コロシアム
それから数日後、カグヤに意思確認をしてみた。
「カグヤは嫌じゃないのか?」
「もちろん乗り気ではありませんよ。でも、あまり心配はしてないんです。」
「ん?」
「だって、マモルが助けてくれるのでしょ?マモルは強いですから、きっと助けてくれると信じてます。」
「…あぁ、もちろんだ。絶対にカグヤに嫌な思いはさせない。」
守が自分の意思を確認するように言うとカグヤは微笑んだ。
…ーバチッ
「っ!?」
「どうしました?マモル。」
「いや、ちょっとな。気にしなくていい。」
なんだったんだ?今のは。なんだか体の芯がピリッときたような…。
それからしばらくこの世界のモンスターと戦うことに慣れようとすることにした。
それから半年後。
守は王都にあるコロシアムにいた。
「守、君の強さなら問題ないと思うが気は抜くなよ。」
「わかってるよ、アンセム。」
「…あいつはな、俺にとって家族のようなものなんだ。王族とはいえ、家族を奪われるのは嫌だ。」
「アンセム…」
「でも私にその力はない。だから……頼むぞ、守。」
…ーバチッ
「っ!…任せろ。」
またか。なんなのだろう?あの感覚は。
<<それでは、これより王子の婚姻の是非を問う戦いの儀を開始する!>>
無属性音魔法で開式の宣言が響く。
<<今回挑戦者はただ1人、スイルヴェーン領主の護衛を務める無神守だ!>>
コロシアムのフィールドに出ると、スタンドが観客で溢れかえっていた。その中の貴賓席と思われる一角に王子とカグヤがいた。いつもメイド服しか見てないから、まともな格好してるのを見るのは新鮮だな。
守は、カグヤを見てフッと微笑む。
<<さあ、彼にはまず、4匹の魔物達と戦ってもらうぞ!そしてもしも彼が最後まで立っていられたら、王子が直々に相手をする予定だ!>>
アウェー感がすごいな。まあいい。守が前を向き直すと正面の扉が開いた。
1匹目、あれは…熊か?俺の知っている熊の数倍はあるが。
「いくぞ、思伝。」
熊がこちらに体当たりをしかける。速度も守の知っている熊とは比べものにならなかった。けど!
砂埃を上げて熊が守に突撃し、守のいた位置を通過したあたりでブレーキをかける。
「グォォォオオオ!!」
<<これは、一撃か!?>>
砂埃がだんだん晴れてくると守の姿が消えていた。
「んなわけないだろ。こんな雑魚相手に。」
守は熊の背後に乗っていた。その直後、熊の首が落ちていた。
観客の歓声がさらに大きくなる。
<<一撃は一撃だが、立っていたのは人間だ!>>
続けて熊が出てきた扉から大蛇が飛び出し、熊ごと守を丸呑みにした。
「シャァァァ!!」
「いきなりすぎるだろ…!」
そもそも、さっきの熊を一瞬で丸呑みにできるほどのデカさがあるのかよ。早くも大きさのバランスが潰れかかってるじゃねえか。
「グッ!……邪魔を…するなぁぁ!!!」
<<突如!大蛇の腹が爆発したあ!!こちらの観測ではあの爆発は魔力によるものだそうだ!>>
「チッ、余計な手間をかけさせるなよ。っ!」
ガンッ!!
「ホゥ、中々ヤルナ。」
「次は鬼かなんかか?」
鬼はニッと笑い、少し距離を置く。少し睨み合った後、再び鬼が金棒を振りかぶる。
「そんな間合いで…っ!?」
地面が割れた。え?マジで!?ヤバい、足が引っ掛かった。
「モラッタ!!」
ズンッ!
鬼が追い打ちをかけるも守はそこにいなかった。
<<また、また!無神守が消えた!?まさか、彼は時空属性を使えるというのか!!?>>
「転移魔法カ。ハルカ昔、オマエニ似タヤツガイタナ。タシカ、イクシズト言ッテイタ。」
「あいつもこの世界に降りていたことがあるのか。」
鬼を転移魔法で遠くの地に転移させる。4匹だったか?あと1匹だな。扉から炎が放たれる。
「『空間断裂』!!」
俺の周りの空間とその他の空間を切り離せば問題ないだろう。
<<彼は一体何者だというのか!?時空属性を使えるのはもう間違いないようだ!!>>
炎が止み、扉から最後の1匹、ドラゴンが現れた。ドラゴンは扉から出てきた直後、再び炎を吐こうとしていた。
「…させるか。『ハイパーグラヴィティ』。」
守は超重力魔法を発動しドラゴンの頭を押さえつけた。
「あまり、手間かけさせんじゃねえよ。な?」
守はドラゴンに優しく語りかけたつもりだったが、大分イライラが溜まってたらしい。ドラゴンはガタガタ震えだした。明らかに目が怯えてる。
「さてと、もうこいつに戦闘意思はないか。…おい!降りてこいよ、ホルスト=オレイズ!!」
守は貴賓席の王子を睨み上げた。
魔法の世界で魔法を使ってるやつがほとんどいない。これはどういうことだろう?次からもうちょっと設定を意識しとこう。