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東方魔法録~Witches fell in love with him.  作者: 枝瀬 景
一章 喘息少女~If you have memory in former incarnation , what would you like to do.
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4 秘密~The subordinate is troubled with his supe rior's jokes.

「ああ、悪い。今日はちょっと遅くなりそうだ」


時刻はまだ昼の12時を過ぎたばかりだが仕事が長引きそうになる為、愛しの家族に伝えるために電話を掛けた。


『あらそうなの?どのぐらい遅くなるかしら?』

「わからん。飯は自分たちで食うから作らないでいいよ。鍵も持っているから先に寝てて。エドワードも同じだからフラウにそう言ってて」


電話の受話器を耳に当てながらエドワードの方を見ると、エドワードは書類と激しい格闘戦を繰り広げている。俺はあんまりデスクワークは得意じゃない。そして仕事場には電話機が一台しかない。必然的に俺が代表で電話しているわけだ。まぁ、10分もしないうちに用が終わるから仕事に大した影響はないのだが。


『わかったわ。お仕事頑張ってくださいね』

「おう!それじゃ俺は仕事に戻るから」


そう言って電話を切った。


「くそぅ、何でこんなに書類があるんだよー」


電話が置かれている場所から離れ、自分の椅子に座る。机に積み上げられた書類の山を見上げて愚痴をこぼした。


「うちの会社は年中人手不足だしな」


エドワードは書類から目を離さずに俺の愚痴に答える。


「仕方ありませんよ。今の時代、魔法使いの数はかなり減りましたからね…。と、言うか愚痴をこぼしてないで仕事してくださいよ修造さん」


ガチャリと部屋のドアを開けて入ってきた部下が俺に注意する。


「よーベム。どうかしたか?」

「ベルです。いい加減名前覚えてください。これ追加の書類です」


ベルルは持っていたビジネスバック型のマジックバックから、見た目からは絶対に入り切らない量の書類を取りだしてドサッと机に置く。


「うげ、なになに…。またコイツらかよ。この前、人間の目の前で魔法使うなってあれほど言ったのに」


書類に書かれていた人物は掟やぶりの常習犯だった。他にもくだらない内容の報告書から大物犯罪者についての報告書など多種多様だ。これらの膨大な書類を整理することが俺たちの仕事の一つだ。


「ああ、それと今日の18時から魔法警察の手伝いが入りました」

「えー本当かよ…」


うちの会社は一応民間の企業なのだが

しょっちゅう魔法警察に手を貸している。人手不足なのは解るが勘弁して欲しいな。明後日は明希達の入園式があるっていうのに。









父さんの仕事って大変そうだな。前に母さんに聞いたんだけど。父さんって魔法の管理をする関係の仕事をしているらしい。その父さんが今日は遅くなると電話があった。


「フラウ、エドワードさんたち遅くなるって。ご飯もいらないし鍵かけて先に寝てていいそうよ」

「大変ね。でもあの人たちが忙しいってことは治安が悪いってことでしょ?やぁね…」

「ねえ、お母さん。お父さんは今日帰ってこないの?」


パチュリーがちょっと不安そうにフラウさんに聞く。


「大丈夫よ。遅くなるだけだから」


フラウさんはパチュリーの頭を撫でて安心させる。くすぐったかったのかパチュリーは猫みたいに目をつむって笑ってる。

フラウさんが手を離すとパチュリーはとことこと俺のところに来て本の続きを一緒に読み始める。

今俺たちはこの前読んだ「初級魔術」を読み進め、二人で魔法の使い方を学んでいる。パチュリーは親を驚かせたいらしく、親には内緒でやっている。母さん達の目を盗んで火の魔法を使って火事になりかけたことも内緒だ。

いやぁー焦ったよ。ちょっと魔力を込めたら手のひらでいきなり燃え始めたからさ。その名残で本の端に燃えた跡があるけど、幸いにも文字が書いてあるところは燃えてなかった。


