思伝
<<さあ、これが最後だ!王子ホルストはあの化け物を止めることができるのか!?>>
「やれやれ、仕方がないな。僕自ら相手になろう。」
「御託はいい。さっさとかかってこい。」
ホルストが剣を抜き、魔法を使った。
「『フレイム』!」
すると、剣が炎を纏ってサイズが2倍近くになった。
「『リフレクト』!」
今度は盾に魔法を使った。名前からすると攻撃を反射でもするんだろうか?
「では、勝負と行こうか。」
「…グッ!速い…。」
ホルストが剣を構え突撃する。刀身がほぼ2倍になっているせいで異様に間合いが長い。ホルストが剣を振り下ろしたのを横に回避する守だったが、
「甘いわ、渦巻け!『フレイム』!!」
炎を帯びた刀身が更に増大し、守に襲いかかった。
「マモル!!」
カグヤがたまらず叫ぶ。守はその声に応えるように刀を振り炎を吹き飛ばす。
「熱っ!ったく、まさか魔法が自動攻撃するとは…。けど、もう引っかからねえぞ。」
今度は守から仕掛けた。超速でホルストに突っ込んでいく。慌てて、盾を構えたホルストだったが、守の刀とホルストの盾が接触する寸前、守はホルストの後ろに転移した。
「ここだ!」
背後から守が刀を突き出す。しかし、ホルストはしっかりと反応し、盾を向けた。刀と盾がぶつかった瞬間、リフレクトが発動し、衝撃で守が後方に飛ばされた。
「…忘れていたよ。そういえば君は時空属性を持っているのだったね。危うくやられるところだった。」
「その盾、厄介だな。どう攻略したものか…。」
互いの刀がぶつかりあう。しかし、守はホルストの剣に長く触れられず盾は今だ突破の糸口が見えない。
「条件が厳しすぎる…よし、上げていくか。」
守が1度距離をとる。
「『アクセル』…ギア2!」
守が再びホルストに突っ込む。
「なっ!2倍の速さだと…!」
かろうじてホルストが反応し盾を構えるも、また刀が接触する寸前に転移した。
「『アクセル』…ギア3」
「くそっ、まだ上がるのか!?」
ホルストが反応できているうちは、突っ込み、そして転移する。
「『アクセル』…ギア4!」
そしてとうとう、ホルストが反応できず守がホルストの首に刀をかけたところで、停止した。
「これで詰みだ。カグヤを返してもらうぞ。」
「くそっ、くそっ!俺は認めない、認めないぞ…!!」
闘技も終わり、守はカグヤを迎えに行った。
「よう、カグヤ。迎えに来たぞ。」
「マモル!無事でよかった…本当に…!」
「さあ、帰ろう。アンセムも一緒に…。」
すごく幸せで満たされた気分だった。しかし、そんな時間は長く続かなかった。
「嘘…ですよね…?…マモル…!」
「…なんなんだよ、これは!!?」
コロシアムから出ようとした2人の目の前にいたのは首から下がなくなったアンセムの死体だった。
「きゃああああぁぁぁぁ!!」
他の会場から出てきた観客も死体に気付きその場は混沌とし始めた。その時、
「ははははは!!!よくも俺のプライドを粉々にやがって!!殺す!お前の大事なものを全て奪った後で殺してやる!!」
ホルストが遠くで叫んでいるのが聞こえた。
「……ねぇ、守。これって夢なんだよね?」
「……………」
守は何も答えられなかった。
「ねえ、聞いてるの?夢だって言ってよ!!これは悪い夢なんだって!!!…じゃないと、私…どうすればいいの…?」
…ーバツンッ
「ぐああぁぁぁぁ!!」
また、あの感覚だ…!しかも、規模が今までの比じゃない。痛い…痛い…!
〜
「なんなんだ、この感覚は!?」
ーそれは人の心だ。
「っ!お前は!!」
ー久しぶりだな守。
「どういうことだ、思伝…!人の…心!?」
ーそうだ、我が力は人の想い、心をエネルギーに変える。ずっと前にお前が感じていたのは愛情だ。そして、お前が今感じているのは、怒りや恐怖、悲しみ、そして憎しみだ。
「これを発しているのはここの人間全員だというのか!?」
ーそう、カグヤも含めてな。
「そんな…」
ーさあ、俺を解放しろ。皆を守る力を与えてやる。
「…俺は、俺は…!」
ー解き放て、アンセム本人と彼を大切に思っていた者たちの想いを。
「うっ、ああぁぁぁぁぁ!!!」
〜
最近やっとバトルを始めて来ました。そろそろこの世界の話も大詰めかなと思います。