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東方魔法録~Witches fell in love with him.  作者: 枝瀬 景
四章 夏冬春秋~boisterous days.
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番外.病照~If she is“yandere”

やあ( *・ω・)ノ

お納め下さい…


挿絵(By みてみん)


背景?知らんな

「はふはふ。うん、おいしい」

「そ、そう?良かったわ」

「悪いね。なんかご馳走になって」

「っ…。別にいいわよ。こんな吹雪じゃ、帰れないでしょ?」


 季節は移ろい、夏から秋を飛ばして冬…が終わり春が来ようとする時季。この頃は、早い桜は既に咲いているような頃合いだ。

 なのに、外では視界が確保できない程に激しく吹雪いていた。

 たまたまアリスの家に遊びに来ていた明希は、そのせいで外に出られずアリスの家で厄介になっていた。

 夜になっても吹雪は止む気配を見せなかった。なので現在は晩御飯に鍋を二人で突いている。

 なぜ鍋なのかと言うと、アリスが用意したのがただ、鍋だった。それだけだ。


「もっと食べなよ」


 アリスの皿に盛られた鍋の具材は少なかった。家主を差し置いて自分だけがバクバクと食べる訳にもいかないが、それ以前にアリスの少食さを明希は心配していた。

 アリスは、鍋から注いだ豆腐をちびちびと食べていた。それと、なんだか落ち着きが無いようにも見える。気のせいかもしれないが。


「ァ…。私はいいのよ。それよりも明希こそいいの?血を飲みたくないの?」


 アリスは顔を赤らめながら、艶かしく言ったように聞こえた。とても些細な勘違いだが、明希はこれを鍋を食べたから暑くなり顔も赤く成ったのだと勘違いした。


「んー…。今はいいよ。食事中だし」

「クス、吸血鬼の食事こそが吸血なのに。変なの…。んっ…」


 何かと言うと吸血行為は、イニシャルHの範疇に含まれるから無闇矢鱈としない方がいいと思うんだよなぁ。

 吸血鬼がなにいってんだよって話だけど、そもそも妖怪としての種族:魔法使いは食事は必用無かったりする。

 睡眠、栄養と言ったものは魔力で代用出来るからだ。

 じゃあ、なんで飯食っているのかと言うことは聞かれても食べたいから食べるとしか言いようがないが。

 …ん?でも俺、今は吸血鬼だったよな?