「明希、次は何の魔法?」

「ええっと、『魔力を弾にして発射する魔術』って書いてある」

「え?何か名前ないの?」

「うん。これは最も基本の攻撃であるって書いてある」

「ふぅん。普通過ぎて名前を付けるほどじゃないってことね」

「でも絶対に完璧にしないといけないみたいだね。これが使えないと攻撃魔法が使えないみたいだよ?」

「じゃあさっさとマスターしちゃいましょ」


僕たちは母さん達に魔法を使っているのを見られない為にこそこそと密着して背中で隠しながら、本の記述通りにしてお互いに手のひらで魔力の弾を作る。

そういえば明後日なにかあったような…。いやいや、今は集中…


「お、出来た出来た。簡単だったね」

「そうね。ええっと次は…弾を切り離して飛ばす…のは無理ね」

「うん。飛ばしたら母さん達にバレちゃう」

「だったら……あった。弾の制御」


パチュリーはページをめくり、習得段階をとばして制御するページを開いた。

そのページをよく読み、手のひらにある弾の制御を始める。

制御はただ弾を飛ばすこととは違い、作った弾を自在に操作するので集中力がいる。馴れるとそんなに集中しなくてもいいと書いてあるが、まだ始めたばかりの俺達が少しでも集中力が欠けると…

パチン!と音がしてパチュリーの弾がパチュリーの顎にあたって弾けた。その弾のせいでパチュリーは倒れた。


「むきゅー…」

「大丈夫?パチュリー」


倒れたパチュリーの首を抱えてパチュリーを起こす。


「ん、ありがと。…ゴホッゴホッ!」

「今日はやめにする?」

「大丈夫。最近少し咳が出るだけよ。さっきのとは関係ないわ…多分」


そう、パチュリーは最近咳が出る。本人はあまり苦しくないと主張するが、咳をするときは顔をしかめている。

熱かなぁと思い、パチュリーの額と俺の額を合わせる。息がちょっとくすぐったかった。


「な、な、何をしてるの明希…!」

「熱を測っているんだよ。んー、熱はないか」


熱を測り終わった俺はパチュリーから額をはなす。でも顔が赤い。


「あ…」

「ん?何か言った?」

「別に!続きを早く始めるわよ!」


何をそんなに強く言うんだろ?パチュリー最近変わったなー。単純じゃなくなったというか、言葉もハッキリ喋るようになったし。

まあ、成長したんだろと一人納得して二人で制御の練習を始めた。









時刻は18時を少し過ぎ、空は茜色に染まっている。僕と修造さん、エドワードさんの三人で魔法警察の依頼を受け、例の魔法使い狩りの一人の住みかを張り込んでいる。


「ベルリン、本当にここで間違い無いのか?」

「ベルです。エドワードさんは僕の名前覚えているんでしょ!?」

「冗談だ」

「まったく、その『冗談だ』は修造さんだけで十分です」


ハァ、まったく、この人達は…。エドワードさんも真面目そう…というか真面目なんだけど、たまに修造さんの口癖を真似して僕をからかってくるのはやめてほしい。修造さんの相手すら疲れるってのにそれが二人がかりなんて…


「ベルリンの赤い雨、いいから情報を早く話せ」

「ベルです。そんな物騒な名前…ですらないですよね!!」

「冗談だ」

「前言撤回。悪意を感じます…。目標は一人。例の魔法使い狩りの下っぱでも上っぱでもない中間管理職です。あの小屋には持ち主がいないのに最近怪しい人が出入りしているとか」


