60.交換~The possibility of parallel world.
「おいテメ、早くもどしやがれ」
明希はすぐに紫の襟元を掴み揺さぶった。
「無☆理」
テヘペロと非常にムカつく顔で否定した。
ぷつ、と明希は血管が切れたような怒りが込み上げた。
九紫「バーニング(B)ブロウ(B)アタック(A)」
ピチューン!
ギャグ補正の効いた攻撃が紫にヒットし、紫は丸焦げになった。
アフロヘアになった紫は懲りずに言った。
「だってその方が面白ごめんなさいうそですじょうだんですゆるしてください」
明希と同時に今度はパチュリーまで攻撃使用としたのを察知すると、紫は何事もなかったかのように棒読みで手のひらを返すようだった。
今度は最初は驚いていたレミリアが、興味深くたずねた。
「貴女の能力って性別まで変えられるの」
何時の間にか髪型が元に戻った紫は考え込んだ。
「いえ、私の能力は『境界を操る程度の能力』。……そう、そう言うことね。所詮その程度しかできないの」
短い間で答えにたどり着いたのか、紫は扇子で口元を隠し胡散臭く言った。
宴会場で意識がある者は紫の言葉に、その程度とは、ほとんど何でも出来るだろうが、と思った。
「だから肉体を男から女に変化させることはできないの」
「でも、現に女になってるじゃない」
「そう。本当に男から女になることは無理なの」
だから何が言いたいのよ。とレミリアは渋った。
「入れ替わることなら可能よ」
「は?」
「元々、自我と言うものは曖昧なの。肉体、魂、精神の三位一体論なんてあるけど、魂とか精神なんてとても曖昧。何をどう線引きすればいいか。永遠に終わらない論争が繰り広げられているわ」
実に下らなくも暇潰しに丁度いい話題ね。と紫は付け加えた。
「どんだけ出鱈目なんだよ…」
その『程度』で能力の発動条件を満たすのか。明希は思った。
そんな屁理屈に近い理由で女にされたなんてたまったものじゃない。
つまりだ。
「この体は別の俺ので本物は入れ替わった他の俺の魂とか精神が繋がっていると」
早い話はパラレルワールドの自分と体と意識が入れ替わったと言うことだ。
「で?戻せるの?」
少々イラつきながらパチュリーは聞いた。
「すぐには無理よ」
何せ、パラレルワールドである。それは観測者がいるワールドとは異なる分岐をした世界だ。一つであるはずがない。
「それに入れ替わりが二人の間だけとは限らないわ」
もしかすると、他の男明希と女明希が入れ替わった可能性もあるし、男明希Aと男明希Cが入れ替わってたりする可能性もある。
数あるパラレルワールドから正しい肉体を見つけ出さなければならないからだ。
「申し訳ないけど、見つかるまでそのままでいてもらうわ」
珍しく、紫が非を認め謝った。
休憩を挟むようにして静寂が訪れる。
しかし、それは一瞬に過ぎなかった。静寂を破るように幽々子の朗らかな声が通った。
「はいはい、染みったれた話はお仕舞いにして、お酒を飲んで楽しくいきましょ」
幽々子の手には一斗缶があった。
「………」
いやいや。お酒はそうやって飲む物じゃないから。一斗って。約18Lだぞ。どこに入るんだ。ブラックホールか?
「まっ、私にはあんまり関係無い話だし」
次に淡白な霊夢が飲み始めた。
幽々子と霊夢に続くように、他の面々は宴会を再開していった。
程無くして明希を。正確には明希の胸部を見つめていた物達がいた。
「なんか納得いかないぜ…」
ふらふらと女明希に近寄り、胸を鷲掴みした。
「ひゃぁぁあ!ちょっと何するんだ魔理沙!」
名状し難い感覚に襲われた明希は、平常では絶対に発さない嬌声を上げた。
しかし、魔理沙は酔っぱらってるのか明希の胸を揉みしだく。
「さっきまで男だったししょーがこんにゃおっきいのを実らせて」
「ちょぅ、やめ、ふぅん…!」
「ここか?ここがええんか?ほれほれ」
た、助けてくれー!
完全に絡み方がオッサンだった。明希は溜まらず声が漏れた。
これを黙って見てるパチュリーとアリスではなかった。
よかった助か……
「ちょっと魔理沙」
「私達にも触らせなさいよ」
え?
止めるのかと思いきや、魔理沙同様に迫ってくる二人。三人に囲まれて明希は揉みくちゃにされる。
「むきゅ、私と同レベル…まあ、当然ね」
「このハリ、弾力…なんか悔しい…」
パチュリーは変な所で満足感を覚え、アリスは明希のと比べて若干悔しがっていた。
後日、明希は無事に元の体を取り戻し、「女体化事件」は幕を閉じた。
おまけ!そのじゅういち
と、思うじゃん?
「…………。ふぅ…。…………。」
目が覚めると、男の園にいた。
おかしいな。紫によってパラレルワールドの肉体精神交換を行ったはずなのに…。
確かに体は男だ。正しい物かは確認出来ないが、この精神の俺は男だ。
しかし、今度は世界の方が違う。
パチュリーが男だ。
「失敗したのか?可哀想な明希」
スッ、と近付き自然に俺の顎に手を当てる。イケメンオーラが半端ではない。
背筋がゾクッとしたが、果たしてそれがパチュリーに対してかホモに反発するものかは区別がつかなかった。
「そうだ、せっかくだ。」
とても嗜虐的な笑みを浮かべながらパチュリー(俺)は俺の耳元で囁いた。
「ヤ ラ ナ イ カ」
アッー!
夢だといいな。
おまけ!そのじゅうに
「お帰り!パチュリーとお兄…様?」
図書室にいたフランは明希が女になっていることを知った。
テテテテーと走り、女明希の元によると両手で胸を触った後に顔を埋めた。
「なんで皆して胸を触るのかねぇ」
そう言いつつも、明希はフランの頭を撫でる。
「ふにゅ~」
蕩けた顔で満足しているフラン。もはや明希が何故女になったのかなどよりも、包容力に全てを委ねていた。
「まるでお母さん見たいね。母性全開」
「こういうのを体に引っ張られるって言うのかな?レミリアをバカに出来ないや」
そんな明希を見てパチュリーは思った。
「新しい世界に目覚めそう…」
「え?」
「ふふ、今夜女の良さを教えてあげる」
「………お手柔らかにお願いします」
この後、紫に精神や魂まで女になってしまうから止めろと言われるまで…とってもスゴイことを体験した。