付嬢は、30歳までの女性なのだ。
夏子は、そういうものだと理解していて、今まで受付嬢をしてきたが、いざ、実際に辞める時が来たら、感傷深いものがあった。
(私も、もう30なんだなぁ・・)
一日一日を大切に過ごしてきた夏子だったが、気がつくと、あっという間の今の年齢だった。
溜め息をついて、夏子は、家に帰る。
そして、化粧を落として、洗顔していると、思わず、
「え!?」
と声を漏らしてしまった。
小じわだ。
(いつの間に、こんなところにできたんだろう・・そういえば、髪の毛、染めないと白髪がも、目立ちはじめたかな・・)
手鏡を持って、また溜め息をつく、夏子。
今日は、何かと溜め息をつく一日だった。