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東方魔法録~Witches fell in love with him.  作者: 枝瀬 景
三章 少女修行~in Gensokyo.
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45 金銀~I don't drop a little girl in the first place.

「師匠~ねぇいいでしょ~!」

「あーもう俺を師匠って呼ばないでよ」


冬というのにここ一帯だけ葉が枯れていない森の中、俺は金髪の幼女にしがみ付かれていた。空には太陽が登っているため、日傘を手にしている俺はむやみに振りほどこうとすれば太陽光線で灰になってしまう。


「師匠!教えてください!魔法の使い方を!!どんな試練も克服します!」

「嫌だと言っても無理やり教えないからね!?」


どうしてこうなった。















「「「「弾幕ごっこ?」」」」

「そう、人間と人外が共存するためには最低限のルールは必要。そのための弾幕ごっこよ」


妖怪同士の決闘は小さな幻想郷の崩壊の恐れがある。

だが、決闘の無い生活は妖怪の力を失ってしまう。

そこで次の契約で決闘を許可したい。


一つ、妖怪が異変を起こし易くする。

一つ、人間が異変を解決し易くする。

一つ、完全な実力主義を否定する。

一つ、美しさと思念に勝る物は無し。


・決闘の美しさに名前と意味を持たせる。

・開始前に命名決闘の回数を提示する。

体力に任せて攻撃を繰り返してはいけない。

・意味の無い攻撃はしてはいけない。

意味がそのまま力となる。

・命名決闘で敗れた場合は、余力があっても負けを認める。

勝っても人間を殺さない。

・決闘の命名を契約書と同じ形式で紙に記す。

それにより上記規則は絶対となる。

この紙をスペルカードと呼ぶ。

具体的な決闘方法は後日、巫女と話し合う。


「…色々突っ込み処満載だけど、まず契約ところ。なに?異変、美しさと思念に勝るもの無しって」


レミリアはげんなりした口調で言った。


「異変については後で説明するわ。答えやすい美しさと思念についてだけど…………、趣味よ」


紫さんを除いた全員がずっこけた。紫さんの人差し指を立てて嬉々として説明する顔は新たなシンパを獲得しようともする不気味な笑顔でも見て取れる。


「だって美しさの欠片もない野蛮な決闘なんて見ていてマイナスしかないじゃない~!血沸き肉踊る?暑苦しいわそんなの、冗談じゃないわ。私の幻想郷(りそう)には情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・儚さ!そしてなによりもォォォオオオオッ!!美しさが必要なのよ!!!」

「やっぱり私は宗教勧誘にあっていたみたいね……」


幻想教という新興宗教に。


レミリアはナイトキャップの両端をつかみ、うー、と唸っていた。…朱に交われば紅くなる、かどうかはわからないけどレミリアには紫さんの奇行は変な影響があるみたいだ。

戦闘不能?なレミリアに代わって俺が質問した。


「まあ、その趣味も含めたら大体言いたいことは分かるけど…巫女ってなに?」


良い質問ね、と紫さん。


「後回しにした異変についてもまとめて説明するわ。

異変、要は妖怪がストレス発散する理由を作る為よ。事件のようなものだと思って頂戴。けれどそれは解決されないと人間にとっては害。でも人間は普通では妖怪に勝てない」

「そこでスペルカードルールと巫女の出番か」

「そんな所よ」


紫さんは軽く首を傾けてウインクをした。


「でもね、それを実行するにはいくつか問題があるの」


一つ、このルールがまだマイナーなこと。

二つ、不備があるか検証が終わっていないこと。

三つ、巫女がまだ戦える状態じゃないこと。

四つ、フランの狂気と破壊がこのルールを揺るがす、ひいては幻想郷を揺るがしかねないこと。


「なるほど、その内三つは私達が解決出来るってことね。もっとも、フランのことは私達のせいだけど」


復活したレミリアが言った。


「そう、巫女が成長するには大体十年はかかるわ。他はゆっくりと一緒に調整していきたいところだけど……。

私って実は今とても眠いの」


……はい?

目をこすって急に眠たげな顔をし始めた紫さん。


「冬と言ったら冬眠の季節よねぇ…、こたつとミカンと敷き布団が恋しいわ…。それじゃあ細かいところは私の式の藍に任せるからあとはよろしくね♡」


うわっ!ちょっと紫様!足下にスキマを開くのは止めてくださいぃぃ!と声がして紫さんと似た服装で、狐の尻尾が九本生えている女性が上から落ちてきた。

そのスキマに九尾の女性と入れ替わるように紫さんは消えた。


・ ・ ・。あれ?まさかの丸投げ?


「全く…紫様には困ったものです…。

皆さん、初めまして。私は八雲紫の式、八雲藍です。色々と我が主がご迷惑をおかけしました…」


深々と礼をする藍さん。その姿はどことなく哀愁が漂っていた。


「あ、…えっと、こちらこそお世話になったわ。レミリア・スカーレットよ」


紫さんの精神攻撃に再び固まっていた俺達の中でいち早く返事をした。


「紫様から説明があったかも知れませんが急ぐことはありません。マイナーな点はこのメンバーで自作自演をすれば直ぐに広まるでしょう。ルールの不備は土台がしっかりしている為殆ど時間はかからないでしょう。巫女についてはこちらで対処します。問題があるとすれば…」

「私に任せて」


ここでパチュリーが名乗り出た。


「あら、パチェ。何か良い案でも?」

「ある。レミィもフランが狂気を少しでもコントロールを出来た方がいいでしょ?」


パチュリーには秘策があるようだ。俺も手伝いをしよう。


「後ですね、予定にない魔法使いが一人、紫様が幻想入りさせたようですがその人について何か知りませんか?」


三度、呆れて固まった。まさかアリスも放置!?