「でも、食事中だから飲まないのであってそうじゃなかったら…飲みたいって…こと?」


 アリスは少々上目遣いで聞いた。

 これほど吸血の話に固執されれば、気が付かない明希ではない。妖怪は良くも悪くも欲望に忠実なのだ。

 だが、なんだかさっきからアリスの様子がおかしい。


「…どこか具合悪いの?」


 しかし、アリスは俺の質問を無視し、常備しているのであろう、人形を操る糸で器用に首筋を少しだけ切った。スッと緋色の液体が傷口からにじみ出る。


「ちょ、アリス?」


 どう見たって、何時ものアリスからは想像もつかない行動だ。はっきりいって、異常だった。

 何かおかしいと思える。ただただ困惑するだろう。


 が、


 しかし、緋色が、色香が、香りが。暴力的に吸血鬼の本能を刺激する。

 目の前に写るアリス(女性)がとても妖艶に見え、非常に魅力的だ。

 加えて、何故か不自然に体の内側から熱くなり、脈が早まる。


「ハァハァ…。ゴクッ」


 思わず息が荒くなり、唾を飲み込むまでに至った。


 アリスはゆっくりと明希に近付き、首筋を差し出すように抱きついた。その間、明希は動かず、供物を差し出された瞬間、貪った。


「ハァ…ッ!」


 いきなり牙を首筋に突き刺し、血を啜る。


「じゅる…ゴク、ゴク…」

「はあ、あ……ぅく、んっ……」


 遠慮なく、明希は欲望のままに血を飲む。それは相手の事を考えず、自らの欲を満たすための行為だった。普段の明希ならこんなことは決してしない。

 明希は今、催眠状態にあった。理性を崩壊させ、欲望に忠実になるように仕向けられたものだ。


「ふぅっ…!もっとぉ…。もっとよぉ…」


 恍惚とした表情でアリスは明希の上着の中に手を入れ、直接背中の肌に触る。その手つきは官能的で、とてもいやらしいものだった。

 それに反応した明希は、アリスを抱き締める力を強め、より一層血を啜った。


「ああっ!気持ちぃ!!最高よ明希!!」


 だらしなく涎を滴ながらアリスは乱れた。


「あん…。でもね、まだこれは前座に過ぎないのよ…」


 そういってアリスはあらかじめ用意していた注射器を取りだし、明希に刺した。


「うっ…」


 明希は注射器の薬の影響で意識を失い、アリスに体重を預けた。

 アリスは不気味な顔で明希を抱え、地下へ降りて行った。


………………………………

……………………………

…………………………


「うっ…ここは…」


 目が覚めると、見覚えのない場所にいた。起き上がろうとすると、ジャラッと金属が擦れる音がした。


「じゃら?」


 音がした方を見ると、とても素手では引きちぎれそうにもない大きな鎖があった。しかもその鎖は俺の腕に繋がれているではないか。

 ちょっと待てよと、立ち上がろうにも上半身を起こすだけで精一杯になるように、鎖の長さが調節されている。立ち上がってベッドから降りることがてきなかった。


「うぅん……」


 ビクッ、と俺はそのうなり声に驚いた。鎖のことで頭が一杯だったのだ。

 恐る恐る発生源である、すぐ隣を見ると…アリスが裸で寝ていた。


「………」


 俺は無言でアリスの裸体を見ないように、目をそらした。


「…………」


 考えたくはないが、この状況はどう見てもアリスが俺をこんな風にしたのは間違いない。昨日の…と言う根拠はないが、起きる前の記憶は鍋を食べていた記憶しかない。


 何でこんなことをしたのか、想像がついてしまう。アリスには悪いが、ここは一先ず逃げよう。


「…あれ?」


 鎖を断ち切ろうにも、魔法が効かない。そんな馬鹿な。


「だったら力ずくで……って、ちょ、」


 下級とは言え、吸血鬼の力で強化されたなら鎖ぐらい軽く引きちぎれると言うのに…。何故か力が出ない。それは丁度、吸血鬼の力だけ無くなったように。




「ふふ、おはよう。明希?」




 情けないが、また驚き、恐怖した。

 その声音は余裕な感じかして、異常な状況にさも当然な様子だった。

 そして、アリスは後ろから俺の背中に抱きついてきた。


「ア、アリス…さん?」

「当ててるのよ。昨日の明希ったら、ほんとに凄かったんだ・か・ら♪」


 耳元で囁かれ、全身がゾクゾクとした。甘ったるい吐息が、脳を溶かしていくようだった。

 しかし、俺は理性を振り絞って抗った。


「…ごめん。俺にはパチュリーがいるから」


 何が凄かったのかこの際もういい。これ以上、アリスとそう言うことをしてはいけないと思った。さっさと帰ってお互いこの事を忘れて、また友達として付き合いたいと思った。


「ッ!」

「痛っ……むぐっ…!」


 一瞬視界が振れて、ベッドに倒されたと思った次の瞬間、アリスに口を犯された。

 舌と舌が擦れ合い、歯茎や頬の裏をめちゃくちゃに嘗められた。さらには唾液を啜られたり、送られたりした。

 暴力的な程の快楽が脳を刺激する。これはキスではなく、すでに性行為の一環だった。


「んぅっ…!ふっ…んんん!!」


 引きはなそうとするが、アリスはビクともしない。


 くっ、段々と…息が…


 そうして、酸欠一本手前でやっと解放された。


 アリスは明希の背中を擦りながら。笑顔で聞いた。


「ねぇ、明希。私の夢。叶えさせてね?」


 アリスの夢…?必死に酸素を取り込もうとする中思い出した。

 確か完全自立人形を作ることじゃ…。


「私思ったの」




明希を『人形』にちゃえ、って




「!!!!!!!!」


 気づいた時には遅かった。体の至るところにアリスが使う糸が付いていた。


「アイシテルわ明・希♪」


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