大切なもの
「しかし、同じ地形でも名前が違いすぎてわからん。」
実のところ、勉強を始めて1月ほど経つのに地形どころか国の国境線までほとんど変わらない。強いて言うならアフリカあたりの国々が巨大な1国になってたり、アメリカが2つに分裂してたりというくらいだろう。とりあえず今いるのはちょうどフランスのあたりみたいだ。
「マモルは常識があるようで全くありませんね。魔法の知識も妙にあるのに、どれも全く使えませんし。」
ちなみにカグヤが守を呼び捨てにするのは、当初カグヤが「マモル様」と呼んでいたのを当人が全力で辞めさせたからである。
「そういうカグヤは魔法が使えるのか?」
「私の首にチョーカーがありますよね?これはリミッターなんです。我々奴隷は主へのクーデターを抑えるためにこれをつけられるんです。」
「奴隷…」
「そんなにドン引きしないでください。私たちは恵まれている方です。旦那様もよくしてくださいますし。衣食住はしっかり保証していただいておりますから。」
とカグヤは優しく微笑んだ。
「そうなのか…」
「だから、本当は貴族のあなたを呼び捨てなんてダメなんですよ。」
ーそんなことはない。俺はカグヤが様付けして呼ぶような人間じゃない。
「…俺は、俺は本当は貴族なんかじゃないんだ…」
「何を言い出すんですか?」
「そもそも、この世界の住人じゃないんだ。俺たちは、異世界から来た。」
「…?本当に何を言ってるのかわからないよ…」
「ハハ…、ちょっとキャラ崩壊してるぞ。そうだな、異世界から来たことは無理だが、ただの人間じゃないってことは証明できるかもしれない。」
「どういうこと?」
「この屋敷の書斎に時空魔法の書物ってあったよな?もって来てくれないか?」
「いいけど…」
そして、カグヤが持ってきた本の適当なページをめくる。…これでいいか。
「時空魔法なんて、発動できるのはこの世界に数人しか…って、あれ?マモルは?」
「後ろだよ。」
「っ!いつのまに!?」
「転移魔法らしい。適当に開いたページに載ってた。」
「…本当に使えるの?」
「もう一回やるか?」
「大丈夫…です。」
それから更に半年、今だにフェイズ2への道は見えない。この半年で何度かアンセムを狙った襲撃が何度かあった。全て守かカグヤが全て潰してきたが。使える魔法は結構増えた。それでも、普通の魔術師に比べれば数は少ないが。という感じで割と平和な日々を過ごしていた。守たちだったが、
「…守。君の手を貸してくれないか?」
「どうしたんだ?アンセムさん。」
「カグヤに結婚の話がきてるんだ。」
「良かったじゃないか。で、相手は?」
「我が国、オレイズの王子、ホルスト=オレイズだ。」
「これはまた、すごい玉の輿だな。」
「王には悪いが、あの王子にはあまりいい噂を聞かんのだ。なんでも、過去に何人も妾に迎えたはいいが、その全員が行方不明になっているらしい。」
「たしかにそれは…」
ーそうだよな、カグヤにはリミッターがついてる。反抗されず、向こうには権力があるのなら格好のオモチャだな。
「守、殺気立っているぞ。怖いから抑えてくれないか?」
「……なるほど。いつの間にかあいつは俺の中でそんなに失いたくないものになってたのか。」
「そこでだ。一つだけ、その縁談を阻止できる方法があるんだ。知りたいか?」
守が無言でうなずく。
「この国ではこういうことが割と多いらしくてな。国民が不満を爆発させぬために見世物も兼ねて婚約破棄を賭けた闘技が開催されるんだ。エントリーがなければそのまま婚約成立、エントリーをする者が現れればコロシアムの猛獣たち、そして王子本人と決闘し、勝てば婚約を破棄できる。」
「俺がそこに出て王子を倒せばいいんだな?」
「頼めるか?」
「もちろんだ。で、それはいつやるんだ?」
「広報や準備、その他の処理も含めだいたい半年後だな。」
「ギリギリだな。」
「?」
「いや、こっちの話だ。任せろ、絶対にカグヤを取り戻す!」
なんかアクションタグ付けてた気がするけど、ほとんどバトルしてない。次話からそろそろバトルが始まると思います。