そう言えば昨日からずっと紫を見ている。どういうことかと言うと、俺達の相手をしていると言うことはアリスとは話をしていないということだ。多分アリスをこの幻想郷の何処かにスキマ送りしたっきりにしてアリスはどこに飛ばされたかわからないまま一人でいるんじゃないか?


「はぁ、しょうがない。アリスの所に行ってくるよ」

「知り合いだったのですか。良かった。これが家ごと幻想入りした場所の地図です」


………………………………………

……………………………………

…………………………………


地図の示してある場所に向かって日傘を片手に一直線に飛行していく。エリー特製日焼け止めは全身に塗るのに時間が掛かるため塗ってない。

道中、これといった事はなくものの数分で目的の場所魔法の森上空に到着した。ちょっと妖精が邪魔だったが。


「ん?」


何だか焦げ臭い。まさか日に当たって皮膚が焼けてるんじゃないか?

視線を向けると―――木が燃えていた。


「おいおい!一白水星は流水を司る…ただの水鉄砲!」


俺は空中に浮いたまま火に水をかけた。

技名を即席で考える暇はなかった。ただの水鉄砲だし。水鉄砲といっても消防ホースから流れる勢いで流れ出て、みるみる火を消していく。本格的に火事にならなくてすんだ。


「ふぅ、なんだったんだ?」


鎮火した木の辺りを見ていると金髪が目に映った。一瞬アリスかと思ったが違った。別人だった。しかもその別人の幼女は妖怪に襲われていた。幼女はバッグから試験管らしき物を手当たり次第投げていた。


「きゃあぁぁ!あっち行って!えぃ、えぇい!!」


あの妖怪。紫が知ったら即幻想郷から消すだろうなぁと思いつつその妖怪に向かって魔法を放った。


「六白金星は天を司る…天誅!なんてね」


白金色のレーザーを妖怪に曝してやった。下級妖怪だったのか一瞬で消し炭になった。金髪幼女はレーザーの線を目で辿って俺の方を向いていた。

俺は金髪の幼女の目の前に降りて話し掛けた。


「大丈夫だった?」

「………で」

「で?」

「弟子にしてください!!」













「はあ、どうして俺の弟子になりたいの?」


金髪幼女は俺にしがみついたまま答えたが、日傘を持っている腕は揺らさないで欲しい。死活問題だ。


「師匠がカッコいい魔法使いだから!」

「OK嬢ちゃん、質問の仕方が悪かったね。何で魔法使いになりたいの?」


刹那、マロウの事が頭によぎった。俺は顔には出さないようにした。


「えー?なりたいからじゃダメ?」


動機としては不純だとは俺は思わなかった。かく言う俺も前世では魔法に憧れてたし、マロウだってそうだ。なりたいものが魔法使いで何が悪い?ただ、マロウの時はやり方が不味かっただけで。

…あれ?これって自分で退路を塞いでね?

ふと、彼女が肩に下げているバッグが気になった。確か試験管を投げていた気がするが。


「そのバッグは?」

「これ?これはキノコを擦り合わせたものが入ってるの!たまにだけど魔法が出るんだ!さっき炎が出たのは効果をためしてな……あ」


なんと、魔法の森放火容疑者はこの幼女だったのか。

危険だ、と俺は思った。このまま彼女が魔法の使い方とか心得を知らないまま手当たり次第実験すればまた森を燃やすかもしれない。確認はしてないがここにはアリスの家があるはず。もし家に火がつけば大変だ。


なるほど、被害者が釈放された犯罪者を信用できない気持ちがよくわかる。

これは逆に最低限でも教えておかなければならないと思う。それに魔法を教えると言わないと離してくれないだろうし、後味がわるい。懲りずにまた実験を続けるだろう。


こうなれば断る理由がない。むしろ嫌だと言っても無理やり教えてやらないとだめだ。


「わかった、わかったから。一旦退こうか…」

「え?やったぁ!!」


パッと手を離して俺から幼女が降りた。


「君、名前は?」

「魔理沙!霧雨魔理沙!」

「よろしくな魔理沙。俺の名前は…」


言うのは不味くないかと俺は思った。紅魔館は数十年、その姿を隠しておかなければならない。マッチポンプの為に。その館に住む俺が名前を言っていい…わけないか。


「ごめん。訳あって名前は言えない。師匠でいいよ」

「わかったよ師匠!早速修行つけて!」


と言っても人間の子供を魔法使いにする方法なんて…あるかもしれない。あるじゃないか。パチュリーの本に対する愛情に感謝だな。ああ、でも紅魔館に取りに行くときこの子を連れていく訳には行かないし…。そうだ!アリス!俺はアリスに話をしに行く途中だったじゃないか。調度いい。


………………………………………

……………………………………

…………………………………


程なくしてアリスとアリスの家は見つかった。


「悪い、アリスちょっとこの子見ててくれないか?」


と言うが早くアリスに魔理沙を預けて急いで図書室に本を取りに行った。


「え?誰この子…。ま…、まままままさか!明希とパチュリーのこここ子ど……」













アリスが何か勘違いしていたけど、魔理沙が人間だと解れば誤解は解けるだろう。あぁでもパチュリーとの子供かぁ。………悪くないな。


そんなふうに妄想に耽っていると俺の結界で見えない紅魔館の前まで来た。のはいいが……。


「おぅ、ジーザス…」


今度は行き倒れの銀髪の幼女に出会ってしまった。


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