ハァ、まったく、この人達は優秀なのは間違いないですけど、いかんせん僕に対する扱いが…。この前だって…


『鈴、後で返すから100円(単位は応急手当)貸してくれ』

『ベルです。50円しかないけどいいですか?』

『いいよ、全部貰うから50円の貸しな、後で返せよ』

『わかり…ません!それって結局僕から50円とって終わりじゃないですか!』

『冗談だ』


またある時だって…


『ドアベル、これやるよ』

『ベルです。え?いいんですかエドワードさん。これって高いお菓子じゃないんですか?』

『食べないなら修造にあげるぞ?』

『それじゃあ、失礼して…モグモグ』

『ああ、俺はこの菓子を食べられない理由が二つある』

『?モグモグ…』

『一つは俺は甘いものが苦手だ。二つ目はその菓子は消費期限が一年前だったんだ。机に入れてたのをすっかりわすれてた』

『ゴクン…ええ!?あ、飲み込んじゃった…』

『冗談だ』


…うぁ、僕おもいっきり遊ばれてるよ…。


「誰か来るぞ」


エドワードさんがいち早く気づいた。


「あの小屋には普通、人が近付かないのは間違いないのか?」

「はい、あの小屋に住んでいた天涯孤独のおじいさんが死んでから近付く者はいません」

「なら問答無用で拘束するぞ」

「間違っていたら?」

「『こんなところで何やっている』っていう」

「逆ギレですか」

「紛らわしいやつが悪いんだよ…いくぞ!」


修造さんの合図で一斉に飛び出す。


「!?」


怪しい人は僕達の奇襲に気がつき、咄嗟に魔力の弾を何発か発射する。奇襲で反応が遅れたとは言え、最も速く攻撃が出来る魔力の弾を展開するのは見事だ。だが。

僕は防御魔法を展開し、弾を一つ残らず打ち消す。


「打ち砕け!アイスクラブ!」


修造さんの氷の棒が怪しい人を襲い、機動力をそぐ。


「固めろ。グランドバンカー」


エドワードさんの魔法で怪しい人の足下の地面が競り上がり、覆い、拘束する。

特に打ち合わせていないのにこの二人は見事な連携で怪しい人を捕らえる。僕なんかいなくても結果は変わらなかっただろう。言ってて悲しくなってきた…


「勘弁するんだな。お前、例の魔法使い狩り…いや、マロウ家って言った方が早いか?」

「!?」

「その顔、間違いないみたいだな」

「くっ!放せ!俺には大事な使命が…。おい!ノーレッジ!手伝え!お前も仲間なら俺を逃がしてくれ!頼む!三賢者様の密命なんだ!」


え?こいつなにをいっているんだ?エドワードさんが例の魔法使い狩り…マロウ家の仲間なんてあるはずが…

エドワードさんの方を見ると、エドワードさんと修造さんはお互いに目を合わせて何とも言えない顔をしている。そこには二人の決して裂けない年月の立った深い絆があるように感じた。

そしてエドワードさんは…


「すまん」


そう一言言って土煙で目眩ましをした。


「ゲホッゲホッ!エドワードさん!まさか貴方!」


目眩ましが晴れると怪しい人とエドワードさんの姿は消えていた。


「エドワードさんがまさか…まさかスパイだったなんて!嘘だ!そんなの嘘だ!修造さん!何か言ってくださいよ!」


修造さんは何時にもない真剣な顔つきだった。そして一言。


「帰るぞ」

「帰るぞって…そんな!追いかけなくていいんですか!?エドワードさんは貴方の親友じゃないんですか!」


だが、修造さんはそれ以上なにも言わずに仕事場に向かって歩いて行った。僕はどうすることも出来ず、しばらくその場で立ち尽くすしかなかった。


今回は初登場なのにベルモンキーの視点が入りましたやったね!


ベ「ベルです。どうも~」


そんな君にいい報せと悪い報せがあるけどいい報せから…次で君の出番はお仕舞いだ。


ベ「全然良くないじゃないですか!?」


次に悪い報せ。それがまだ確定じゃないってこと。


ベ「それはいい報せじゃ…?」


冗談になるかなー


ベ「願望ですか!?誰か冗談だといってくださーい!!」

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