契約
「…戻ったか。」
「よかった…。」
「心配かけやがって。」
「フッ…」
4人が近くにくる。
「…来てたのか。」
「当たり前だ、その子を近づけるのに誰が暴れるお前を抑えるんだ?」
「…あれを、俺がやったのか。」
「この世界の損害は気にしなくていい。お前のその力の特性上、この惨状はこの世界の住民たちの意思でもある。まあ、復興の手伝いくらいはするさ。」
「そうか…」
「あとはそこの王子の処理だな 。」
「ああ、こいつだな?」
とバレットが首根っこを掴んで引きずってくる。
「一応そいつ本人は1人しか殺してないからな、王の判断に任せよう。」
「わかった。」
と言うとバレットは指を鳴らした。するとどこからか黒服の連中が現れた。
「武器をおろせ、守。こいつらは俺の部下たちだ。」
黒服の連中は王子を担いであっという間に何処かへ行ってしまった。
マジでどこかのマフィアかなんかのボスだったのか?
「よし、これで一安心だな。」
「あの…」
その光景を見ていたカグヤは気まずそうに声をかけた。
「どうした?」
「私はこれからどうすれば…?」
「それは…君と守次第だ。好きにするといい。」
そう言ってイクシズも消えていった。
「…本当に普通の人じゃなかったんだね。」
「だから異世界から来たって言っただろう?」
「さっきの守とあの人たちを見てすごく納得したよ。あんな当たり前のように時空属性を使ったり、そもそもこの世界のものじゃない武器を使ってる人もいたしね。」
「で、カグヤはこれからどうしたい?」
「私は守について行きたい。」
「…いいのか?」
「旦那様も死んじゃったし、この世界にいてももう誰も頼れないから。それなら守と一緒について行きたい。」
「わかった、一緒に行こう。」
その頃、イクシズは街郊外にいた。
「その姿を見るのは久々だな、ルー。」
「いつの間にか人間の姿が定着してましたしね。」
そこには1匹の神竜もいた。
「いいじゃん、人間の時の姿は俺も結構好きだぜ?」
「…からかわないでください。オウカに言いつけますよ。」
「…勘弁してくれ。で、オウカ達に伝言を頼みたい。」
「なんなりと。」
「守を勇者として送り出すことになったらオウカ、ルー、リッカ、カノンを一緒に送り出す。お前らは神ではないから制限がかからないしな。もしかしたら守の完全覚醒はそう遠くないかもしれないから準備しといてくれ。」
「わかりました。伝えておきます。」
そういい、ルーは飛び去ってしまった。
「ねえ、イクシズ…って、今のまさか神竜?」
「…ヨミか。あぁ、知り合いの神竜だ。」
「やっぱり何もかもが無茶苦茶ね。…そうじゃなくて、あの2人放っておいていいの?」
「あいつらは大丈夫だ。多分結末は変わらないし。」
「どういうこと?」
「見てればわかるよ。」
とりあえずコロシアム周辺の1番被害が大きかった地域の修復の目処は立った。
「よし、そろそろ帰るか。」
「イクシズ…」
「わかってる、連れて行くんだろ?」
「ああ。」
「立場上、その子はお前の部下という扱いでしか連れて行けないがいいだろう。」
イクシズ、ヨミ、守がそれぞれノアに転移する。
「守、一つ言い忘れていた。カグヤと契約を結べ。じゃないと世界を飛べん。」
「どうやって?」
「カグヤと手のひらを合わせろ。それからお前の力を流し込め、心を流し込むイメージだ。」
言われたとおりにすると、カグヤの手のひらに影と光が混じったような模様が浮かび、消えていった。
「守の心も暖かいね。」
「仕返しか?恥ずかしいから勘弁してくれ。」
「よし、ではこの世界を後にする。心残りはないな?」
その場にいた全員が無言で頷く。その直後、コロシアム上空に浮遊していたノアが消えた。
次回から新章突入です。